2013年8月4日日曜日

アカシアの苗木をつくる

ケガしてるときくらいしかちゃんと更新しないんじゃないか、オレは。


おばちゃんたちが苗木の処理をしていている写真が最後までとれなくて。
なのでご紹介。ベトナム生活のなかで最後のエントリーになると思う。いまのところはな。苗木と作ったあとは「アカシアを植える」を参照のこと。

写真の撮った順番はごちゃごちゃ。一連の作業の記録、ということで。こういうのも2サイクル居たからこそできるわけでね。どこかの写真とかぶってたらごめんなさいね。おほ。




ウミンで植栽されているアカシアはアカシア・ハイブリッド、アカシア・マンギウムとアカシア・アウリフォルミスという2種の自然交配種だ。
調査の末、成長力の高さと病害等への抵抗力からアカシア・ハイブリッドが選ばれたという。自然交配するから種もとれるし、実際そんな木も自然に生えている。ただ、それは二代目や三代目になってしまい期待された能力を示すかどうかわからない。
だからクローンをつくる。

植物の世界においてクローンは古くから活用されていた技術だ。ようは挿し木苗のこと。やはり二代目三代目は期待された能力を示すかどうかわからないからクローンをつくる。日本では採穂園と呼ばれる場所で挿し木用の穂を採る。


公社の周囲一面、この採穂園が広がっている。僕が赴任したときはたんなる原っぱだったけれど、いつの間にか採穂園になった。いよいよメラルーカからアカシアへ植栽樹種を変えていくのだろう。まあ、原っぱよりも見栄えはいい。


一年目の9月、人生史上最大の下痢により一週間ほど休業。帰ってくると彼らは採穂の作業をしていた。ベトナム語で採穂のことをCút canh(枝切り)という。

オレもやるぜ、というとお前は病み上がりだからダメ、と言われた。やりましたけど。雨の中黙々とハサミで枝を切る。
俗にマンゴー蟻と呼ばれる大きくてオレンジ色のアリがアカシアのことが大好きらしく、たくさんいる。噛まれまくる素敵な作業である。痛いし腫れるんだ。測量中、背中一面に噛まれたときはさすがに発熱したのも今では良い思い出です。今ではな。
新芽の枝をある程度の長さで切り、集める。



次は挿し木づくり。といっても最終的に苗木は植栽地に持って行って植え直すので地べたに挿すわけにはいかない。小さなふくろに土を詰めてそこに挿す。つまりポット苗だ。

近隣のおばちゃんや娘さんたちが子どもを連れて朝早くに公社の作業小屋に来て、集められた枝の長さを揃え、葉っぱを切り、薬を塗る。和気あいあいと、喋りながら日がな一日作業に勤しんでいる。脇で子どもがちょろちょろと遊んでいる。
日当は10万ドン。約500円、というところだろうか。こちらにしてみれば結構いい収入だ。



お野菜のようです。
切った枝はもちろん根がない。その代わり薬が付けられる。条件さえ揃えば枝の切り口から根が出るけれど、時間がかかる。たぶん発根を促すオーキシン系の植物ホルモンかなんかを塗っているんだと思う。
また、アカシアは元気すぎて蒸散が激しいため、根がないまま植えると水収支が合わなくなり枯れてしまう。まだ吸水がうまくできないのに出口はダダ漏れの脱水症状だ。
蛇口を締める意味合いで、いくらか葉っぱを落としておく。




そして挿し木と養生。スプリンクラーのある圃場に切り揃えた挿し木持って行き、用意しておいたポットに挿していく。軽作業だけれど、なにしろ量が多いので炎天下ではじわじわ疲れる。ノン笠必須の作業。

このポットは小さなビニール袋で、水捌け用の穴を開けてある。植栽するときにこの袋はポイっとしてしまうので、本当は生分解性のなにかがいいんだろうな、とずっと思っていたんだけれど、最後まで言えなかったな。手に入る資材と拾い集める労力と処分の方法を考えると。「燃えないゴミの日」どころか収集なんかないから。
ある程度社会システムが洗練されてはじめて、ゴミを減らそうとか、環境に優しく、とか考えることができる。そんなことを考えた。
環境保護を!と叫ぶ声が、思ったほど遠くに届かないのは、経済・社会の文脈を踏まえていないから、なのかもしれない。


最初の苗木は15cmくらいの長さ、これを50cmくらいになるまで育てる。だいたい3ヶ月くらいだろうか。そのころにはポットの中に根が張っている。アカシアはマメ科なので根粒菌がいて、ちゃんと根粒がついていると良い感じだな、と思う。

アカシアの若木は鮮やかな黄緑で、実にきれい。活力を感じる。
苗木は1本1000ドンくらいだから5円くらい。メラルーカよりも成長が早くて売値がいいので近くの農家とかからも引き合いがあるそう。ただ、3,333本/ha植えてみたり、それを500ha植えてみたりすると、じわじわと良いお値段になっていく。

こんなふうに投資額としてはけっこうなものである一方で、カマウではアカシア植栽の歴史がせいぜい5年程度で「3,333本/ha」植える根拠がどうもあんまりなかった。
で、標準植栽本数について少し整理しましょうよ、というのが「植栽試験地をつくる」だったんです。実は。




それから苗出し→船で運搬→植栽。


帰国してなかなか時間ができなくてこのエントリーが書けなかった。
なんかひとくぎりついた感じがして、ホッとしている。