それと、図書館とはいいものだ。ようやく読んだ。
店頭でジャケットに惹かれて、そのままになっていた。
ついでにいうと、表紙の写真はアジアのどこかだと思いこんでいた。
ほら、なんだかこんな感じだなと思って。
シェムリアップのどこかで、犬は歯を食いしばって寝ています。
この本はアメリカのお話であった。どうでもよい話だ。
どこの犬であろうと犬はいいものと決まっているのだから。
この本は、犬と人の話。基本的には、人の視点から物語は動き出し、対象物としての犬がいる。しかし、人は次々と入れ替わる。
犬は運命に翻弄されている物語は、人もまた翻弄されている物語でもある。
人と犬が放り込まれた、嵐の中の笹舟みたいな感じだ。
七尾旅人さんはそんなに好きではなかった。
頭髪が白くなったおっさんには、いささか甘ったるいのだ。
そんな先入観を携えて、なんとなく昨年のフジロックで七尾さんを見た。見れたのは最後の方だけなんだけど、すごくいい曲だと思った。じんときた。
あれ、おかしいなと思って。
レコード全体を聴くと、思ったほど芸風は変わってなかった。引き続き甘い。
とはいえ、この「迷い犬」はなかなか良い。
ライブで聴いたのは、レコードの冒頭の"Leaving Heaven"。
単調と形容できるくらいに静かで淡いナンバー。
15のガキみたいに ふてくされて歩く
あなたに会いに行く あなたに会いに行く
15の犬みたいに もういなくなる
体を引きずって あなたに会いに行く
この単調さが好い。大事なことは淡々と語られるべきではないか。
本当のところ、犬の気持ちはわからない。
他人の気持ちだってわからないのだから無理もない。
「わかるような気がする時がある」だけだ。
しかしそんな時、人は犬とバディを組めたような「気になる」。
共犯関係というか、運命共同体というか。
・・・なんでこんなに面倒なことを僕は言っているのだろう。
単に、「人は犬と気持ち通じ合う」と云ってしまえばいいのに。
少し考える。
「本当は通じ合えないこと」こそがテーマだからではないか。
物語の中で、入れ替わる人々は、犬(もしくは犬の向こうにいる誰か)に気持ちや願いを託したりする。たとえ本当に犬と人が通じ会えたとしても、そんな複雑な思いは犬には理解できない。
願いや祈りを人が放つ。犬はそれを運ぶ。
もちろん、届いたり届かなかったりするのだけれども。
やっとしっくりきた。この物語は、そういうことなんじゃないか。
別に犬を単なる運送屋として卑下するつもりはこれっぽっちもない。
それなりに犬は好きなつもりです。まずもって。
そして、この種の運び屋稼業は、犬にしかできない可能性がある。
書評:補い合う一人と一匹:『子犬に脳を奪われた!不思議な共生関係の謎』
犬は「感情の預り手」であった。
1歳を過ぎた娘は日々、さまざまな感情を発散する。
その豊かさと強烈さにたじろがされるのだけれども、かつて僕にもあったはずのそれらの多くが今や失われてしまったことに驚きを感じる。
それはたぶん、甘ったるいものが耐えられなくなってしまったことと、どこか関係していると思うんだ。僕の中に残る埋み火のような感情が、七尾さんの歌に反応したんじゃないか。
とまれ、もう僕は彼女みたいには喜べないし、怒れない。
でもそんな彼女も、いつかは大人になる。
だから人には犬がいる。なんだかそういってもいいような気がする。
いぬを飼うのもいいなと思う。
でもねこも好きなんだよね。
ボストン テラン
文藝春秋 (2017-06-08)
売り上げランキング: 22,427
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ついでにいうと、表紙の写真はアジアのどこかだと思いこんでいた。
ほら、なんだかこんな感じだなと思って。
シェムリアップのどこかで、犬は歯を食いしばって寝ています。
この本はアメリカのお話であった。どうでもよい話だ。
どこの犬であろうと犬はいいものと決まっているのだから。
この本は、犬と人の話。基本的には、人の視点から物語は動き出し、対象物としての犬がいる。しかし、人は次々と入れ替わる。
犬は運命に翻弄されている物語は、人もまた翻弄されている物語でもある。
人と犬が放り込まれた、嵐の中の笹舟みたいな感じだ。
七尾旅人さんはそんなに好きではなかった。
頭髪が白くなったおっさんには、いささか甘ったるいのだ。
そんな先入観を携えて、なんとなく昨年のフジロックで七尾さんを見た。見れたのは最後の方だけなんだけど、すごくいい曲だと思った。じんときた。
あれ、おかしいなと思って。
七尾旅人
felicity (2018-12-12)
売り上げランキング: 36,623
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売り上げランキング: 36,623
レコード全体を聴くと、思ったほど芸風は変わってなかった。引き続き甘い。
とはいえ、この「迷い犬」はなかなか良い。
ライブで聴いたのは、レコードの冒頭の"Leaving Heaven"。
単調と形容できるくらいに静かで淡いナンバー。
15のガキみたいに ふてくされて歩く
あなたに会いに行く あなたに会いに行く
15の犬みたいに もういなくなる
体を引きずって あなたに会いに行く
この単調さが好い。大事なことは淡々と語られるべきではないか。
本当のところ、犬の気持ちはわからない。
他人の気持ちだってわからないのだから無理もない。
「わかるような気がする時がある」だけだ。
しかしそんな時、人は犬とバディを組めたような「気になる」。
共犯関係というか、運命共同体というか。
・・・なんでこんなに面倒なことを僕は言っているのだろう。
単に、「人は犬と気持ち通じ合う」と云ってしまえばいいのに。
少し考える。
「本当は通じ合えないこと」こそがテーマだからではないか。
物語の中で、入れ替わる人々は、犬(もしくは犬の向こうにいる誰か)に気持ちや願いを託したりする。たとえ本当に犬と人が通じ会えたとしても、そんな複雑な思いは犬には理解できない。
願いや祈りを人が放つ。犬はそれを運ぶ。
もちろん、届いたり届かなかったりするのだけれども。
やっとしっくりきた。この物語は、そういうことなんじゃないか。
別に犬を単なる運送屋として卑下するつもりはこれっぽっちもない。
それなりに犬は好きなつもりです。まずもって。
そして、この種の運び屋稼業は、犬にしかできない可能性がある。
書評:補い合う一人と一匹:『子犬に脳を奪われた!不思議な共生関係の謎』
犬は「感情の預り手」であった。
1歳を過ぎた娘は日々、さまざまな感情を発散する。
その豊かさと強烈さにたじろがされるのだけれども、かつて僕にもあったはずのそれらの多くが今や失われてしまったことに驚きを感じる。
それはたぶん、甘ったるいものが耐えられなくなってしまったことと、どこか関係していると思うんだ。僕の中に残る埋み火のような感情が、七尾さんの歌に反応したんじゃないか。
とまれ、もう僕は彼女みたいには喜べないし、怒れない。
でもそんな彼女も、いつかは大人になる。
だから人には犬がいる。なんだかそういってもいいような気がする。
いぬを飼うのもいいなと思う。
でもねこも好きなんだよね。