2013年10月20日日曜日

IPCCの第5次報告書をざっくりと読んでみる回

目をしばしばさせながら読みました。何を今ごろ、という感じですが。

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書第一作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について
ニュースでも流れたのでご存じの方も多いかと思います。この報告はデータを元に政府間で「事実」として合意されたもの、という程度に考えればいいと思われます。

「ほぼ確実」とか「可能性が非常に高い」とか「高い確信度」とか「中程度の確信度」とか、事実認定に入る注釈がなかなか面白い。ご丁寧に別紙で1ページ使って可能性と確信度に関する説明を設けているあたり気が効いている。予防原則という前提からすると文言の妥当性が焦点になるから、不確実性の扱いにこそ注意は払われるべきなのだろうな、と納得した次第です。
「どれくらい自信あんだよ?」「すっげーある!めっちゃある!」みたいな。
小学生なら下校時のランドセル持ちを賭けた仁義なき戦いに突入するくらいの時間帯であります。



「可能性が極めて高い」が95〜100%で、「可能性が非常に高い」が90〜100%の発生確率なんだそう。どっちでもいいわ、と思わなくもないけれど、これはもう統計処理の産物なんでしょう。将来の予測というのは実に難しそうです。

そういえばIPCCおよび気候変動懐疑に関しては前にこんなことを書きました(「だらだらと本を読みつつ、気候変動のことを考えてみる」)。これから氷河期に入るから大丈夫!っていうのも、いつ来るの?とかその確信度は?とか聞いてみたい気がします。


さて、今回の報告書のキーイシューはテレビでも流れたとおり。端的に抜書きしてみると、
・気候システムの温暖化については疑う余地はない。
・1971年〜2010年において、海洋の上部(0〜700m)で水温が上昇していることはほぼ確実である。
・人間活動が20世紀半ば遺構に観測された温暖化の主な要因であった可能性が極めて高い。  
など。
興味深いのは
・過去15年(1998年〜2012年)の世界平均気温の上昇率は1951〜2012年の上昇率よりも小さい。
・気候変動は陸地と海洋の炭素吸収を一部相殺してしまうことの確信度は高い。この結果輩出された二酸化炭素は、大気中により多く残ることになる。
海洋へのさらなる炭素蓄積の結果、海洋酸性化が進行するであろう。
へー。


先の地震のなんやかんやと京都議定書のなんやかんやで国策としての温室効果ガス削減に関してはなんだか宙ぶらりんの状況。あした、地球滅ぶわ、みたいな厨二病みたいなことは言いませんけれど、今後の青写真はやはり必要でしょう。
環境問題への対応という意味合いはもちろんのこと、この問題に対して世界に対して示せるコミットメントを考えるのは重要なんじゃないでしょうか。まあ、諸外国はその前に原発どおにかせい、と思っていることは間違いないでしょうが。
その辺のことは年末に出てくるであろう12年度温室効果ガス排出量の報告書を読みつつ、酒を舐めつつ改めて整理したい。


と、こんな先々の話とともに目を引いたのは次の一文。
・世界平均地上気温の上昇にともなって、ほとんどの地上で極端な高温の頻度が増加することはほぼ確実である。注意度の大陸のほとんどと湿潤な熱帯域において、今世紀末までに極端な降水がより強く、頻繁となる可能性が非常に高い。
実感と合っているのがなんとも。今年も暑い夏でした。

前にも書いたような気がするんだけれど、林業はダム等の構造物の設計に「100年確率」を使う。「100年に一度」の大雨でも対応できるような施設を造ること。同様に50年確率、10年確率なんてのもあります。
当然「100年に一度の雨量」は「10年に一度の雨量」よりも大きなものとなり、作られる構造物はより大きな、お金のかかるものにになります。
治山ダムはダムが破壊されると下流がえらいことになる、という前提で設計します。安全施設なのでより安全な方に設計する考え方です。

ただ、上の一文を考えるに、あるいは最近の雨の降り方を考えるに、こういった確率に基づく計算にもいささかケチがついたように思われます。「想定の範囲外」っていうとアレだけれど、今までなかったような降雨がばんばん来てしまうのでは、と心配になるわけです。最近は気象警報の出方も変わったし。
確率なんて結局過去の統計を参照しているわけで、現在のように新記録続出フェイズに入ってしまえば無意味とは言わないまでも、かなり意味は限定的なものにならざるを得ないのでは。そうすると「想定の範囲外」が今後も出てくる可能性が高いよなぁ、と。

うーん、よくわからない。よくわからないけれど、今週デカイ台風くるなぁ。
やだなぁ。