2017年12月13日水曜日

2017年はこんな音楽を聴いていたよ

あっという間に年末ですね。こんな時期になってきました。

16年はこんな音楽を聴いていたよ
15年はこんな音楽を聴いていたよ
12年はこんな音楽を聴いていたよ
11年はこんな音楽をきいていたよ

毎年必ずやっていると思ってたんだけど、13・14年が抜けていた。
2011年はもう6年も前。ベトナムに往った年、は遠くになりにけり。

しかし、その時々に僕が喜々として貼った音楽は、今見てもそんなに違和感がない。
どうも、僕は地続きである。

2011年の僕が今年のレコードを聴いたって、悪いとは思わないはずだ。
なにしろそいつは僕だからね。
私はどうも、私を私と呼べる程度の一貫性はあるようだ。

突然、超絶に成長してミラクルな自分に逢えるのではないか。どこかでそんなことを考えてもみる。突然、詩歌に長ずるだとか、頭の中で樹冠解析ができるようになるだとか、イチローよりもヒットが打てるとか。

まあ、ない。つーか、ないだろ。

それはたいそう残念なことであるけれども、いまここにいるわたくしが、昨日を踏まえたわたくしであることに、多大な落胆のほか、少しばかりの感謝と安心感を憶える。

余談はそれくらいにして、今年の備忘録を。


  • Asgeir

個人的フジのベストアクト。
フジカエリ'17

 

その歌声は、仄かなソウル的味わいもあるのだ。
既にたくさん書いたから、もういいや。

今年のベスト・レコードに推す。

Afterglow
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Asgeir
One Little Indian (2017-09-29)
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  • John Mayer
これもまた、素晴らしいレコードでした。

The Search for Everything
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John Mayer
Sony (2017-04-14)
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ギタープレイは抑え気味で、いわゆる歌もののレコード。
ブルージーで枯れたテイストの近作から一転、瑞々しくておしゃれな仕上がり。
ギタリストとしてのメイヤーを期待する向きには、やや食い足りないか。
しかしそれを補って余りある、メロディの充実。

彼は突出した歌い手ではない。
楽曲だって、どちらかというとオーソドックスな部類だ。

 

目立った特徴が見いだせないのに、惹き込んでしまう不思議。
よくよく練りこまれた楽曲と、彼の声に落とし込まれてしまうのだ。首尾よく。
振り返ってみると、彼の楽曲にはそういうものが多い。

今作はキャリアの中でもキャッチーな部類のレコードだろう。
可愛らしいメロディが全編に散りばめられていて、魅力的な一枚。

婦女子への人気が、一段と上がってしまうことでしょう。



  • Cornelius

存在はもちろん知っていたんだけれども、今年のフジが初見だったので。
個人的にはリミクサーのイメージが強い。長い間生きていると、「コーネリアス・ミックス」に出くわすのだ。しばしば。

リミックスという仕事は、コンポーザーの固定観念を粉砕する仕事なのだろうと思う。4つ打ちのダンスミックスにするのが仕事ではない。リスナーのみならず、コンポーザーすら瞠目させるような解釈と響き。
これに尽きるのではないか。

関連して。
SalyuとのS(o)un(d)Beam。僕、サリュ好きなんすよ。
 
このプロジェクトはまったく偉大な仕事でした。
レコードは多重録音。ライブでは彼女の声によく似た3人と。
ものすごい。


さて、コーネリアス。
フジの後に買いましたが、これが良かった。



音数が限られていて、隙間がある平面が用意されていて。

正しい音が、正しい位置にプロットされる。
それらの音が、広々とした空間に、気持ちよく広がる。
どこか、幾何学的美しさが感じられる。

清冽で、完璧なポップ・ソング。
そう表現したい。

Mellow Waves
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CORNELIUS
ワーナーミュージック・ジャパン (2017-06-28)
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  • Chris Cornell

今年は物故者が多い。

ULTRAMEGA OK(EXPANDED REISSUE)
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"Ultramega OK"がリマスター。リイシュー。

 

92年のライブ。ハイパーな呪詛と形容しよう。

近年も"Beyond The Wheel"は演奏されている。しかし動画を見る限りコーラス部では逃げ気味。仕方ないというか、当たり前だろう。
相応しい、しなやかさと出力を持っていた時代の曲。と、いうことなのだろうと思うよ。

25年くらい、時が流れて。
最期のシングル、という認識でよいのだろう。
 

往時の歌唱から比べると、見劣りする。
彼の声音は今や、風の音のようだ。

歌い手の出力や調整の成果が、歌の上手さであるのならば、クリスは四半世紀前よりも下手になったというべきだ。
レーザーみたいに声を集束させることができた時代と比較すると。
オリンピック的、アスリート的な意味合いに於いて。

しかし特に最近は、アスリート的歌唱から離れて、彼の声の「鳴り」を楽しんでいたと思う。あるキーをクリスが発声する。その中にはいくつもの音が、ささくれだったり、調和したりしながら、なんだかやわやわとしたまとまりとなり、そのキーとして発声される。
頭のなかで、分解され、再合成される。特にその必要があるわけではない。
くせ。

美味しい飲み物は、舌に飲み物を置き、口蓋の上部に押し付けるようにして飲む。というか、味わう。そういう種類のくせがある。
あるとき、それ赤ちゃんがおっぱい飲むときと同じやで、と誰かから指摘されて、思わず赤面した。でもね、やっぱりこれが一番飲み物の美味しい飲み方だと思うの。舌に押し付けて、味わうのですよ。
赤ちゃんは天才だし、クリスの歌は二度美味しいし。

 

なんの話だったか。くせの話だ。
分析と統合。芳醇さを味わい、曲の全体像を把握する。
3分ポップスでもそんなことをしているのか。あんまり自信はない。
でも、分析的に聴いている時と、そうでない時の聴いている音の違いは、自分の中でかなり明確だ。

なんとも知れん、やわやわとしたまとまりに。「風の音」としての彼の声に。
僕は今夜も、これからも耳を澄ます。


  • Save Us From the Archon

なんかメタルは今年は(今年も)耳を引かない1年だった。
Stone SourとNickelbackは良いレコードでした。が、ここで紹介するほどでもない。Linkin Parkのことは既に書いた。
Paladise Lostはあんまりだった。悪い意味で。先祖返りしてしまった。
10年前を思い出すんだ、ニック。

このわたくしにあるまじき、紹介できる新人がひとりもいないという悩みを抱えている。
ということで。このうだつのあがらないおっさんたちを。
軽音部にのめり込んでて気がついたら学生じゃなくなってました、的風情がすでにポイント高い。



ギターのハーモニーって、未だにワクワクする。
2本のギターから、それ以上の厚みが出る感じ。瑞々しさ。
メタルの一番スウィートでワクワクするところ。気持ちよくて、人を元気にするところ。

かつて、私の愛するグランジ・オルタナ・ムーブメントが、この古き善き様式美を完膚なきまでに破砕した。
なんの臆面もなく演奏できているのは40年選手の大御所のIRON MAIDENとかJudas Priestくらいじゃないですか。

L'eclisse
L'eclisse
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Save Us From the Archon
Tragic Hero Records (2017-05-05)
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とまれ、絶滅はせず、たとえばメロディック・デスはその系譜を継いでいていたし、エモと呼ばれた一部のパンク勢も、トーチを守った。Djentが出てきた後にこうしたものが出てくる。
でもさ、この方法論はもう少し早く復活してもよかった。
多くの人に受け入れられる「気持ちのよさ」を持っていると思うんだ。



  • George Michael

まことに、物故者が多くて困ってしまう。


ソロになって2枚目のレコードのリイシュー。90年だったと思う。すごく売れたと記憶している。けれど、僕は3枚目の"Older"派なので、このレコードの印象が薄い。
それから96年のMTVアンプラグドの初CD化・コンパイルされている。

ああ、この頃って「MTVアンプラグド」って流行ったよねぇ。

そして、このアンプラグドがとっても好いのです。


ジョージは、"Older"期の坊ちゃん刈りヘア。

90年代中庸までのジョージは、ソニーとの諍いをはじめ、コンポーザーとしては不遇をかこっていた。
しかし、歌い手としてキャリア・ハイであったし、そのクオリティはポップ・シンガーとして空前の水準であった。個人的最高到達点という程度のものではなくて、「フレディ・マーキュリーの衣鉢を継ぐ人」として、世間的認知があったのだと思う。

寡作の人ではあったし、浮き沈みのある人でもあった。
1つでも傑出したものを生み出して、充実した金色の時間を過ごせたとしたら、それは素晴らしいことだ。
大事なのは、輝かしい時間が永く続くことではなくて、輝きそのものだ。ジョージの才能と名声を考えれば、ずいぶんと謙虚な物言いなのだと思うけれど。

本人が、自らの輝きを知っていたのかどうか。
僕にはわからない。
でもたとえばこんな風に、その輝きは記録されている。

  • Ed Sheeran

間違いなく一番聴いた。17年に入って、すぐ出たでしょ。これ。


もうさ、有りていに思春期真っ只中な曲なんだけれど、心を動かされちゃうよね。
まだ、僕、道半ばなんで。

エド・シーランの歌唱は、力むと割れがち。そこが好い。
聴き苦しいと解釈したくない。

僕と比べれば彼ははるかに若者だ。しかし、この曲を貫くテーマは思春期の少年少女を相手にしたものではない。思春期を過ぎた、おじさんおばちゃんじゃない若者。最近では。そんな人は、世界中でどんどん増えているだろう。

PVの最後の雰囲気とかね。好いな、と思います。

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÷
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Atlantic Records UK (2017-03-03)
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僕だって、「思春期を過ぎた若者」を任じますからね。こっそりと。
ずいぶん励まされた気になって今日も聴きながら、寒風の中、よろよろと歩を進める。


  • Radiohead

もちろん"OK Computer"は、90年代を彩る屈指のレコードであります。
"Lift"は、これまで収録されなかった。

このレコードを買うのはこれで3回目。
わずか1曲のためだけに買い直すっていうのは、どうなのか。

Ok Computer Oknotok 1997 2017
Ok Computer Oknotok 1997 2017
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XL Recordings (2017-06-23)
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期待しすぎていたきらいはある。
しかし、待望の"Lift"は、テンポが遅く感じられたし、コーラスでトムのハーモニーが重ねられすぎだし。

あんまりいうと角が立つ。それでも、僕が聴き慣れたものはこの音源。


僕の中の"Lift"のイデアなの。

トムの透き通った細い声はコーラスで、エドのシンガロングと気持ちよく溶け合う。
近年のレディオヘッドでは感じられなくなった、カタルシスを感じることができる。
なんというか。昇華です。成仏です。

これが"Ok Computer"に入ると、異質なほどメロウで、レコードがこの開放的な色合いに引きずられてしまうかもしれない。レコードの色合いが少し変わったかもしれない。
"Ok Computer"は、歌詞も含め、冷徹な出来であった。ここから"Kid A"まではどんどん温度を下げていく。考え合わせると、蛇足の一曲だったのかもしれない。
その一方で、彼らのキャリアの中で極北(いい意味です)のメロウさを持つ、屈指(もちろんいい意味です)の名曲となってしまった。



さて、もうすでにだいぶ長くなりました。今年のまとめを。
特に、とは申しませんが、それなりに豊穣な1年であり、「それなり」を大事にしなくちゃな、と思ったりするところです。

そして、みなさまという、やわやわとした束に向かって。

本年も各諸姉諸兄の各所へのご尽力に敬意を表しますとともに
来年のみなさまのご多幸、切にお祈り申し上げております。
フォースがあなたとともにあらんことを。良いお年をお迎え下さい。


"Lift”の末尾で締めくくろうかと思います。
今日は、あなたの残りの人生の最初の日
さあ、元気だして、


来年が、善き年になりますように。
来年もまた、素敵な音楽に出会えますように。