2025年12月29日月曜日

GNS3000を森林調査に使ってみる(その2、あとMapryの使用感など)

続きです。セットアップが終わったところまでで前回は終えてしまった。

繰り返しになるけど、僕の場合のシステム構成はこんな感じ

GNS3000 - (Bluetooth) - ipad(wifi) - Mapry(iPadアプリ) - トレッキング機能(ログ保存)
  |_ マイクロSD(ログ保存)

冗長系のシステムがいいなと思っていたんですよね。

なんでかっていうとMapryは便利で機能多彩なんだけど、トレッキングの長時間使用で落ちたことがある。不安定だとまでは言わないけど、ぼんやりとした不安はある。
だから、僕がウロウロと境界を探して歩き回っている後ろで、静かにログを専一に取る職人を一人ぐらい飼っていてもいいだろうと思っていた。
一度は諦めたGNS固有のトレックログ保存機能が使えるのは正直とてもうれしい。

こんな感じにしています。ここで役立つリフト券ホルダ。腰にも下げられるけど、腕にしていた方が精度が出る感じがする。


スタートは谷あい。いかにも電波が入らなそうな場所。道なりに歩いていたので、そうですね。10mくらいはズレていますかね。尾根に出ると一気に精度が上がる感じはある。2〜3mくらいまで精度が寄ってくる感じはある。

実際、僕の(今のところの)仕事は境界確認で、Mapry林業の機能としてはオーバースペックではある。3Dスキャンとか、使いたいけど使う場と時間がない。OWLを背負うほどの林業もしていない。

僕の仕事は単純で境界を確認だけです。
過去に巡回されていて屋号が墨で書かれていたりペンキで印がしてあるので、急斜面を上がったり降りたりしながらそれを追っていくだけのごく簡単なお仕事。
とはいえ、僕がその場に行くのは初めてなので地図を片手に歩きたい。その地図としてMapryがある。

林業系GISを全部確認したわけじゃないし、どのアプリでも大なり小なり機能提供されていると思う。ただ、Androidベースのアプリが多くてiOSで動くものは少ない印象はある。
Mapry使っててありがたいのは森林基本図やらを事前に落とし込んでおくとエリアと僕との位置関係が理解しやすいことだ。
たまに、あの木が目印だ。あの木から尾根まで結んだ線の右側がだれそれの林、とか古老に言われたりする。僕はそれがわからない。というか忘れてしまう。忘れまいとして地図に書き込むけど、字が汚くて、あるいは汗だか雨だかで滲んだりしてよく読めなくなってしまう。
あと、そういう情報を頭に叩き込める人はいいんだけど、僕は3歩歩くと忘れてしまう。

だから、事前情報をある程度整理しておいて歩く。そして、自分のログを残しておくと再現性が高い材料に仕上がるんじゃないかと思っている。
僕がいなくなっても、この道具立てと記録が残ってさえいれば、次の誰かさんはもう少し楽に歩けるだろう。この3年で、少し進んだ感覚はある。

さらに今回歩いた山のいいところは、法務局の登記図面の写しが使えること。計画図(森林簿)と登記図があれば、本当のところ僕が歩く必要はないと思っている。基本図ってやっぱりちょっと(だいぶ)違うから。二つの仕込みと先人が付けた屋号。そしてログがあれば、かなり正確に所有地の情報を現地で把握することができる。
今後、地籍調査をやってない山も行くからその時は結構苦労するかもしれない。


踏査後の確認、うちの秘書的AIはGNSで直接取得したデータとMapry経由で取得したデータが少し違うかもしれないといっていた。
なんでもMapry経由でのGPS情報は、Ipadに入った時にiOS Core Locationというやつを経由してMapryが利用するらしい。Core LocationおよびMapryは生データに補正を加える可能性があるとのこと。だから、GNSで取得したデータは生データだけあって外れ値を真に受けたりして、少しヘンテコかもしれないという話だった。

ほほう、と思って検証をしてみる。双方のデータをGeoJSON化して比較する。
結論としては同一データです。
外れ値が多すぎるログだったら補正をかけるアルゴリズムがあるのかもしれないけれど、今回の検証ではまあ、同じ。生データがipadに流れてMapryが受け取っていた。軌跡をみても大丈夫そうでしたからね。


ただ、Mapryのトレッキング機能はとった写真を貼り付けて表示してくれる。忘れっぽい僕には大変ありがたい機能。
ただ、いくつか課題があって、気がついたことは直接問い合わせをしている。とても紳士に対応いただいているので、GNSの日本代理店は爪の垢でも煎じて飲めばいいと思っている。

あと、長期でみたときにこの多機能さを使いこなすことはあるのか、ということも考えている。僕自身はたぶんMapryの機能の2%くらいしか使っていない。3Dスキャンとか、遊び程度でしかやってなくて、森林相手に死ぬほどやってみたいけどその時間はないし、全てのデータを一括Mapryで済ませてしまっていいのか、という懸念もある。

金さえ払えばMapryはレーザー航測もしてくれるし、基本図情報もセットアップしてくれる。なんなら施業提案だってしてくれるかもしれない。
一方僕は、落ちてるDEMや法務局図面をせっせと拾って、市町村を回り森林事務所とめんどくさい交渉をして、基本図と森林簿データをもらった。そして、踏査後にMapryからデータをわざわざ引っこ抜いてQgisベースで地図情報を整理しているのはなぜなんだろう。

まあ、金がないからなんでしょうね。あと、この先どうなるかという、安全保障的な意味合いがあるような気がする。
もっとも、僕が豆腐の角に頭をぶつけるとかで人事不省になってしまったら、データは失われてしまうも同然だから、あんまり考えすぎてもしょうがないんだけど。

思い当たる理由の一つとして、これらの記録は管理委託をいただいている所有者様のアセットだという認識なのかもしれない。Mapryはツールでしかなくて、オールインワンの体制は確かに魅力的だけど、Mapryのエコシステムのなかに全てを格納してしまうのはなんだか違う、と思っているのかもしれない。もちろん、僕自身がMapryよりも優れたサービスを提供できるという意味ではないんだ。
この先、林業としてガリガリ回るようになればそちらでもいいのかもしれない。農夫を卒業して、年150日RTK機器をもって山を歩くとなれば、やっぱりMapryでいいか、という結論になるかもしれない。


まあ、今のところは誘惑に抗っている(そして金もない)ということ。
実際、最後の命綱は、先人が墨で黒々と書いた屋号のマークなんだ。
あらゆる技術は僕がソコに行くための、ソコがここだ、言い切れるまでの手段に過ぎないんだ。