2013年1月20日日曜日

間伐をしてみる、にあたっての準備

メラルーカ林業では間伐は行われない。というか、植えっぱなし。
果報は爆睡して待つのが吉なのか、どうなのか。


と、いうことで間伐を手がけ(たい)。例によって森林は借り受けた。
2010年植栽のメラルーカ林。4年生。約1ha。向こう10年は伐るなよ、という口約束までは取り付けた。
前にも書いたような気がするけれど、メラルーカは20,000本/haで植栽される。植栽から4年でどれくらいの木が残っているのか?生育状況は?という事前調査。

船で行けたから今回は楽。泳いでったら途中で足つってた。




プロット調査の結果、成立本数は11,800本/ha、平均樹高は4.3m、平均胸高直径は4cmという結果。ふぅむ。形状比が高いな。

形状比とは、樹高(m)/胸高直径(m)の数値。上の例では4.3(m)/0.04(m)≒108くらい。日本では70以下は安全で、これを超えると災害に対して弱い林(細長くて折れやすい)であると言われている。保安林管理もやっていたので、ふと気になるの。
ま、ここは台風も雪も爆弾もない、平和の国ベトナムなのでさしあたり気にしないことにする。ホーチミンの公園とか街路樹とか100超はザラ。
樹高25mオーバーとか、さすがに危ねぇなと思うんだけどな。


森林の中はこんな感じ。植栽木は細く、ヤブのように見える。
日本だったら二次林化したボイ山がこんな感じだっただろうか。

植栽からわずか4年、4割の植栽木が行方知れず。現地はカヤ系の草本が繁茂していて、植栽初期で負けた連中が多いのかも。
そもそも初期成長を無視してしまえば年間1mのペースで成長しているから、密度効果が働いていることは明らか。樹木の成長とともに、葉は林を屋根のように多いはじめ、林内はどんどん暗くなる。環境が変わるのだ。


Van兄さんを今回はこき使ってしまった。

4年で4割の枯死もさることながら、収穫時(8〜10年生)には成立本数は6,000〜7,000本/haにまで落ち込む。7割が枯死する計算だ。
ここからの数年間は、陽光を受けられない劣勢木がバタバタと倒れていく過酷なレースが展開されることになる。選ばれし3割の猛者だけが完走できる。
まあ、最後は全部伐るけどな。

たくさん植えてこんなに枯らして、なんて不経済なこと、とおもわれる向きもあるかも知れない。一応弁護しておく。
そもそもメラルーカは一本だけ植えると、くねくねしてみたり、枝分かれしてしまったりする。スギ・ヒノキより性格は悪い。わざと密植をして競争させることで伸長成長を促す→まっすぐな木材を目指す、という算段だ。
さらに言えば、日本のスギ・ヒノキだって最初3,000本/haでスタートするけれど、収穫が始まる40年生で1,000本/ha(もっと低いかも)にまで落ちる。やっぱり3割だ。

木のサイズに合わせた本数というものが、林にはどうもあるのだ。
そこに落ち着くまで、自然に枯れるか、ひとが直接手を下すかの違いでしかない。
仲良くガマンして共倒れする連中もいるな。ヒノキとか。


では、今回なぜ人が手を下すのか。間伐の目的として。
写真で明らかなように、植栽木はすでにまっすぐに成長している。つまり高密度植栽(密植)の目的は達成された、と僕は考える。これから曲がるかもしれんけど。
また密植のもう一つの目的である、雑草との背伸び競争にもすでに勝利している。ここのカヤはせいぜい3m程度。

一方で、今後も引き続き競合させるということは、最終的に収穫できない木(=枯れてしまう木)に対してスペースを与えていることになる。つまり、残る木は競争の過程で、肥大成長(木の太り)が阻害される。経営的に見て、これは損だ。
つまり、密植によるメリットは享受した、これから先はデメリットだけだ、というのが僕の見立て。

間伐をするデメリットとしては、競争条件の緩和により伸長成長のスピードが落ちるかもれいないこと。しかし、カマウ省における木材規格は一番長いもので5m。それより上の部分は薪炭材として利用される。もちろん価格は安い。
もし、最終的な樹高が15mとかになるのであれば、5m材が2本取れるかもしれない。しかし10年伐期では8〜10m前後で、上の材は細くて材には向かない。

5m規格のものは直径によって値段が変わる。ならば、5m規格のより太い材を生産したほうが売払いは有利だ。
これからは伸ばすよりも太らせようぜ、という方針。


調査して意外だったのは、思ったよりも下層の葉っぱが落ちていること。これも密度効果の影響。林内が暗くなったため、下の枝葉が維持できなくなっている。葉っぱの量は木の成長と密接な関係があると言われている。
日本の間伐遅れ林分は、しばしば下枝の葉っぱが枯れ上がっていて、上層にしか葉がない。こうした林は間伐等で林内環境を改善しても成長量がうまく改善しない場合がある。もう1,2年、早く間伐を入れていればもっと良かったかも。

まあ、よくわからんから北緯7度という温暖っぷりと成長の早いメラルーカの化け物っぷりにかけてみようかと思う。

まとめ。僕の目算としては、
①間伐により、密度効果が緩和されて肥大成長(水平方向の成長)が促され(メリット)、そのかわり伸長成長(垂直方向の成長)が緩やかになる(デメリット)効果がある。
②でも、木材として大事な部分は下から5mまで。残りの育成期間で(普通なら残り6年、今回は10年置いといてもらえるらしいけど)で1m伸びればいいので、デメリットはあまりデメリットにならない。
という感じ。

僕がすべきことは、いろんなやり方があるということを示すこと、と思うんだ。本当はこんなことはここにいるみんな知っている。外から来たアホだからできることも、またあるだろう。密度でも伐期でも、条件を変えると林は変わる。
そこから、そもそも俺らが欲しいものはなんだっけ?と、考えてくれれば。



これから伐採率を決めて、マーキングして。
で、誰が伐るの?というところで所属ともう一悶着ありそうだ。
当方、泰然自若。くまのぷーさんのような目をして、
え。伐ってくれるんでしょ?とお願いする所存。はてさて。