2015年2月22日日曜日

ようやくAqualungさんの新譜がでたところで、やっぱLianne La Havasちゃんがすごい件

そりゃあね。ブログのタイトルを拝借元がレコードを出したわけですから。
黙っているわけにはいきません。

10 Futures
10 Futures
posted with amazlet at 15.02.22
Aqualung
Imports (2015-01-20)
売り上げランキング: 70,325




ずいぶん久しぶり、というか前作の"Magnetic North"が2010年だったから、5年ぶりのレコードになるんですね。
前作は実に彼らしい、原点回帰の作品だったことを考えると、今作は実験的な作風だと感じました。最近の彼はアーティストとしては半分以上は引退状態で、Mat Halesさんとしてのプロデューサー業が主戦場。そのせいか、今回のレコード"10 Futures"は、他のアーティストとのコレボレーションが多い。自身のみでのトラックはわずか2つ。

実験的であるところが、僕にはどうも鼻につく。あなたはもっときれいな曲がかけるでしょ。
つらつら考えてみるに、前作の"magnetic North"が好きだったのは、牧歌的な世界観に戻ったせいなんだと思う。
翻って今作はどうも、彼自身の色が少ない。そこがさみしい。そんなことを思うんだけれども、突出した1曲といえばやっぱりリーダートラックの"Eggshells"になる。


海外のレビューをいくつか読んだ。概ね好意的なものが多くて、この"Eggshells"はヒットといっても差し支えないみたい。あるレビューではJames Blakeとの類似性を指摘していていて、ああなるほどね、と思う。
ビートの効いたリズム。冷たくミステリアスな曲調。「マシーンからにじみ出る仄かな叙情性」みたいな世界観はグッとくる。ボコーダーを通す通さないにかかわらず、この繊細さがAqualungさんとしての真骨頂だと思う。


この曲も多分にもれずフィーチャリング曲で、Lianne La Havasとのデュエット。リアーネのデビュー・レコードのプロデュースはマットさんなので、秘蔵っ子的な位置づけなのかもしれない。
それにしても彼女の声の豊かなこと。本当に深い声。か細いマットの声と好対照をなしている。彼女の声には微妙な揺らぎというか、陰があって、表情が実に見事に浮かび上がる。あっぱれな主役食い。すばらしい。マットさんはよく見つけた。でかした。




うーんかわいいねぇ。
彼女は去年リリースされたPrinceのレコードでも共演していて(これもとてもよいレコードだ)、彼女自身のキャリアとしても順調にステップアップしてるみたいだ。今後に期待。

Is Your Love Big Enough?
Is Your Love Big Enough?
posted with amazlet at 15.02.22
Lianne La Havas
Imports (2013-05-31)
売り上げランキング: 103,340



一方でAqualungことマットさん。このレコードでは、彼がこれからどこに行こうとしているのか。いまいちわからない。
傑出した声の持ち主というわけでもないし、"Eggshells"を佳作たらしめたのは、彼のアイディアというか、世界観に拠るところが大きい。だから今後は「世界の構築者」として、やっぱりプロデュース業に精を出すのかな。そんな気がする。

2作前(コンピレーションの"Words and Magic"を含めれば3作前)の"Memory Man"というレコード。彼にしては気宇の大きすぎる音作りで、どうも好きになれなかった。
おそらくそのころ、彼はちょうど子どもを授かっていて、喜びと不安が入り混じったコメントがインナースリーブの中に綴られていた。
どんどん世界がおかしくなっていく。この子は大丈夫だろうか、と。
完全にお父さんモード。



君の人工呼吸器になる、君の与圧服になる、君のパラシュートになる。大丈夫。大丈夫だから。
"Pressure Suit"ではそんな風に歌われる。
このレコードのビッグでファットな音作りは、彼のそんな腹のくくり方の一端を示していたのかもしれない。マッチョ振るには、彼はいささかひょろりとしすぎだし、肩幅も狭すぎると思うんだけれど。
今ごろ聴きなおしてみて、そんなことを考える。


あくまで僕は、明るく透き通って繊細で、”Still Life"なAqualungを愛する。「箱庭愛好家」としては。
でもね、マットさんがいつかもし再び、自分の声でなにごとかを言いたくなったら。
僕はまた立ち止まってまた、彼の声に耳を傾けるのだろう。