さて、ここはウミン。
メラルーカ林の調査をしてみる。カウンターパートの調査に同行。
調査なんて簡単と思うなかれ。ここの森林は四方、堀というか運河に囲まれている。
船がないとアクセスが不可能だ。
林内はこんな感じ。
たぶん雨期は滞水するため、木の根元部分は黒く変色している。水に浸かっている部分は雑草が生えない。そうではない部分はカヤのようなものが生えている。乾期だけれど、黒く土壌は湿っており、かなり匂いがある。
一気に好気性微生物が活躍するとき、たとえば災害とか。そういう匂い。
なんか、わかんねぇ説明だな。
ここはメコン・デルタなので、当然まっ平ら。
職員さんが、次々とプロットを作って調査していくのだけれど、どこ歩いたのか僕にはさっぱりわからない。これ、一人で入ったら迷子確実な。
本当にびしょびしょで、サンダルで侵入した僕としては全く残念な子としかいいようがない体たらくっぷりを発揮。もともと粘土質の土壌なので滑るし沈む。ちなみに彼らは裸足で入る。と、そんなところで現地の人と競ってはいけない。気を付けねば。
ヘビがいなくって本当によかった。蚊はもちろんのこと、ハチもいた。
下の写真はハチの巣。こうやって巨大な、なにやら黒い塊に出くわす。
わかりにくいけれど、細かいひとつぶひとつぶは全部ハチ。もぞもぞと、蠢く。
巣、というよりはむしろコロニーだ。ハーレムかもしれん。
調査したのは今年度伐採する8年生メラルーカ林。樹高は7m〜11mといったところ。平均胸高直径は5cm。8年で11mは、日本からしてみれば反則そのもののといっていい。ただ、胸高直径はずいぶん小さい。ヒョロリとしている。
調査野帳が没収されてしまったので、手元にデータはない。が、たぶん成立本数は6,000〜7,000本/ha程度とみた。たぶん。それくらい。10,000本は明らかにない。
これを多いと考えてはいけない。メラルーカの標準植栽本数は20,000本/haだ。70cm間隔でガシガシ植えてしまう。そして、植栽後の保育はない。つまり8年足らずの間に6割以上が枯死した計算になる。足元を見ると、枯死した株が散見される。
まるでマングローブ林の気根のようだ。
日本の主要植栽樹種、スギヒノキであれば2,500〜3,000本/haだから6〜8倍植栽していることになる。広葉樹植栽は除いてね。ま、確かに多いは多い。
昔仕事にしていた保安林では10年生以下の作業種は除伐しかしない。つまり侵入木や不良木の除去だ。こちらは8年で主伐。まったくもう。育ちの悪い北国の林業に関わってきた身としては、すこしばかりうんざりする。
思うのが、この枯死率の高さ。例えば最初から6,000本/haで植栽すれば、植栽経費は4割で済むじゃないか、という話だ。メラルーカの苗木は1本800VNDだからヘクタールあたり11,200,000VNDの節約ができる。4〜5万円くらい?そんなもんか。
この話を職員にすると、できないという。にべもない。その理由は、主要用途である杭材として使えなくなるから、だそう。
言わんとしていることはよくわかって、メラルーカという樹種はもともと箒状に枝が伸びる樹種で、しかも曲がりが起きる。わざと植栽密度を高くして分枝や曲がりを抑制しているのだろう。加えて密植すると種内競争により伸長成長が促進されるし、早期に林間閉鎖が起こり雑草の発生を抑制する。なるほどね。
だから、正確に言えば用材としての歩留まりを上げることを目的としている、ということになる。
それはそうかもしれないけれど、現状では杭材価格が値下がりしている、というところも、この地域の林業の現状でもある。メコン・デルタにおける木材用途は、杭材や薪炭材からパルプ材やパーティクルボードといった繊維板利用に少しずつシフトしている。
このままでもいいけれど、目先を変えてみたら?というところで、僕はこれから試験林をつくろうと思っている。
日本で森林調査するとき、測定の終わった木にテープをつけたり、チョークで印をつけたりするけれど、こちらは手で樹皮をべりり、と剥がす。そんなに簡単に剥けてしまう。
樹皮を剥いたところから、水が溢れ出す。やっぱこいつらは年中成長してるんだなぁと思う瞬間。
一面に泥水がばら撒かれたようなこの場所で、透明な水が溢れるのを見るのはとても印象的だ。
這う這うの体で調査がおわり、飲み会。こんなのばっか。
しかし終わった後のビールがウマイのは万国共通だな。