2026年6月3日水曜日

変わりゆくのか、断ち切られたのか - "The Truth About You" / Injected

君は何色が好きなの? 2018年2月10日土曜日

このエントリーは驚くべきことに8年越しの続きなのである。
僕自身もほんとびっくりしている。


先日来、ポスト・グランジの沼に耽溺している。あーなんか好きな時代だったなぁ。

スパーダーマンでいえば、ダントツに好きなのがInjected。"Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ"についてはもう何度もこのブログで触れている。
彼らのレコードといえば2002年の"Burn It Black"。そして再結成後に出た2017年の"The Truth About You"。この2枚になる。

デビューアルバムの一枚を残してレーベルが潰れた。セカンドの楽曲はできていたけどお蔵入り。で、解散。初速しかないバンドだったんだね。
2016年にギタリストのJade Lemonsが死去。いい機会と思ったのかもしれない。ヴォーカルのDanny Gradyがこの楽曲をレコーディングして、17年にリリース。
状況を考えると、このバンドが今後活動することはないんだろう。

ダニーのヴォーカルはジャンル柄「っぽい」感じで、非常に暑苦しい仕上がり。血圧上がりそうな押し一辺倒でもなくて、セバスチャン・バックの1/4くらいの色気もある。
凡百のポスト・グランジ勢と一線を画していたように思うのが、キャッチーなんだけど妙に「引く」ところかもしれない。盛り上がりそうところでかわしていく。コードの選び方なのか、冷ややかな印象がある。
聴き終わった後、妙な余韻が残る。実に不思議なレコードだった。


ここから前のエントリーと続き。
レコード版の"The Truth〜”を聴いて、8年前の僕は呆然としていた。

Youtubeの"The Truth〜"とタイトルは一緒なのに収録曲がすごく少ない。そして、彼らのよさがほとんど漂白された「ただのヘヴィロック」のレコードに仕上がっていた。
こんなはずではなかった。

2026年の現在において、再びポスト・グランジの沼に沈んだ僕は、Youtube版を8年ぶりに再発掘して、今これを書いている。
リンクを開いてみたらまだ生きていた。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLAE5E6EC5F69C21F9


結論としてYoutube版がやっぱり幻の2ndの候補曲集・デモだったのだと思う。彼らは2017年に20曲のうち、10曲を再レコーディングしてリリースした。
そしてこのレコード版は、少なくとも僕の琴線をあまり振るわせない出来だった。

じゃあ、僕の中でのいい曲はどこにいったんだ?
そのあたりを調べられた。

まず、"Monday"と"Daylight"はUpsideというバンドに渡った。2007年の"Jim Beam and the American Dream"というレコードに収録されている。"Watch It Fade"も渡った曲だとされているけれど、僕が見つけたYoutube版にはなかった。
Upsideはザ・ポスト・クランジなバンドなので全然違和感はなかった。ほぼ原曲のままで、一聴してInjectedだな、と思うメロディがある。

次に、"Spun Again"は"Bar-Ba-Sol"という曲になっていて、David Cookが歌っている。2008年のセルフタイトルのレコードに収録。この人も知らなかったけど、アメリカンアイドルの勝者とされているから、あちらでは有名人なのだろう。こちらもロックボイスですごく上手だ。

そして、"So At Last"。これは灯台元暮らしというか、僕はもともと知っていた曲だった。
Butch Walkerの2004年の2nd、"Letters"の収録曲でした。ぜんぜん気が付かなかった。
"Letters"自体、完全捨て曲なしの大名盤なのでぜひ聴いてほしい。そのうちエントリーを起こそうと思う。

Injected版はハードロックバンドのメロウな曲という雰囲気だけど、ブッチ版はダニーよりも声が細くて柔らかい。この時代のブッチは、ダニーよりも色気は5割増しなので同じ曲なのに雰囲気がけっこう違う。
雨宿りしていて、やまない雨を見上げているような。そんな感じがする。
ブッチは"Burn It Black"のプロデューサーだったし、この曲はブッチとの共作でもあるようだ。


ここまではわかった。でもあと5曲はよくわからない。まだ人手に渡った曲があるのか、あるいはボツになったのか。
こうやってみると、2004~2008年に2nd楽曲のスーパーセールが行われた。こいつらをリリースしてスターダムにのしあがるんだ、という当時の彼らの気合と期待を考えると、ものすごく切ない気持ちになる。
ただ、放っておけば塩漬けになる曲を、誰であれ、どんな形であれ、世に出せた、ということでもあるんだろう。

個人的には、Youtube版にはあと2曲はすごくいい曲がある。"Westworld"と"Untitled"とされた曲。
でもそれらはたぶん、ダニーの再レコーディングの基準からは外れたんだね。僕の良さは彼の良さではないことくらいは分かってる。少なくとも、僕が考える彼らの強みは、当人たちにしてみればそうは考えていない、ということなんだろう。
ダニー、君はわかっていない。ファンを勝手に代表して、そんなことを思う。

再録レコード版の最後の曲。”Nothing Stays the Same"。この曲はYoutube版では"Cut It Loose"という名前だった。レコード版で星五つ挙げられる唯一の曲で、僕が好きなInjectedと唯一接続できる曲。
「断ち切れ」から「変わらないものはない」となった。まあ、いろいろありましたからね。

それでも思う。ダニー、やっぱり君はわかっていない。

まず、君らが「断ち切った」もののいくつかは形となって世に出ている。そして僕は拾った。
それから、君らは変わったんじゃなくて僕の前から消失したんだ。僕が「断ち切られ」た。そして、この楽曲が君らのアイデンティティと地続きの「変わらないもの」だった。

そのあたりが「僕にとっての真実」。
だけど、彼はこの曲をわざわざ最後に持ってきたんだから、その辺のところは百も承知、なのかもしれないけどね。


いろいろ調べて少しすっきりした。過程が死ぬほど不足して、頭を抱えていた8年前の僕に、ある程度答えられたと思っている。
まだいくつか謎は残るが、Injectedをめぐる冒険はここで終わりな気がする。
なにしろ、すでに終わってしまったバンドだから。

人が気持ちを込めて作り上げた仕事は、そうじゃないものよりも、いくらかは長持ちする。
少なくともいくらかは。
そう信じたい。