2020年7月10日金曜日

腸を大事にしよう(2回めくらい)

まったく、先行き不透明な昨今であります。
来年オリンピックなんてできるの?とか、
今年のお盆ってどこで過ごすの?とか、
そもそも来週は今週よりも落ち着くのかしら、とか。

そんな中でできることは、少なそうだし、正解かどうかは分からない。
振り返れば非効率に見えるだろうし、間違っていることもあるんだろう。

そうは言ったって、スーパーマンでもないただの人にできることは限られている。
こんな状況だからこそ、姿勢って大事だなと思うのですよ。
太平洋戦争末期を想起させますよね。
そういうのって。
姿勢くらいしか示すものってないのよ。当時だってきっとそうだったんでしょう。
もちろんお財布が許せば新薬の研究に2兆円くらい投資したいのですよ。姿勢として。
ああ。なんだか全然進歩というものが見いだせない。



いろいろな情報があると、人ってかんたんに混乱してしまう。踊らされてしまう。
ここ数ヶ月はそんな風景をよく見たし、自分もまた混乱したり踊ってたりした。
腹を据えたり、括ったり。
自分にコントロールできる部分は少ないからこそ、できるところはしっかりとやらなきゃな、と思う。
その割に、ガッテンでマユツバ的ネタを仕入れては、妻に白い目で見られている。
ほら、NHKってウソつかないでしょ。一般的に。
ケッチャップの味噌汁はね、まずかった。



体力とか、免疫力は、どうやったらつくのだろう?
人口に膾炙する割に、いまいちよく分からない言葉たち。

僕は風邪を引きやすい。一度風邪を引くと長引く。僕以外の家族は風邪を引いてもすぐ治る。薄皮をはぐどころか、レンジでチン、で病魔は去っていく。
それに比べてこちらは、2週も3週も調子悪そうにしている。引き続き気分はすぐれないのだけれども、なんだか申し訳なくなる。どうして僕は、病気の治りが遅いのだろう。
欲しいんですよ、そうそう病気にならない体力とか、免疫力とか。

定期的にそんなことを考えては、定期的に三日坊主を始める。

前回、僕はヨーグルトを食べ始めた。
『寄生虫なき病』を読んで、ヨーグルトを食べはじめる。
2014年、33歳。一月くらいは食べたはずだ。飽きてやめた。効果は分からない。
2020年、40歳。僕はイヌリンを飲むようになった。3週間くらいは飲めている。
二袋目ももう少しで終わる。これは進歩と呼んでもいいはずだ。

効果は、調子はどうだろう。
絶好調!という感触はない。腰は痛い。でも風邪は引いてない。
長い付き合いのアトピーは、変わりなく憎悪と寛解を繰り返している。
取り立てて好調ということもないけれども、取り立てて不調というわけでもないから、まあいいのだろう。
しばらく風邪を引いてない理由のひとつはこのご時世だろう。手洗いとかマスクとかのおかげかもしれない。理由はわからないし、明日もきっと腰は痛い。
でもまだしばらくは、イヌリンをヨーグルトに混ぜ込むつもりだ。
僕の同胞たる腸内細菌には、元気でいてもらいたいと思っている。


読みたいな、と思っていた本が少し高くて、またにする場合、「欲しい物リスト」に登録する。リストは増える一方。もう数十冊になっていて、なかなかはかどらない。

うまいこと図書館においてあったり、Kindleセールで安く変えたりして、少しずつ読む。この2冊は、どちらも腸内細菌の話。
どちらも2016年の本。わ。もう4年前なのか。
この二つの本、同じようなテーマを扱っていて、似たようなところに行き着いている。そりゃそうだ。著者が違っても、同じ年に出版された本なのだから、事実関係に大きな違いがあるほうがおかしい。
なんだか似たような本を一時に読めた、というのが面白かった。





2020年の今であれば、2020年的な本が上梓されていると思うので、諸賢はもちろんそちらをお読みになるべきだ。言ってみれば僕は、我執を遂げただけ。

この2冊、どちらのほうがよかったのか。同じタイミングで読むと、そんな比較もできる。
あんまり先入観なしに最新の研究をレヴューしているのが前者。
腸に良い生活をあれこれ考えて、読者に提示しているのが後者。
そういう区分けをしてみると、僕は前者のほうが好きです。

とはいえ、これだけは言っておきたい。『あなたの身体は9割が細菌』タイトル。
これはまったく粋じゃない。かっこ悪い。
日本語として気持ち悪いし、説明口調な割に、知らない人にはまったく意味がわからない。この本が売れなかったとしたら、理由の数%はタイトルが背負っているような気がする。売れてたらごめんね。
洋題は"10% Human"。考えさせられる。そうか、僕は僕の10%でしかないんだ。


そんなわけで、タイトルは問題だが、中身の訳はamazonレビューで指摘されているほど悪くはない。読みづらいとは感じない。内容はふつーに興味深いと思う。面白い。

たとえばノックアウトマウス(腸内も含め細菌がいないマウスのことだそう)を使った実験を通じて、僕らは僕ら「だけ」では生きていないことや、誰かさんと一緒に生きたほうが都合良いことを知る。
「全体の10%に過ぎない僕」をあえて「僕」と呼ばせてもらえるならば、彼らは僕にとって極めて都合の良い存在となる。"10% Human"とは、そんな意味だった。

マイクロバイオータだとか、マイクロバイオームという言葉がどこまで一般的なのかよくわからない。腸内フローラという言葉は最近よく聞く。
腸内フローラは腸内に住む無数の細菌の総称、マイクロバイオータみたいです。で、そいつらがもつ遺伝子情報を含めたものがマイクロバイオーム。なのだと思う。

なぜこんな使い分けをしているのかというと、マイクロバイオームさんたちは人類補完計画を担っているから。ヒト単体では消化できないものを消化して、ヒトが食べられる形にしてくれる。
同居人たちは近年危機にさらされている。抗生物質の使用だ。我々はチームであった。もちろん様々な病気の対策の結果、ということにあるのだろうけれども、抗生剤はチームメンバーに牙を向ける、一過性にしろ永続的にしろ、チームが大きく傷ついたり、解体される。


『9割が細菌』には、抗生物質の使用と肥満の関係が指摘されている。僕らのカロリーを消費してくれて、有用な物質を単純なカロリーのインプット/アウトレットの関係ではない、かもしれない。
たとえば、食肉用を含む家畜には低用量の抗生剤が餌に含まれているという話。抗生剤を摂取した家畜は早く太る。早く出荷できるから、業者的にもいい話だ。
そして、それを食している僕らは近年、肥満に悩んでいるのだ。たまたま。
私の肥満の原因は、私の栄養過多と運動不足だけなのか。
たとえば、この本はそんな疑問を呈する。


抗生剤の多用に伴う弊害というと、院内感染だとか耐性菌だとかの文脈で語られることが多い。もちろんそれも大きな問題ではあるし、抗生剤が必要な病気はあるから抗生剤の乱用はよくない、くらいのことしか言えない。
個人的にすごく風邪を引きやすい質なので、やっぱり医者に行くと抗生剤をもらうことは多い。必ず飲み切るようにとか言われると、飲んでしまう。いい子なんで。
抗生剤はウィルスには効かないことは、もちろん知っている。
僕がしていることは、乱用なのかどうか。判断がつかない。

同時に、そのまったく悪気のない行為は僕の中に住まう同胞を大きく減らしたかと思うと、いささかぞっとする。「10%の僕」が「90%の僕」を虐殺していたのかもしれない。
身体が一人一票制の議会であれば、10%の僕は訴追されているかもしれない。

知らずに同胞に不義理してたし、だからといってできることは少ない。謝る相手は既に死に絶え、僕の身体からは排出されてしまったはずだ。
そこで、ひとまずは僕の中で同胞を育成するためのイヌリン(開き直り)。
しばらくはこれで頑張りたい。
もっと言えば、ものを申さぬ彼らの要望を聞きたい。できれば喜ぶ様がみたい。
彼らが喜べばそれはつまり、10%的な僕もなんか気分がいいはずなんで。

こんなことを考えていると、自分自身にあきれてしまう。
僕は僕の中身すらも全然分かっていない。知識はもちろん、体感としても。
40年もこの身体と付き合っているのに。


個人的にはひとまず我執を果たしたので満足なのですが、今後のこともあるので、継続的かつ引き続き慎重に推移を見守りたいものです。イヌリンの3袋目を買わなくてはいけない。