2015年12月30日水曜日

ここまでできた/まだまだ足りない 〜COP21ってなんだったわけさ?〜

「ほめて伸びる子」なので、ほめられるのは大好きです。また、すっかり寒がりになってしまったので、温暖化上等です。しっかりとあだぷてーしょんしてやろうと思っています。一方で、防災セクションに身を置くので、大雨とか、困ります。

やっぱりほどほどが一番だよね。

京都議定書がCOP3だった。いまや21だぜ。ずいぶん積み重ねが進んだものだなと思います。「画期的」と形容される今回のCOP21について、その成果を確認してみる回。




まずは新聞から。どこも大差ないことが書かれていた。
温暖化対策 パリ協定採択 すべての国に実施義務 新枠組み「京都」以来COP21
14.12.2015 朝日新聞

なにが起こったのかを確認するには当事者に訊いたほうがいいでしょう。外務省より。
国連旗気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)、京都議定書第11回締約国会合(CMP11)等 13.12.2015 外務省

「等」ってなんだよ。主要なところでは下記の成果があった、と外務省は言っています。「パリ協定」について抜粋するとこんな感じ。
  1. 世界共通の長期目標として2℃目標のみならず1.5℃への言及
  2. 主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新
  3. JCMを含む市場メカニズムの活用が位置づけ
  4. 森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する仕組み
  5. 適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施
  6. 先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供すること
外務省さんの我田引水な言い回しが忌々しかったので、一部割愛してます。
朝日の見出しが象徴的ですが、実施義務が課せられる枠組みが作られたのは、COP3、97年の第3回締約国会議での京都議定書以来。20年ぶりに新しい枠組みができる、ことが最大の成果といってもよいのでしょう。
気をつけたいのが「削減義務」ではなくて「実施義務」なのですね。途上国は削減していく義務はないのです。削減に向かって取り組む義務がある。どうもそういうことらしい。

続いて、NGOのひとたちのご意見を伺いましょう。

評価の違いは見出しに端的に現れています。Greenpeaceはインターの事務局長声明のみだったので割愛。論調としてはWWFのようにパリ協定を歓迎するものでした。
事実関係としては、外務省のステートメントを参照するといいと思います。ポイントは受け取り方の違い。そしてそれはけっこう大きな問題である、ということなのだろう。
また、「評価が食い違っている」と見るのもフェアではないかもしれない。まずもってパリ協定が成ったことはよしとする。その上でまだまだ足りない、ということか。

批判的な記事はないものか、と検索してみると、どうやらあるようです。
産経新聞のこの記事は、各国の新聞の反応を纏めたもの。ウォール・ストリート・ジャーナルを引いているので、いわば孫引きみたいな形になります。
社説は気候変動問題が地球を危機に陥れているというパリ協定の大前提に疑問を呈した上で、「たとえ地球の危機が本当だとしても、各国政府や国連の集まりからは地球を救う方策は生み出されない」と主張。重要なのは人類による発明や起業家精神であって、政府の介入は「世界を貧しくし、技術の進歩の可能性を低める」とした。
なんというか、リバタリアンですね。
発明というか、技術革新は大事な要素だと思うけれど、まずは削減の実効性に疑いアリ、というところでしょう。
たしかに、実効性は今後大きく問題になりそうなものではあります。想定されるケースとしては、各国が取り組みを進めて排出が削減されてきたのに、気温の上昇が止まらない場合。すごくありうると思うんです。
IPCC等で様々な解析がなされるでしょうが、目に見えない上にマスなものをどう削減したと証明するのかは、非常に難しいと思うんですよね。

それはそれとして、彼らの主張はストロングなものではないように僕には感じられました。ここで真にストロングな姿勢を示すならば、そもそも条約に乗ってはいけない。巷でくすぶる温暖化懐疑論でも援用して、温暖化なんてしてないと言い続けるべきです。
ところが彼らはそれが言えない。その理由はもちろん、実際に温暖化している(と思われる)事象が多発しているからでしょう。その事実に目を背けられるほど、彼らは「制度の他者」ではないらしい。そのことに、僕は時代の流れを感じたりしました。
ついでに言えば、「実効性なき枠組みは無意味だ」というのに、代替案を示すことができない。彼らの論法に沿えば、「技術進歩や起業家精神」がどれくらいの排出削減をもたらすのかを示さなくてはいけない。
これでは読み手にセルフィッシュな印象を与えてしまうと思うのです。
彼らは悪手を打っている。そんな印象があります。


読み応えのある配信をされているのは、国立環境研究所の久保田泉さんでした。
パリ協定、採択!その内容とは? 国立環境研究所 12.12.2015
現地の熱量が伝わる記事であります。もちろん専門家ですから、この問題に詳しくも平易にわかりやすく解説されているところが印象的でした。
外務省や環境省といった当事者よりも、少しだけ距離をおいたようなスタンスである部分も感じられます。客観的な視点は存在しない。それはそのとおりだと思うんだけれど、平易な目で見ようとする姿勢にも好感が持てました。

今までの交渉の経過と課題ついてはこちらがとても良くまとまっているし面白い。
ウォール・ストリート・ジャーナルの論説とも関連しますが、政治的意図であれなんであれ、「合意できなかった」では済ますことが出来ない種類の交渉事はあります。過去3回の合意内容と今回のアプローチの変更は興味深いところがあります。

そして、各国の約束草案(INDC)では、目標の2℃にすら届かないんですね。
2030年時点で、あと12~14ギガトンのCO2削減が足りないと。さっぱりわからん。120〜140億トンだつまりそれば。
ちなみに日本の2013年の年間排出量が12億炭素トンくらいなので、日本10個くらいの排出が減らないといけないと。
ここで注釈。現時点の年間CO2排出量が400億トンなんですね。このままのトレンドで増加していくと2030年には600億トンを超える。一方で、現行水準+2℃で落ち着かせるためには400億トンちょいくらいまで、落とさなくてはいけない。INDCを活用しても年間500億トン以上の排出があるので、ギャップが120〜140億トンありますよ、という話のようです。


かなり道のりが険しい。これがパリ協定の評価が二分されてしまう理由であると考えられます。気候変動抑止という目的に対して、パリ協定は確かに弱い。3℃以上、上昇してしまう可能性がある。
久保田さんが交渉の話をされていましたが、トップダウン方式でまとめきれなかった失敗が過去にはあるわけです。そこをどのように詰めていくのかというのは、「起業家精神」ではなくて、なんとか手を尽くしてなんとか紐帯を確保しようという愚直な努力でしかないし、今回の議長国であるフランスが評価されるのはそこなのだと思います。



日本のINDCのラインだって正直けっこうキツイし、原子力はどうするのだろうというのもある。
日本の約束草案 7.17.2015 環境省
僕の誕生日でした。
2014年の日本の温室効果ガス排出量は前年度比−3%の13億6500万トンであったとのこと。
2014年度(平成26年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について 26.11.2015 環境省

※上記環境省HPより引用

近年で最も排出が少なかったのは東日本大震災の2009年。昨年度の排出量は近年では、2010年に次ぐ少なさだったと。
僕の読みとしては、景気回復に伴い排出量は増えると予想していたので、その点一つの驚きがありました。この減少トレンドのまま、2030年まで推移すればINDCライン達成なのですが、もちろんそんな話は簡単ではありません。そして、+2℃水準をクリアするにはもっと減らす必要がある。

引き続き注目していきたいところであります。