出張でハノイに来ていた。会議を終え、夕方のフライトまでいくらか時間があったのでドンラム村へ。
この9ヶ月で4回ハノイに足を運んだが、どうも好きになれない。埃っぽいし、排気ガスがすごいし、夏は暑く冬は寒い。絶対身体に良くないだろう、と。同じ都会でもホーチミンは、風があるし、スコールがある。
と、いうことであんまり北部に好感は持っていなかった。
ただ、北部にはなにやら不思議な影がある。埃っぽい大通りから、路地に入ったところ。建物を覆い尽くすような木々の濃い緑。人の営為を壊しながら、調和するもの。なんだかわからない。わからないけれど魅力はある。そんな気はしていた。
ふと思い立ったので、カメラはもってきてない。残念だけれどipodのカメラで。説明は下記がいい。写真もきれい。
http://www.vietnam-beauty.com/cities/ha-noi/4-ha-noi/235-duong-lam-ancient-village.html
ドンラム村はハノイから車で1時間。ハノイの市街地を抜けていくと少しずつ田園地帯が広がっていく。ドンラムとは面白い名前だと思ったら、ここに住むボランティアに Đường Lâmだと教えてもらった。砂糖の林。かつてここはサトウキビが生い茂っていたという。なるほど。
田んぼは南部にもある。というか、メコン・デルタこそ世界の穀倉地帯だ。しかし、こちらの田んぼはずいぶん親近感がある。日本の田んぼによく似ている。整然と区画管理されていること、ちゃんと田んぼになっていること。
メコン・デルタの田んぼは田んぼではないのか。そんなことはない。でも、水の量があまりにも多すぎる。乾いた土地が少なく、水が溜まっているところが多い。稲作というよりも、その溜まっている水たまりに稲を放り込むように見えなくもない。
水と栄養が豊かすぎるのだ。自然に抱かれて、無邪気に2回も3回も稲を収穫しているのがメコン・デルタ。
それほど水も栄養も豊かではないところは、きちんと管理しなくてはいけない。だから、同じ田んぼでも風景が変わってくる。そんなふうに努力して管理された田んぼはちょっときれいだ。
ドンラムは歴史的街並みとして保護されているとのこと。旧家は保存され、修復される。また、新築する際にも規制があるという。
現在2名、建築と村落の日本人ボランティアがここに入り、活動している。
現在2名、建築と村落の日本人ボランティアがここに入り、活動している。
僕は僕が想像していたベトナム的な風景というものに、ここで初めて出会えた。
家がしっかりしているというのは、ちょっと、我らがウミンではない。ウミンにあるのはお金持ちがつくったモルタルの家か、東屋のような農民の家の2択しかない。どちらにしても、たぶん20年ももたない。それは、南の人が永久構造物を作る、という意図を持たないこともあるし、酸性度の高さや塩分やシロアリにより朽ちてしまうからだ。修理に値する建物というのは、メコン・デルタにはあまりない。
家がしっかりしているというのは、ちょっと、我らがウミンではない。ウミンにあるのはお金持ちがつくったモルタルの家か、東屋のような農民の家の2択しかない。どちらにしても、たぶん20年ももたない。それは、南の人が永久構造物を作る、という意図を持たないこともあるし、酸性度の高さや塩分やシロアリにより朽ちてしまうからだ。修理に値する建物というのは、メコン・デルタにはあまりない。
そう、家が家としてしっかりしてるのがいいなと思った。なんというか、安心感がある。
赤茶けた壁に整理された街並み、それを覆う緑。壁の向こうには、たくさんの緑。寡黙で遠慮がちに見える人たちが生活していた。聞いた話では西暦200年代からのお話がある。ベトナム人の大好きな英雄譚だ。考えてみれば当然だ。ここは中国との係争地の歴史が長いのだから。単に建物が古いのではなく、この場所はストーリーを持っている。
メコン・デルタだってもちろん歴史はある。ただ、語られるストーリーはといえば、19世紀にようやくフランスとの関わりにおいて顔を出す。その意味で、メコン・デルタは語れることは、いくらか少ないかもしれない。積み重ねられた歴史が違う。
アクセスが良好だということもあって、外国人も含め多くの観光客が来ていた。
案内してくれたボランティアが言うには、ここはもともとコミュニティの力が強い、言ってしまえば排他的な場所であったという。だからこそ、この街並みが残っているとも言えるし、現在の商売っ気にどういう風に結びついているのかという興味もある。単純に人は変わる、ということかもしれないし、それがここに住む人の生きる道だと認識しているからかもしれない。実際のところ、そんなに商売っ気はないらしい。
変わりながらも、コミュニティは維持されていくのは、なんだかいいことだ。
ベトナムは基本的に、北部の人は南部の人が嫌いで、南部の人は北部の人が嫌いだ。北部の人は頭ばよくて、ずるくて、暗くいそうで、南部の人は、陽気で、何も考えていないそうだ。
外人からすると、北部の人にはある種、抑制が効いている感じがする。ズルイ、というのはよくわからない。たぶんズルイ人はどこにでもいる。
北部の人は声が小さく、キビキビとしたベトナム語を喋っている気がする。聞き取りやすいベトナム語。理解できるかはまた別だ。
抑制が効いていることは、別に良い悪いの話ではない。ただ、抑制の効いた人は個人的に好きだ。あけっぴろげな南もいいが、しずしずとしている北の雰囲気は、なにやら好ましい。あ、寒いのはきらいなんだけれど。