2013年2月3日日曜日

めしにかかる偏執的愛情(追記あり)

本日ひるめしにかーばーさーが出たので写真を添付。なんだかさっぱりわからんだろうけど。
醤油ベースの甘辛仕上げ。長ねぎ、というよりわけぎ的なものととうがらしで仕上げる。


ひるめしは社食でたべる。


社食というか、あずまや。
飯炊きのおばちゃんが常駐しており、めしの時間以外はカフェになる。
ベトナムの昼休憩は11時から13時までの2時間。
我が社、10時50分くらいから食べ始める。




ベトナムに来てから朝ごはんはほとんど食べなくなった。晩ごはんも軽く。
昼ごはんこそ一日の主戦場と位置づけている。

僕はたぶん悪食なんだと思う。それほど気にしない。お腹を壊さない限り。ごはんがある限り。頓着していない。
嫌いなものはメロンであるが、ベトナムでメロンに出くわしたことはないし、そもそも彼奴は主食はおろか、副食物ですらない。あやつなどもはや、眼中にないわ。
食べ物のベトナム語に詳しい人がいると妙に感心してしまう。僕はぜんぜん知らない。とは言え、料理の名前を覚えないのも問題だなと自覚はしている。レストランに行った時の再現性がないのだ。あれなんだっけ?を連発。要は怠惰なのだ。


ひるめしは煮魚、スープ、野菜。一汁二菜。
こちらの方はよくお米を食べる。ほっそりした女性でも3杯、4杯と。小皿に入った煮魚をみんなで突っつき、小さくむしって口に放り込み、大量のごはんを掻き込む。
15人ほどの腹を空かせた男どもにより、毎日3〜4升ほど炊きあげられるごはんは15分程でカラになる。機関掃射の如き気持ちのよい食べっぷりである。


こちらのおかずの味付けが濃いのは、ごはんとの素敵なハーモニーを醸し出すためのアクセント。
ベトナムで見るこの主食物と副食物の関係が、実に優美かつ、完成されたひとつの環として結実していること。ごはん党日本支部から派遣された人間として、驚嘆と畏敬の念を禁じ得ない。
ごはんからおかず、そしてまたごはん、という洗練された所作。
ベトナム支部かくや、である。
食事が終わるまでお茶碗はテーブルに置かない。これこそ正義と云ふものであろう。


ベトナムのごはんは長粒米である。タイ米ほどではないけれど、パサパサしている。
もっちりもちもちコシヒカリ国から来たので、さぞかし衝撃を受けるかと耐ショック姿勢でノイバイ空港に着陸したわけだが、実際のところそれほどでもなかった。やはり悪食なのか。
もともとお米は硬めが好き。日本でも水を少なめにして炊いていました。

ベトナム米はチャーハンにすると絶妙。冷えてしまうとうまくない。
日本のお米は甘みが強い。もはや塩振って食べられるレベル。とは言えだ。そもそもお米に甘みが必要なのか。お米はお米であることにレーゾン・デートルがあるのであって、甘みにあるのではない。知らんけど。


思うに、ジャポニカ米とは食べ方が違うのだ。
幼児並びに燃費と頭の悪い中高生および腐れ大学生を除く、多くの良識ある日本人はごはんを掻き込むようには食べない。それはお行儀の悪い食べ方である。箸で適量取り、口に運ぶ。
こちらのお米はパサパサしているため、日本のように箸で一口分取ることが難しい。だからベトナムではいい歳をした紳士淑女であろうと、お茶碗に口をつけて掻き込む。あるいはスープを入れて流し込む。地べたに座って片膝ついてな。
あんまり噛まない、かもしれない。日本のごはんの方が噛んでいたような気がする。

そして甘みが少ない分、カロリーは低い気はする。あんなに食ってほっそりしているベトナム人を見ると。「ダイエット米」とかで売りだせば売れるんじゃないか。炭水化物ダイエットとか言ってるんだったらカロリーの低い米がニーズがあるかも。


スープの具はウリ、カボチャ。そしてパパイヤ、パイナップル。後半ふたつに関して、ごはん党日本支部青年部として断固抗議せざるを得ない。まさに邪道。愚かなる振る舞いである。ごはんに合わんだろうと。ごはんに失礼だろうと。ごはんに謝れと。
パパイヤに関しては一年過ぎるまで「このオレンジ色のウリなんだか甘いな」と思っていた。で、ある日気がつく。これパパイヤだし!、と。
こちらの人はそれを醤油に浸して食べる。そしてやっぱりごはんを掻き込む。
そんな食べ方にすらやっぱり最近は慣れてきた。悪食の成せる技である。

たまに大根が入っているスープが出てくる。この国は日本ほど大根を食べない。
これがなんともやさしいお味で、少し日本を思い出す。


煮魚はらいぎょ、なまず、いわし、あじ、かつおなど。ウミンという土地は一面水浸しで、海にも接しているので魚がうまい。淡水魚もよく食べる。うなぎ、たうなぎも食べるが、ちょっと高級。社食ではお客さんが見えられたときしか出てこない。

同じ理由で畜肉もほとんど出てこない。
そもそもこの村、「フォーの国」の一隅に所在するにもかかわらず牛肉がないという、悲哀に満ち溢れた地域である。理由は一帯の水位が高すぎて、ほとんどが湿地であるためだろう。牧草地と呼べそうな土地がネコの額ほどもないのであれば、むしろネコ食ったほうが早いだろうと。
あ、ベトナムではねこは食べません。いぬは食べますが。
とはいっても犬食も南部は少ない。ハノイ等北部の街角における販売風景を見ると、ウミンは食べない、と言ってしまってもいいかも知れぬ。

ということで、畜肉といえば、まずぶたとにわとり、そしてあひる。しばしば仲良く放し飼いにされている。まさに鳥インフルエンザ発生待ったなしである。ハートのエースが出てこなーいだけである。ところであひるはうまいよね。

あとは、へびと野ねずみ。あ、たまに野鳥を食べます。
ベトナム語では、にわとりとあひる以外の鳥はChimとひとくくり。正確には「Chim なんちゃら」なんだけど、こちらの人はその点あんまり気にしない。「この肉はなに?」「野鳥。」と、まったく要を得ない問答が幾度か繰り返されたことも、記憶に新しい。
焼き鳥もしくは焼死体、という調理で宴会の席に供されるが、総じて小さく「食べで」はない。
いずれにしても、上記はごちそうに分類されるものだ。


話を戻す。
そんな感じで、当地では魚をよく食べる。食用にする淡水魚なんて、日本ではあゆとかやまめとかいわなとか、臭みの少ない渓流魚だな。ふなとかこいとかあんまり食べない。
鮒寿司か。鯉こくか。
ああ、どじょうはたべるな。佐渡では「トキの餌」扱いにされている印象が。
こと魚に関しては、日本人は海ばっかり見ているのだな。らいぎょを食べながらそんなことを考える。そういえば、ばあちゃんがらいぎょ食べたって言ってたな。満州で。


ずっとこの魚うまいな、と思いながら食っていた。
輪切りになった切り身。かなり大きい。くせがなく、脂が乗っていて、ぷりぷりしている。ちょっと濃い目の醤油仕立ての甘辛煮に合う。なんの白身魚だろう、と考えていた。感じとしてはたらが思い浮かぶけど、あんなに淡白じゃなくてしっかり味がある。身離れの感じも違うな。

僕にしては珍しく飯炊きのおばちゃんに訊いてみると、かーばーさーだという。
調べるとCá ba saである。 Cáは魚の意。ばーさー、バサ、という魚だという。なまずの仲間ですか。ほほう。バサというのはカンボジアでの名前だとあるんだけど、ベトナム人も普通にバサと呼んでいるのでバサでいいんだろう。メコン・デルタはカンボジアみたいなもんだし。けっこうクメール語喋るんだよな。
池沼で獲れるが養殖も盛んだぜ、と飯炊きのおばちゃんはいう。ほほう。


ボウズこんにゃくの市場魚類図鑑
トンレサップ湖では250キロにもなるヤツが獲れるとのこと。すげえ。
淡水魚なんだけれど泥臭さはあんまり感じない。らいぎょの泥臭に比べれば、皆無だ。
意外にレシピが充実している。ムニエルみたいな料理が多いんだな。
英国ではフィッシュ・アンド・チップスに使われている、とな。
フライはおいしいだろうなぁ。ふわっとして。
これは、ごはんも進みますわ。


日本でも普通にスーパーでも売られているそうなので、気になった向きはお試しあれ。
まあ、悪食のおすすめってのもアレなんだけどな。