2013年3月29日金曜日

メラルーカを間伐してみる①(課題の整理)

14/10/2013 追記:
間伐試驗はいろいろ長くなったのでアーカイブできるようにしました。

①課題の整理 ←イマココ
②設計
③実施
④結果
⑤損益計算
⑥今後の展望とか



前回、事前調査をやったワタシの林。




で、調査結果はこんな感じ。



なんとなくわかるでしょ。
間伐の概念がない場所で間伐をするには説明をしなくてはいけない。そもそも、間伐ってなんでするんだっけ。日本だと普通にするけれど、改めてその意味とかを考えることってあまりない。


○そもそも間伐の意味ってなんだっけ
生えている木の本数が多くても少なくても単位面積当りの光合成量は変わらない(精確に言えば間伐後は落ちて、樹冠の回復に従い回復する)。本数が多いということはたくさんの木で一定量の陽光をシェアしていることになる。本数が少ないと一本当りのシェアが増える。光合成量は樹木の成長に直結するので、太い木を収穫したいなら少ない本数でシェアさせるほうが有効。じゃあ、減らしましょう、と。
これが木材生産における間伐の意義だと思うのね。


○メラルーカ林業の課題
日本ではカラマツは暗くなると勝手に枯れる樹種と聞いたことがある。大学時代の話。カラマツの国にいたので。「カラマツに間伐いらねんじゃね?あいつら勝手に死ぬし」的研究があったように思う。僕は林経だったんで、詳細はいまひとつ自信がないんだけども。
逆にヒノキはどこまでも我慢する。真っ暗な中ひたすら耐える。耐え切れず大雨とかで仲良く山腹崩壊を起こしてみたりもする。

メラルーカは「カラマツ的」か「ヒノキ的」かと考えれば、圧倒的に前者。勝手に枯れる。最初20,000本/haで植栽される。これは伝統的な植栽本数でかつては40,000本/ha、50,000本/haなんていう時代もあったらしい。
植栽密度が高いと、植栽木たちは苛烈な伸びっこ競争を繰り広げる。おかげで伸長成長(垂直方向の成長)は促進されている。短伐期施業と相性が良くて、高植栽密度の理由もたぶんここにある。一方で、肥大成長(水平方向の成長)はお互いを削り合う関係性になる。

もちろん、カラマツよろしくナチュラルに本数減が進むならほっとけばいい。保育をしないメラルーカ林業は本来そうしたもの。ただし、森林経営の面ではいくつか問題もある。

上のグラフは調査林の胸高直径の度数分布表。右にいくほど太い木ということ。
必ずそうなる、というわけじゃないけれど左右対称の正規分布に似る場合が多い。
すぐに気がつくこととして2、3cmの階級が多い。そして5cm→6cmと6cm→7cmのふたつの階段が気になる。つまりはピークを境に度数が急減している。
僕だったら混みすぎ、と判断する。数が多すぎて遷移が進まないのか。

○伐採時データとの比較
公社は伐採前に森林調査(プロット調査)を実施する。調査結果から売却価格を積算するのだ。いわゆる「立木売り」なんだけれども、購入者に引き渡した後の確認とかはない。あくまで事前調査で積算して売ってしまう。
さぞかし精緻な調査が実施されているんだろうなと思われるかもしれないけれど、そんなこともない。何しろ年間1,000haくらいを売却するのでさっさとやってしまう。とにかくそんな理由で、公社には伐採前の調査データが残っている。


青が今回の森林(4年生)で、赤が伐採前の森林(8〜12年生)。木の成長につれて、当然シェイプは右に遷移している。
どちらのシェイプも山の左側(細い階級)が大きくて、山の右側(太い階級)が小さい。伐期に至っても本数が多すぎる傾向を引きずっているように見える。
確かに20,000本/haという密度は、初期成長と雑草発生の抑制には効いていると思う。けれども売値を最終的に左右するのは太さ(胸高直径)である。


○価格との関連性

上記はメラルーカ材の山元価格。Cừとは杭材のこと。太い木は当然良いお値段。
杭材の価格が低下しているのは「たまごのことを考えながらインフレ率で遊ぶ」で触れた。あの計算が正しいのかどうか未だにわからんけど。そんな問題はあるとして「少しでも太い木を育てる」ことはこの地域においては間違ったアプローチではない。と思う。今のところは。
ちなみにCừ5→ Nóng5への価格上昇が小さすぎて、ホントか?と疑っている。基本的に杭材より大きなものは建築用材や家具材にも使用されて、単価もより上がるはずだ。それはまあ、いろいろあるかもしれないので触らない。

たとえばさっきのグラフの収穫前の森林(赤グラフ)と比較すると、9%くらいが Cừ3グレードで、15%くらいが Cừ4グレードなのだ、と読める。たとえば、この24%がCừ5であったとしたら、それだけ単位面積当たりの売却額は上昇する。収穫される材の平均径を上げてやることが、伐採材の売値向上に直結する。
森林経営隊員たるアタクシの御役目は、きっとこの辺にもあると任じておる次第。

よって、今回の間伐の目的は「収肥大成長の促進」なのだ。なのだ。



②につづく