2018年4月2日月曜日

桜にかかわるあれこれ

今年の冬はずいぶんと寒くて、もう春なんてこないのかと思ったものだ。
春は匂いだ。土の匂いやどこかで咲いている花の匂い。
しばらく使っていなかった感覚が刺激される。
思った以上の早さで、春は駆け抜けている。

みなさま各所でお花を楽しんだことと思いますが、こちらは開花までもう間もなく。

いちおう、林業関係が仕事。でも一番好きな木はなにか、と訊かれると、答えに詰まる。ベトナム時代ならば胸を張ってメラルーカ、と応えるのだが。

ほんとは誰も知らないような樹木を云いたい。けどあんまり樹木知らない。樹木分類実習はぎりぎりで単位をとった。
なんだろう、サクラかな。とか、あんまりその道の人っぽくはない。
したがって、敢えて、ここはサクラと答えたい。


サクラの美しさは花だけでなく、その板の色合いにもある。
そんなことを知ったのは、大学に入ってからだった。実習でベンチを作った。灰色というかやや青みがかっているところから、赤みの強い桃色まで。
それまでまじまじと板を見ることなんてなかったけれど、木目の、文様として美しさを感じる木は多々あれど、グラデーションが楽しめる板はそんなにないような気がする。

板は、机になったり椅子になったりする。そうなると、しかるべき期間、人とともに時間を過ごす。木目は変わったりしないけれど、色は変わる。ぼけたり、あせたりする。
伊勢神宮は20年毎に新築される。式年遷宮と呼ばれるこのしきたりは、神様が挽きたてのヒノキの瑞々しい赤みを愛すからだ、と聞いたことがある。ほんとかどうかは知らない。神さまは無駄遣いがお好き、とは思う。

そんなことで、サクラ材のグラデーションの鮮やかさは、挽きたての板にたまたま出くわした余沢であるだろう。僕が作ったべんちは風雨にさらされさっぱりと白っちゃけてるか、壊れて山となっているはずだ。

色は徐々に失われていく。でもそれはサクラの花とも似ているのではないか。
期間限定。美しさと価値は倍加するだろう。
神さまは、板のみずみずしさをではなく、花の薄紅色を愛でればよい。
何処にもましましておわすのだし、そのほうがエコだし。


そんなことで、今年も期間限定を堪能したい。
暖かい日に眺めたい。花見ってだいたいが、寒くってかなわない。