当方初心者です。Qgisは白帯クラス。
そもそもなぜ樹高データが欲しくなったのかといえば、森林簿のデータに首をかしげていたから。過去にやった主伐時の毎木データを見ると、林分蓄積が森林簿データと50%くらいズレていた。
50%をそのまま係数として他の森林で考えてもいいのだろうけれど、どうせなら樹高から林分材積を再現したほうが、もう少し確からしいような気がした。
材料はChatGPTとLiDARデータ、ターミナル、そしてQgisの3点になります。
ChatGPTは僕の代わりにソリューションを考えてもらう役割。Qgisは実際に図化したものを視認するためのソフトウェア。
QgisのGUIでdemから標高を取り出すことも可能で、どうする?とGPTに訊かれたんだけど、ターミナルで処理することにした。理由は今後、少なくとも100枚程度は同じような処理をするだろうなーってことと、処理過程のファイルも保持しておきたかったこと。あとQgis経由の処理があまり安定しなかったこともある。
面白いよね。ワードでもエクセルでも処理過程は見えるけど、この種の画像処理って過程が見えない。まあ、見えたとしても意味わかんないだろうけど。愛機のM2AirちゃんもQgis上で走らせると止まっちゃう。お前Windowsかよ、というくらい止まった。そんなこんなで、もう処理は独立してやったほうがいいだろうと。
demから樹高を取り出す考え方をかいつまんで。
LiDARはレーザー測量で、飛行機とかから地上にレーザーパルスを照射し、地上からの返りを測定する。照射されたパルスは、樹冠で返るものもあれば、地上に到達して返ってくるものもある。この返ってきたデータがdem。demを解析して、樹冠と地上の差分が取れればおおよその樹高データが取れるでしょ、という流れ。
で、素材となるdemはこちら
東京都デジタルツイン 多摩地域点群データ
こちらがなんと無料。すばらしい。4点/m2以上パルスが飛んでいれば、ある程度それらしい絵になると聞いたことがあったけど、こちらのデータは16点/m2とのこと。すばらしい。データは重いですけどね。
ターミナル、windowsではコマンドプロンプト、を介した作業方法については略記。
・lasファイルのダウンロード
・地表面の正規化(地面と上空の切り分け)
・上空と地面の差分の抽出、1m四方のグリッドに集約して図化
地表面の正規化について少しだけ説明。
250m ──────────────── 樹冠の点(DSM)
│ ●
│ ●
200m ──────────────── 地面の点(DTM)
│
└── 地面からの高さが混ざっている状態
↓
50m ──────────────── 樹冠(HAG=50)
│ ●
│ ●
0m ──────────────── 地面(基準)
│
└── 地面をゼロにして高さだけ残した状態
地表面は当然場所によって異なる。ここでいう正規化とはデータの標高を0mに統一する作業。これによって、さまざまな場所の樹木について統一した物差しで樹高を取り出すことができる。
実際の作業は月20ドル払って丁寧に教えてもらったほうがいい。僕が説明するよりずっと丁寧だ。金はかかるけど捗るぞ。
その後はQgis上の作業。出来上がったファイルをインポートしてカラーバンド図化。赤が高いところ、青が低いところ。
青いエリアはR3に皆伐した箇所。さっぱり刈り取られたので樹高はない。
等高線をいくつも挟んでいるけど、同じ青で塗られている。これが正規化という作業だね。
右下の赤丸がポイントの樹高。26.98m。僕は測ってないから本当かどうかは知らん。でもさ、測棹ポールを15mまで伸ばして、隣の木の樹高を比高差で睨むよりはまだ確からしい数字だと思う。
実作業上、僕は特になにもしていなくて。コマンドをコピーして打ち込む、せいぜい伝書鳩くらいの役割しかないのだが。大事なのは知識でもテクニックでもなくて、こうしたい、という欲求なのですかね。そのあたり、生成AIが世界を変えつつあるのかもしれない。
あと、どのへんに大物があるんだい。という素朴な疑問にもこの画像は答えてくれる。人知れず埋まっていた秘宝が見つかるかもしれない。
東京都の収穫予想表を片手に、樹高データから材積推定を行ったけど、せいぜい10%程度の誤差しか見いだせなかった。
理由は割と明瞭で、僕が収穫予想表から選んだデータが間違ってるからだ。成立本数は収穫予想表から「形質的にあてはまりのいい」データを選んでいるから、森林簿と似てくるのは当たり前ではある。
たぶん、森林簿よりもいくらか樹高は高い。でも50%も高くない。「あてはまりのいい形質」から推定される本数よりも現実の森林は相当本数が多い。それは分かっている。ただ、間違いを正すのにも勇気がいる。最初に何本植えて何回の間伐を経て、今何本残存しているかわからないから。いいからプロットとってこいよ、っていう話になるんでしょうけどね。
あと、このあたりは斜面を上部と下部で分け、スギ地にはスギをヒノキ地にはヒノキを植えている。そこは割と明瞭なんだけど、以前の管理人さんはどうも、間伐後にせっせと下層木植栽を行っていた。これも少し判断を難しくしている。
そもそもdemから本数を推定するのは樹高よりも難しいみたい。上の図を見るともこもことしていて本数を数えられそうなんだけど。複層林化していると、下層木はたぶん上層樹高末端くらいまでは大きくなっていて、林分構造が上から見ただけだとうまく把握できないんだろう。個人的な仮説ですけど。
今後の予定としては、今度は地表面(DTM)に目を向けて、路網を入れる観点で解析していこうかな。こちらも最後は現地合わせなんですけどね。こんちくしょう。
もし僕が治山技術者として純粋培養された自分を想像すると、たぶんいつかやっていたと思う。崩壊地形判読できるし危険箇所も整理できる。これ自体が予防治山の枠組みでしょ。予算要求前のヒヤリング前の測量とかいらなくなるんだし。
11月末の初冬。みぞれ混じりの雨だったりする日。悴む手で間縄と赤白ポールを握る日々を思い出せばそ、れくらいの効率化は図られてしかるべしと思うんだ。ようやく測量して事務所に帰って整理すると設計するダムの向きがなんか変だったりとか、わりと笑えない手戻りが発生したりするんだ。
汎用性のあるデータを取得し公開する。公金を使ってな。人はこれからどんどん減っていくから使えるものは何でも使ったほうがいいですよ、と当時僕は云っていた。今でもそう思っている。
