2015年9月27日日曜日

Apple musicをつかってみて、考えこむ

「月額制で音楽聴き放題」と聞いて。
がっちり原本購入派だったのですが、MP3は確かに楽だし、お財布にも優しくて、最近ではすっかりダウンロード学派に。

Apple Music

こんな風に"Connect"では気になるアーティストの近況報告が見れます。すでに僕用にカスタマイズを終えているため、現在ヘヴィローテーション中のChris Cornellが。
やっぱこのおっさんかっこいい。
こちらも素敵なレコードでした。こんどレビューしよう。



すでサービス・インから2ヶ月くらい経っていて、いろんなサイトで紹介されていますが、簡単に説明するとApple Musicというのは定額制の聴き放題サービス。
月額1,000円ほどでitunesに入っている曲はストリーミングもしくはダウンロードで聴き放題となる。AACなのかしら。ハイレゾの人は不満でしょうけれど、僕には十分です。
邦楽が少ない等、さまざまな批判は出てますが、僕には一切関係ありません。いろいろ試してみたんですけれど、こいつは確かにお手軽で・お安い。
何がよいって、今まで二の足を踏んでいた、「気になるけど買うほどではない」連中をゴッソリダウンロードして悦に入ってます。3ヶ月無料なので、味わい尽くそうと思います。


そして課題。当方はMacでiphoneというApple信者と化しているので再生そのものに問題はありませんが、Apple Musicでダウンロードした音源は、Audirvana等外部ソフトでの再生ができません。
古いレコードのアップサンプリングで大きな威力を発揮するように思うんですが、そもそもItunes storeで売られているものと同様の音質と考えるのであれば、それなりにリマスタリングされているはずなので、大きな違いはないのかも。itunesとは違うエンジンで再生したいならやっぱりネックになるでしょう。

その他、他社のMP3プレーヤーと互換性はあるのかとかいろいろ問題はありそう。たぶん無理なんでしょうね。乗り換え自由、というところを目指したいのであれば、これまでどおり音源を買う行為が必要であるのかもしれません。
そして個人的に一番ひっかかるのは、サービスを離脱した瞬間にせっせとダウンロードした音源が聴けなくなることです。音楽を聴くためのカギを返却するイメージでしょうか。しょうがないんだけどね。ダウンロードできるとはいっても結局、ストリーミングの延長線上にあるサービスなんだな。
今のところApple信者ではあるけれど、生涯添い遂げるかどうかまでは確約したくないので、その辺はやはり悩みどころです。


そんなことを考えていると、今まで僕は一体何をいっしょうけんめい貯めこんでいるんだろう、とハタと思いました。思わざるをえない。
僕のコレクションを譲るよ、といってもたぶん引き取り手はいない。そもそもApple Musicがある今では、コレクションの「目録」さえあれば、再現が可能なのだ。月額1,000円で。正直けっこうレア音源持ってますけどね。
なんだか「誰も得をしない宝物」をせっせと貯めこんでいるような気持ちになってきた。

音楽は流れるもので、貯めるものではない。窮極的に音楽は「所有」できない。コンポーザー本人にだってできない。音楽はコンポーザーの寿命すら超えて、流れ続ける。
そう考えると、音楽はストリーミングと本来相性がいいものなのか。

しかしなぁ。やっぱり僕はコレクションを所有したいと思っている。
理想を言えば、プア・オーディオにリスニングルームと膨大な棚と時間があれば、手にとりホコリを払い、針を落としたい。座りごごちの良いソファーで膝にはシャム猫ですよ。三毛猫でもいいですよ。
データ化というのはあくまで狭小住宅に住む現代的な弥縫策。いつまでも仮縫いです。
というわけで、どうしたことか、僕一代限りの、引き継がれる見込みの無いコレクションを、残しておきたい。僕はそう思っている。
いつもいつも聴くわけではない、容量ばかり食うデータ群たちが、妙に愛おしい。
これは。一体どういうことでしょう。



帯広行きのフライトの時間つぶしにBurrn!を買いました。音楽雑誌を買うの久しぶり。
ロキノンではなくてバーンっ子です、っていうのはネタ的に面白いからアリだと妹から教えてもらいました。
ぜったいあいつはメタルおよび僕をバカにしていると思います。

BURRN! (バーン) 2015年 10月号

シンコーミュージック (2015-09-05)
すげーだろこの表紙。まるで80年代みたいだろ?

表紙を飾るのは芸能生活35週年のIron Maidenのスティーブ・ハリスさん。実に雄々しいですが、この人はいくつなんだろう。さっそく帰ってから"Aces High"を聴きました。もちろんApple Musicで。なつかしーし、スティーブさんのベースはバキバキいってます。

Burrn!の方がロキノンよりもインタビューのクオリティは高いと思う。バカにすんな。読ませる記事だ。
インタビュアーの手腕もさることながら、記事の構成力にもよるでしょう。僕が高校生のころからインタビュアーや編集者はほとんど変わっていなくて、ミュージシャンとともに編集者の高齢化も気になるところですが。それだけ、それぞれのミュージシャンをよく知り、寄り添った文章が書けるということでもあります。
インタビュアーとインタビュイーが仲良く歳を取っていくと、素敵な高齢社会が描けそうですよネ!
で、我々が彼らに金を払う、と。



それでですね、ペラペラと記事を読んでいったわけですが、Harem Scaremのインタビューが印象に残りました。
Harem Scaremさん、昔の名前で出ています

曰く、みんなは20年前に書いた曲が好きだけれど、今の方がいい曲が書ける。経験も積んでテクニックもあるから。それでもみんなが20年前の曲が好きだというのもわかる。
ひとが何かに思い入れを持っていて、何度も何度も追体験したがるというのは、僕には理解できる。でも彼らが追体験したがるのは、自らのノルスタジアのためであって、それが最高の曲であるか否かは問題じゃない。
まったく職人気質な意見です。うーん。そうですねぇ。
彼ら新作は捨て曲ないです。ない。
ウエットでキャッチーで、随所に耳を引くフックが埋め込まれていて、ハーモニー満載で。ビート・レスペランスのギターは相変わらず流麗でとても丁寧。
ちょっともっさりした印象があるのはいつものHarem Scaremなので気にしないとして、まさに快作と呼んでいいと思う。

 

でも、初めて聴いた"Moodswings"より強い印象を持ったかというと、ね。

そうはいっても、彼らはレコーディングした曲の大半は「忘れてしまう」という。すでに膨大なカタログを持っていて、現役で作曲に取り組んでいるのだからライブで演奏しない限り、そうなるのも仕方がないのかも。
技術が向上しても忘れられてしまう曲がある一方で、17歳の時に書いた「未熟」な曲を未だに演奏しなくてはいけない、というのは職人としては確かに複雑だろう。
とするとだ。「最高の曲」とは、なんなのかが気になります。

結局、データを捨てられないのは、僕が旧人類の証左であるのかもしれないけれど、僕自身のライフログになっているから、かもしれない。あの時にこんな曲を聴いていた、という覚え方は僕の中ではけっこう有効。ハリー・ヘスに即して言えばノルスタジアなのかもしれないけれど、僕は音楽職人ではないから勘弁してほしい。


目録は僕の頭にあるから、金さえ払えばいくらでも復元もできる。ただ、それは僕自身のライフログでもある。それくらいは、手元においておきたい。どうもそう考えているらしい。

Apple Musicで直面する、この不思議な躊躇。
もう少し考えてみたいと思います。