2018年7月28日土曜日

月に遊ぶ

月を愛でるのに、小道具なんて必要ない。
夜空を見上げて、きれいだな、と思えばいい。

もちろん、やろうと思えば、小道具はいくらでもある。

すすきの穂。おだんご。葦の池に浮かべる小舟。
肩にしだれかかる美姫。月を映す、とろりとしたお酒の入った杯。
素敵な詩片を思いつくセンス、だとかね。



今宵は満月です。
ここ半月の猛暑は、まったく辟易ですよ。こんなの記憶にない。

けれども雨が降らないものだから、月が太っていくのを毎日見ることができた。
本番たる今日が、逆走台風のせいで見ることができないのが残念。


月とは不思議なものだ。そう感じたのはいつの頃か。
山深い場所で暮らしていた大学のころ。辺りが暗いほど、月は存在感を増す。
月との交信には暗い場所が必要であること、月は青色の影を持つこと、
静かでまとまった時間があるとよいこと、お酒があるとなおよいこと、
などを学んだ。

暗い海を泳いだことがある。
長梅雨で曇った肌寒い夜。おっかなびっくり入った海は、存外温い。
泳ぐのに倦んで、ぷかぷかと浮び休むと、闇夜にぷかぷかと浮かぶ、月と出会う。
覆っていた雨雲は去り、無数の星とひときわ明るい月が、静かに僕らを見下ろしていた。
もちろんというか、当然というか。
翌日、見事に梅雨が空けるのだ。

いつのころからか。
月は瑞兆というか、僕との間にひそやかな親密さがあるような気がしている。
僕が勝手にそう思っているだけで、先方は僕のことなんて知らないはずだ。

月は静かで、やさしく輝く。
その佇まいが、僕は大好きです。


さしあたり、僕の手元にはウイスキーの入ったコップがある。
そして、隣の部屋には小さな美姫が静かに寝息を立てている。
彼女、僕にしだれかかってくれるほど大きくない。むしろ小さい。
抱き上げると、腕の中で小さな手足をいっぱいに伸ばし、のけ反る。


お待ち申していました。
ようこそ。美しい月のある、この世界へ。

あなたがフォースとともにあらんことを。
あなたがいつまでも、お月さまに、やさしく見守られ続けますように。