2012年9月9日日曜日

Kansasとベトナム

まさかの松本公演があったんだ。そして見てきた。


なんとも香ばしい。




コーラスのところで聴こえる、ヴァイオリンがなんとも好きだった。短尺で、とってもキャッチーな曲だけれど、ヴァイオリンとキーボードのユニゾンなど、実はちょっと面白い。


2001年に1月。伊那から90分かけて松本へ。
Kansasのカの字も知らなかった友人を「おれ、カンサスに入るわ」と言わしめた名演。友人とはここ数年会ってないが、まだ「kansasに加入」というニュースは聞いていない。

全席パイプ椅子というライブも初めてなら(実際、そこは中央公民館みたいなとこだし)、最初から最後まで座ってみるライブというのも初めての経験だった。
オーディエンスの平均年令高かったしな。


ロビー・スタインハートはバイオリンを片手に歌とキーボードもこなす。バイオリンを弾いているときは歌わない。キーボードを弾いているときは歌える。なんだか曲芸を見ているようだった。
ハイライトは、ロビーとスティーブ・ウォルシュのコーラスだ。ロービーの太い声とスティーブの伸びやかな声のバランスはきれいだ。ライブでみたスティーブは、高ピッチのパートがずっと苦しそうだったけど、ロビーの声はレコードのまんまだった。



ベトナムの人もKansas好きだ。まったくバンド名が認識されていなかったとしても"The Wall"はほんとうによくかかっている。"Dust in the wind"もかかってるな。おそらくkansasのカの字も知らない手合いが勝手にカバーしている。ギターを号泣させる演歌アレンジで。ベトナム人はイーグルス以外判別不能、と僕は見ている。

69年から活動を始めているので、すでにレジェンド入りしていると思われるが、ヴォーカルのスティーブ・ウォルシュはまだ60そこそこなのか。


youtubeでKansasを追ってみる。こうやって振り返ると、kansasの歴史は「スティーブウォルシュの劣化の過程」ではないかと思えてくる。
70年代のダサかっこよい出で立ち、伸びやかな声。
そして90年代のボン・ジョヴィあたりを意識であろう、哀しいルックス・出なくなりつつある声(と、それを補うかのようなオーバーアクション、というよりも痙攣)。
そして00年代以降の回復の見込みを失った、しわがれた声(と、寂しい頭髪)。
現在こそが黒歴史、という悲劇。時間とはまったく残酷だ。そしてなお現役。


というわけで、ダサかろうがなんだろうが70年代のKansasは、彼らにとってまったく輝かしい時代であったんだな、と認識を新たする。





名曲は数あれど、有名といえば"Carry on my wayward son"がだろうか。こちらが76年。スティーブさんは、キーボードのヴォーカルでずいぶん忙しそうだ。パーカッションはいいんじゃない(笑)?とか、ロビーもっと働け、とかいろいろ言いたいことが出てくる。
いかにも「手に仕事がある感じで」見ていて微笑ましい。

もし、このゴツゴツとしたギターのリフがなかったら、スムーズなピアノバラードだよな。メロディもきれいだけれど、このツェッペリン的リフがあるからハードロックの文脈で語られる曲となったように思う。この、ちょっとばかし有名なギターリフは、枕歌の如く、その後も様々なアーティストに愛用されることになる。
うん、普通にかっこいいではないか。




プログレッシブ・ロックと呼ばれるものを初めてかっこ良い、と思えるようになったのはこのkansasから。プログレは10分を超える長尺の曲も珍しくない。つまんなくって長ったらしい曲を聞くのは拷問だが、それを別として「長尺の曲の聴き方」のようなものはあるような気がする。
ヴァイオリン奏者を擁する、ちょっと異色なバンドだがメロディはなんだか懐かしい感じがして親しみやすい。どことなく牧歌的な印象がある。カンサス州とはそういうところなんだろうか。



"Song for America"はわかりやすい展開とメロディ。昔の西部劇で使われていそうなフィルム・ミュージックのような趣きもある。
オーケストラは若干やり過ぎのような気がしなくもないけれど。