月を愛でるのに、小道具なんて必要ない。
夜空を見上げて、きれいだな、と思えばいい。
もちろん、やろうと思えば、小道具はいくらでもある。
すすきの穂。おだんご。葦の池に浮かべる小舟。
肩にしだれかかる美姫。月を映す、とろりとしたお酒の入った杯。
素敵な詩片を思いつくセンス、だとかね。
今宵は満月です。
ここ半月の猛暑は、まったく辟易ですよ。こんなの記憶にない。
けれども雨が降らないものだから、月が太っていくのを毎日見ることができた。
本番たる今日が、逆走台風のせいで見ることができないのが残念。
月とは不思議なものだ。そう感じたのはいつの頃か。
山深い場所で暮らしていた大学のころ。辺りが暗いほど、月は存在感を増す。
月との交信には暗い場所が必要であること、月は青色の影を持つこと、
静かでまとまった時間があるとよいこと、お酒があるとなおよいこと、
などを学んだ。
暗い海を泳いだことがある。
長梅雨で曇った肌寒い夜。おっかなびっくり入った海は、存外温い。
泳ぐのに倦んで、ぷかぷかと浮び休むと、闇夜にぷかぷかと浮かぶ、月と出会う。
覆っていた雨雲は去り、無数の星とひときわ明るい月が、静かに僕らを見下ろしていた。
もちろんというか、当然というか。
翌日、見事に梅雨が空けるのだ。
いつのころからか。
月は瑞兆というか、僕との間にひそやかな親密さがあるような気がしている。
僕が勝手にそう思っているだけで、先方は僕のことなんて知らないはずだ。
月は静かで、やさしく輝く。
その佇まいが、僕は大好きです。
さしあたり、僕の手元にはウイスキーの入ったコップがある。
そして、隣の部屋には小さな美姫が静かに寝息を立てている。
彼女、僕にしだれかかってくれるほど大きくない。むしろ小さい。
抱き上げると、腕の中で小さな手足をいっぱいに伸ばし、のけ反る。
お待ち申していました。
ようこそ。美しい月のある、この世界へ。
あなたがフォースとともにあらんことを。
あなたがいつまでも、お月さまに、やさしく見守られ続けますように。
夜空を見上げて、きれいだな、と思えばいい。
もちろん、やろうと思えば、小道具はいくらでもある。
すすきの穂。おだんご。葦の池に浮かべる小舟。
肩にしだれかかる美姫。月を映す、とろりとしたお酒の入った杯。
素敵な詩片を思いつくセンス、だとかね。
今宵は満月です。
ここ半月の猛暑は、まったく辟易ですよ。こんなの記憶にない。
けれども雨が降らないものだから、月が太っていくのを毎日見ることができた。
本番たる今日が、逆走台風のせいで見ることができないのが残念。
月とは不思議なものだ。そう感じたのはいつの頃か。
山深い場所で暮らしていた大学のころ。辺りが暗いほど、月は存在感を増す。
月との交信には暗い場所が必要であること、月は青色の影を持つこと、
静かでまとまった時間があるとよいこと、お酒があるとなおよいこと、
などを学んだ。
暗い海を泳いだことがある。
長梅雨で曇った肌寒い夜。おっかなびっくり入った海は、存外温い。
泳ぐのに倦んで、ぷかぷかと浮び休むと、闇夜にぷかぷかと浮かぶ、月と出会う。
覆っていた雨雲は去り、無数の星とひときわ明るい月が、静かに僕らを見下ろしていた。
もちろんというか、当然というか。
翌日、見事に梅雨が空けるのだ。
いつのころからか。
月は瑞兆というか、僕との間にひそやかな親密さがあるような気がしている。
僕が勝手にそう思っているだけで、先方は僕のことなんて知らないはずだ。
月は静かで、やさしく輝く。
その佇まいが、僕は大好きです。
さしあたり、僕の手元にはウイスキーの入ったコップがある。
そして、隣の部屋には小さな美姫が静かに寝息を立てている。
彼女、僕にしだれかかってくれるほど大きくない。むしろ小さい。
抱き上げると、腕の中で小さな手足をいっぱいに伸ばし、のけ反る。
お待ち申していました。
ようこそ。美しい月のある、この世界へ。
あなたがいつまでも、お月さまに、やさしく見守られ続けますように。