2013年4月1日月曜日

メラルーカを間伐してみる②(設計、もしくは迷走)

14/10/2013 追記:
間伐試驗はいろいろ長くなったのでアーカイブできるようにしました。

①課題の整理 
②設計 ←イマココ
③実施
④結果
⑤損益計算
⑥今後の展望とか




森林の伐採(主伐)のことをベトナム語で[Khai Thác]という。これは漢字起源のベトナム語(漢越語)で、漢字にすると「開拓」になる。なんだか屯田兵でも出てきそうである。
カ(ァ)イ・タク↗と、かわいく語尾を上げて発音して頂きたい。



間伐っておいしいの?っていう人たちに囲まれているので設計書を作ります。
実際のところ、そういう施業があることは彼らは知っているし意味もなんとなく分かっている。
形とか考え方を残しておくのが大事。聞き届けられるかどうかは別として。


○間伐率を決めよう
間伐を行うとその分スペースができる。スペースとは幹の部分であり、樹冠の部分でもある。残った木は樹冠にあいたスペースを徐々に埋める。そしてまた林は閉じる(林冠閉鎖)。
クラックが徐々に閉じるのは、残った木がそれだけ成長していることを意味する。
そんなことを考えてると、間伐とは「閉じた林」にクラックを入れてやる作業のように思えてくる。クラックを大きくすると災害で吹っ飛んだり収穫量が減る可能性がある。クラックが小さいとあんまり成長しなくて効果が薄い。「間伐作業が熟練を要する」といわれる所以だ。

じゃあ「メラルーカ林の6年で埋まるクラック」とはどれくらいか。
知るかそんなの、という話である。


○逆算してみよう
当方としては「とりあえず生で」的、日本でよく使う30%の伐採率を当てはめてもいいけれど、何か根拠が欲しい。少し悩んで、思いつく。
逆に考えて、収穫期における成立本数がその林のサイズに合致した本数なんじゃないか。つまり、メラルーカは暗くなると勝手に枯れる。収穫する時点での(8〜10年生)の成立本数は、「その林齢の林がギリギリ維持できる本数」なんじゃね?
思いついたときはオレマジ天才だわ、と思ったけど、振り返るとまぁ当然だわな。
もし4年生時の今で、結論を先取りするように収穫期の成立本数を再現してしまえば、論理的には暗くて枯れる木はない(もう伐ってあるから)はずだ。密度効果が緩和されているから、残存木は当然太る。収穫期の成立本数を参照しているから、極端に伐り過ぎたり、伐り足りなかったりということはないはずだ。はずだ。

ということで、再び「開拓」森林調査の結果を紐解く。
先の調査ではこの林の成立本数は11,800本/haで当初比59%。一方、開拓調査を掘り起こした結果、伐期時(8〜12年)の成立本数は6,500〜9,000本/haということが判った。
ばらつきはあるんだけれど、まあこんなもんかと。このあたりのゾーンで間伐の伐採本数のベースラインを決めることにした。
例えば6,500本/haをベースラインにすると伐採本数は5,300本/haで本数伐採率は45%くらいになる。けれどメラルーカはひょろひょろなので突風とかで折れるのが心配。あと収穫した材の径が小さくても売れるには売れる。安いけど。最初から6,500本/ha決めきってしまうと、売れる材も捨てることになる。
目標成立本数を上限のほうに狙いを定めることにする。ビビリとしては。


○留意事項を踏まえましょう
間伐する林は10m×1,000mくらいの長い畝(Líp:リップという)で、周囲は堀に囲まれている。


周囲が水に囲まれているということは、堀に面した部分は十分に陽光が入るためそれほど熱心に伐採する必要はない。内部の方を中心に伐採しなくてはいけない。



もらったリップは1kmちょいあったので、半分を間伐試験林。残りを対照区(未実施)とした。したんだけども、間伐面積はずっと小さくなったんだけどな。それはまた後述。

林内はこんな感じ。細い柱が無数に立っている。そして緑の天井。林内は暗い。


○お絵かきの時間、もしくはモデルの作成
どんな軍隊にも旗は必要だ。ということで、伐採モデルを作成する。
大将(副社長)に作戦を理解してもらうため、「間伐に関する視覚的な明示」がお絵かきの理由。実施になるとまったく想定通りにいかないのは分かっている。
でも旗は必要だ。大将の裁可を得るためにはな。


これが植栽当初のモデル。20,000本/haを植えるために 70cm×70cmの間隔で正方植えしている。植栽地の幅は10mなのでこれを押し込むと一列14本になる。
うん、くっそ多い。黙々と丸を打っているときは、一体オレは何やってんだろうと思った。
本当は前回の調査で位置関係まで明らかにしておけばもう少しカッコがついたんだけれど、マンパワー不足でそこまで調べられなかった。

とにかく、こういう風にした。

一列あたりの平均残存木は6本。配置を考えて千鳥状に配置。内部をがっさり伐るぞ、ということを理解してもらうために2列の列状伐採も追加。場当たり的に伐採すると、伐採率の管理が難しく計画通りの本数が伐れなかったりする。機械的に「その場所にあったら伐採」する計画のほうが作業しやすいだろうと。定性間伐じゃなくて定量間伐。そんなことを考えながらモデリング。
このモデルだと間伐後の成立本数は8,500本/ha。間伐率は32%。伐採前の森林の本数上限付近。外角低め。コントロールはアバウトだけれど、ロケーションは合っている。
…結局「とりあえず30%」で良かったじゃん、というのは内緒だ。


○提案→反応→了承
出来上がった設計・計画書をカウンターパートと社長、副社長に配って回る。計画書を見て、副社長はほほうと考えこむ。どうも反応が。。
間伐試験地の造成に関しては当初から同意が得られていた。「より早く、大きく成長させる方法の検討」がそもそも会社側からのリクエストだったから。「伐採するのがもったいない」という風景は日本でもまま見られる。せっかく植えたのに、と。しかし、実際のところ収穫期には植栽時の3〜4割の木しか残っていない。早いうちに林冠を開けて残すべき木を太らせたほうがいい、という提案。

ただ「位置関係上、対象となる木はすべて伐採する」のには最後まで難色。細い木を伐れ、と。細い木は林冠が小さくて、「クラック」としては弱い。ただ、ここの保育は10年しかなくて、残り6年だったらたぶん、太い木は残る。太い木は売れる。
なのでこれについては同意。その代わり位置関係上(日照との関係上)、どうしても伐らないといけない木は伐ることには了承を得た。

なおこの変更のため、機械的に選木伐採することはできず、せっかくのお絵かきはあっさり画餅と化した模様。そして、この時点で伐採率で悩んだ話とかもぶっ飛んでいることがお分かりいただけるだろうか。
やっぱ選木するのか。。


まあ、会社の同意が得られたのでよしとする。
やっぱり旗を立てる必要はあった。折られ、打ち捨てられたにしても、だ。
そう自分を慰める。お絵かきしていた時間は、決してムダではなかった、うん、そうだそうだ。


③につづく。