2019年5月25日土曜日

外国人が森林を欲しがるとしたら、なぜか

ずいぶん林業土木が長くて、久しぶりに林業振興の仕事に帰ってきた。
新採用以来だから12年ぶり。干支が一回りしてしまった。

状況はさまざま変わっていて、いろいろ勉強しないといけない。
あとは、大昔の恥ずかしいエントリーがまだ残っていて、ページ削除をお願いしないといけないな、と思ったり。

そのなかで。さしあたり。

これな。


「ネットを中心に広がったうわさ」であったのかもしれないけれども、その波紋は大きく広がった。この話題はベトナムから帰国して知ったから、一回り前ではなく、平成26年前後。だいたい、5年くらい前の話になる。
現在、多くの都道府県で森林の売買に関する条例が制定されている。水源林の保護のために、森林の土地取引が発生する前に知事への届け出が義務付けられている。
水源林の保護。特に間違ったことは言っていない。「何からの」保護か、というところだろう。
外国人が水資源を確保するために水源林を買い占めている、というお話であれば、確かにセンセーショナルではある。

でも疑問があった。
外国人が水を欲しがるとしても、日本「で」水源林を欲しがるわけではないだろう。
マトモな大人は、蛇口をひねれば飲料水が出てくる国で、わざわざ水源林を買ったりはしないのだ。

水が必要であるとして、不足している場所が欲しがるのだろう。
豊富な場所で受け取ってもあんまり意味がない。日本で生産された水を不足している場所に持っていくにはコストがかかる。輸出してもいいけれど、それで儲かるなら日本人がとっくにやっている。アラブの国でやっているように、海水を脱塩したほうが早いし安い。
例えば、井戸に毒を投げ込むような。そんなことを思いつく国でもなければ。普通そんなことはしない。
そんなことを考えると、どうも合点がいかない。
ディベロッパーだとか、経済合理性を勘案した上で水源林を買うやり方は、それが外国人であれ、理解できるだけマトモだ。
そうでもなく、水源林を淡々と買い進められるのは、マトモな大人のやり方ではない。騙されているのか、更に深い意図があるのか。いずれにしても気味が悪い。


この記事を額面どおり信じるならば、彼らはステータスのために森林を買ったことになる。それだけ。勘ぐっただけ損した。そんな徒労感。
先方はマトモな大人ではないのかもしれない。
ステータスとしての林地買収。金持ちの考えることはよくわからん。

バブルの頃、日本人がアメリカの土地を買い占めていて、カリフォルニア州くらいの面積が日本人のものだった、と聞いたことがある。
何に使うつもりなのかと聞かれたら、投機目的だったんだろう。たぶん、なにしろバブルですから。そしてたぶん、うまく儲けが出たとは思えない。
バブル期の日本人は、今の日本人からすればやっぱりマトモではない。


この水源林買収禍で、実質的にすっごく振り回された人もいたはずだ。まだよくわからないけれども、フタを開けたらこんな顛末で、責任者出てこい、という向きもあるはずだ。
ここは実害がなかった、というところで怒りを鎮めていただくほかない。
どこぞの国による、ある地域の植民地化であるとか、ほんとうにそうだったら条例の出番だしそれはすごく困ることから、ひとまずは良かったね、と祝いでおくことにする。


同時に、外国人が森林を持つのがダメであるとすれば、日本人であればオーケーなのか。
そいういう話も、そのうち考えてみることにしよう。