2015年10月18日日曜日

The Winery Dogsさんたちの新譜がかっこいいよ

前作よりもいいですぜ

きらびやかなメンツで渋いことをしているThe Winery dogsさんたち


Hot Streak
Winery Dogs
Loud & Proud Records (2015-10-02)
売り上げランキング: 5,403



 
ビリー・シーン、マイク・ポートノイ、リッチー・コッツェンによるThe Winery Dogsのセカンド。
こいつは練れてる。



凄腕プレイヤーたちのぶつかり合いと、強烈なグルーヴを体感できるレコード。スリーピースという最小限の編成を最大限に活かした作りになっている。ほんとよくある言い方なんだけど。
各プレイヤーの自己主張と協調がめまぐるしく入れ替わり、ほんとにあっという間に聴き終わってしまう。

個人的にはポートノイのプレイはやっぱり好きだな、と再確認できた。Dream Theaterほどテクニカルでも長尺でもない、普通のハードロックでもフィルイン満載で良くも悪くも我の強いプレイスタイル。ジャストよりもほんの少し後ノリ気味というか、独特のタメが一気に転がり落ちる爽快感。

マイク・マンジーニが叩いている今のDream Theaterもいいと思うけど、どこか物足りない印象があるのは、この辺りに理由があるのかも。なにか一味足りないような。
もちろんマンジーニだって超絶にお上手な方ですけど。



白眉はタイトル曲の"Hot Streak"。



右手でもスネアを叩くんですね。かっこいい。
聴くなら是非スタジオ版を。今年度のベストチューン候補。


よく知られているように、ビリー・シーンはもともと「Freeみたいなブルーズロック」がやりたくて、Freeの代表曲の名を冠したMr.Bigというバンドが作られた。しかし、結果としてビリーの理想はMr.Bigではなく、こちらのThe Winery Dogsで体現されているのではないか。


リッチー・コッツェンのギターの音色は、ポール・ギルバートよりも線が細くて柔らかで、すき間が多い。ポールのギターよりもベースのためのスペースが用意されている。そんな印象がある。


 年に一度聴きたくなる定期。
ベースとギターとヴォーカルパートを全部カバーしてしまうビリーさん。素敵です。


ビリーのベースは高いピッチまでよく動く。ポールの分厚いトーンだと、時としてベースが塗りつぶされてしまう。パンクみたいにルート音をダダダ、と弾き続けるのとはそもそも役割が違うと思うんです。
ビリーはベースを「歌わせる」。高速ユニゾンパートにしてもギターとベースの分けが明瞭で、ベースの「歌声」が堪能できる。
そこに我の強いポートノイのドラムが堅固な土台を提供するとともに、自在なフィルインでストリングパートの二人に挑みかかる。


リッチーMr.Bigは渋かったけど、カッコ良かった。その意味で、このThe Winery Dogsって「リッチーMr.Bigの続き」であるように思える。
「リッチーMr.Big」が評価が低いのは、メロディの少なさというかキャッチーさにおいて「ポールMr.Big」に見劣りがしたことが理由だと思う。結局のところMr.Bigは、"To be with youのMr.Big"になってしまっていて、それを払拭することが今なおできていない。あー。もちろん、払拭する必要だってない。
しかし、Mr.Bigがビリーの理想から遠ざかったのは、ついてしまったパブリックイメージにもあるのだと思う。ポッピーでキャッチーな楽曲の紡ぎ手としては、ポールはたしかに一流の才能だ。

 
リッチー版"To be with you"。三拍子。いい声です。

リッチーが傑出したギタリストにしてソウルフルな声の持ち主であることは、彼のMr.Big加入時においてはもはや、周知の事実だった。僕だってニュースを聞いたとき、Deep Purpleの"Burn"みたいになるんじゃないか、と勝手にワクワクしていた。これはきっとすごいことになるぞ、と。
しかし結論として、ダブルヴォーカルであれコーラスであれ、Mr.Bigで彼が歌声を披露した機会は不自然なほど少ないものとなった。
ただビリーにとってみれば、Mr.Bigが思い描いたものとは違う成長を遂げていることが明らかにになったとき、エリックと同じく「黒っぽい声」を持つリッチーをヴォーカルにした別のバンドでやればいいじゃん、と思ったとしても不思議ではない。

ちなみにこの"To be with you"が収録されたレコードはMr.Bigのカバーアルバムに収録。クオリティが非常に高いので要チェック。
ダグ・ピニックの"Take cover"やグレン・ヒューズの"Price you gotta pay"は強烈だし、ポール・ロジャースの"Mr.big"にいたっては、それはもうまんまFreeじゃねぇか。

インフルエンセス・アンド・コネクションズ~MR.BIG トリビュート スペシャル・エディション
オムニバス パット・トーピー リッチー・コッツェン ドニー・ヴィー ジョー・リン・ターナー ポール・ロジャース キングスX ジョン・ウェイト グレン・ヒューズ アン・ウィルソン ビリー・シーン
ユニバーサル インターナショナル (2003-08-13)


楽しめます。


今作の演奏のテンション高さやプロダクションのクオリティって、Mr.Bigの暫定最新作"...The stories we could tell"を軽く凌駕しているところがある。もはやビリー的にThe Winery Dogsはサイドプロジェクトどころではないのかもしれない。


ただ相変わらず食い足りないところがあってだな。
本作はリフ・オリエンテッドで、ジャムりながら作り上げられた印象が強くて、だからこそのテンションと完成度の高さがあるのは認める。しかしだな、もう少し歌心があってもいいのかしら、とぜいたくな感想がちらほら。
いつも思うんだけど、ビリーは、"Dancing right into the frame"のような、心に染み入るようなメロディを書ける人であったはず。



もう何曲か、メロウで寂寥感あふれる楽曲が入っているといいなあ。
リッチーについては、最近のソロも大好きでよく聞いてます。でも彼はハイセンスだけどあっさりさんなので、あんまり期待していない。

どろどろ、ねっとりとしたバラードも聴きたいんだ。濃いお酒に合うようなやつを。
そんな要望はさておき、実にホットなレコードなので大満足です。
ああこれもライブがみたいな。