2023年4月15日土曜日

名代として

代打です。

ブラックタイを締めて電車に乗る。毎日来ていたスーツを着るのも二週間ぶり。
13回忌っていうのは追善供養でもたぶん最後の方だったと思う。

祖母の葬儀は、春の冷たい雨の日だった。
ベトナムに渡る直前。大阪から舞い戻った。
その後2年日本に帰らなかった(本当は少しだけ帰ったんだけど)。
タイミングとしては、たぶんそこしかなかった。

それから。
今回東京に戻ったタイミングで13回忌に立ち会うなんて、ずいぶんとおばあちゃんらしい差金だなと思う。そう、僕はおばあちゃんのことが大好きだった。

そしてその大好きは、おばあちゃんが僕のことが好きだったことに支えられていた。
まさに相思相愛であったと僕は断定している。僕のきょうだいの誰よりも、おばあちゃんは僕のことが大好きだったはずだ。俺様理論はここに極まるのです。
ばあちゃんにあの世で訂正されたらどうしよう。

そのような俺様理論はうちの子どもでも再現されている。娘は妻のことが大好きだ。
大好きという言葉では物足りない。太くて真っ直ぐなベクトルが妻を貫いている。
嫌われたり、疎まれたりすることを知らない強さ。知っていたとしても、おかあちゃんなら大丈夫、と信じられる強さ。これは関係性ではなくて、強度だ。

もちろん僕とおばあちゃんだって盤石の強度を誇っていた。と思う。
でも、ここ数年そんなことも思い出さずにいた。
築かれた新しい関係。あるいは、生を享けたまったく新しい人たち。
刻々変化する新しい地層の上に僕らは立っている。
でもその下には古い地層があって、その時代の記憶が眠る。

新しい人に対して、君がどんな人かを伝えるには、僕を紹介する必要がある。
まあ、必要があればの話なんだけど。
でもそれには、僕の自己紹介では足りない。僕は僕だけで成り立っていないから。

そんなわけで、新しい人たちにも古い地層のことを紹介したい。そう思った。
そのようにして、ずっとサボっていた諸々を引き継ぐのだと思う。