林野庁 編 (著)
全国林業改良普及協会
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大学3年生からしばらく毎年買ってたんですよ。白書。うちの研究室は白書ゼミがあって。
白書は批判的に読むのだ、と先生は仰ってました。ケチをつけろと。難癖つけろと。
行政の書く文書はとても滑らかだけれど、よく考えるとおかしなところがある、ということをせんせは云ってたんじゃないかな。忘れたけど。
ちなみにホンモノの行政文書は超読みにくいです。新採用時に心が折れた記憶があります。どんだけ不思議言語ちゃん。ほんとに日本語なのか。
そんなことで、少なくとも離日中のここ3年は白書、読んでなかったので、最近のトピックはなんだろな、と。
以下、備忘録的新着知識。ばらばらと。
・LVLとかフォレスターとかいいかげんいしろ。三年前はひとこともそんなことはいわれてなかったぞ。
・いわゆる拡大造林が行われたのは、戦後の需要増による緊急増伐により植林未済地が増大したためなのだ。
→なんとなく戦中の荒廃のためと誤解してました。
・人工林の伐採跡地の天然更新は難しい。常緑広葉樹が優占する林地では7年経過後から個体数が激減、低木・先駆樹種が優占する林地でも主要な高木性樹種が決まらない状態。
→面白いよね。放っておけば遷移が進むものと思い込んでいたけれど。もっと時間軸を長くとればもちろんそれなりになるんだ。たぶん。人間の間尺には合わないということだと思う。だから、自然にしとけばそれが一番、なんて言えない。
そんな林地が山腹崩壊を起こしたとして、一番困るのは僕らだよなぁ。
・平成23〜25年度で森林中の放射性セシウムの部位別割合を調査したところ、23年は70〜75%は落葉層と枝葉に蓄積され、土壌に含まれるものは25〜30%だった。25年は土壌は65〜77%とほぼ逆転している。
→25年度での枝葉に含まれるセシウム量はスギで8%、コナラで3%なので、森林の新陳代謝とともに順調に土壌に移行されていることがわかる。
あとは、たぶんセシウムさんの供給量そのものも減少していることも示唆される。
・世界の森林面積は相変わらず減少中。でも先の10年と比較すると、そのテンポはちょっとゆっくりになった。主な理由は中国さんが気合を入れて植林しているため。オセアニア地域が唯一、森林面積減少の進度が早まった。
→なるほど。
・京都議定書関係
第一約束期間の日本の削減実績は8.2%で森林吸収源分は満額3.8%を獲得。削減目標は90年比6%だったので、正味は4.4%でしたー。
→一昨年あたりから、造林補助金の要件に「利用間伐セヨ」という文言が加えられたと聞いています。つまり切捨間伐はダメになったんですね。非難轟々で、修正が加えられたそうですが、これって第一約束期間の終了(2012年)と関連があるような気がします。
つまり達成したんで、もうあんまり補助する必要がなくなった。みたいなね。どうしても吸収量を稼ぐ必要があったから、金を払ったんじゃないか、と。
※昨年こんなことを書きましたので一応。
2012年の温室効果ガス排出量をちらちらと眺める。
「森林・林業からみた震災のその後」に一章割いていることに感銘を受けました。いくつかの取り組み、トライアンドエラー。充分に一般的な読み物としても耐えうる内容だと思います。
森林の除染ってこうやってるんです、こうすればある程度線量が下がるのがわかりました。とか、木材やきのこの線量の測定ってこうやっています、とか、いまのところこんなかんじです、とか。
事実の羅列にとどまっているところが、逆に白書然として好ましいです。どことなく事実の羅列は軽視されているような昨今ですから。僕らは結論が欲しい。とっても欲しい。
結論を求めすぎるからこそ、その過程が怪しくなる。難しい問題はわからないし、解説してくれるセカンドマンが必要だと思う。でも、セカンドマンはいつも公正中立な人だとは限らない。
日本の誇る高級科学雑誌・NewtonですらSTAP細胞を全力特集してしまったわけじゃないですか。後から振り返ればいくらでも
プギャプギャ━━━m9(^Д^≡^Д^)9m━━━━!!!!!!
とか言える。でも最初は多くの人がわからなかったわけです。意味も含めて。ちなみにオレは今だに分かってないけども。
解説は解説で必要。でもクモの巣張ってる頭の体操も大事だぜ。中学校までの知識だっておかしいと思えることは、世の中たくさんあるよねぇ。
先生は白書を疑えと云うが、一応「白書」は閣議決定を経たもの。そこにウソが含まれているとしても、割と高級な方のウソだ。3つ以上の反例を上げて論破することに血道を上げてもいいし、そんな時間ねーよ、という方はまあまあ、ある程度信じてもいいデータがたくさんある。
疑うべきものはたくさんあるとして、土台を提供してくれるもの。無味乾燥な事実の羅列こそ大切、と思ったりしてます。そんなことを云って。データが大好きなワタシ。算数はキライです。
こんなものに2,000円も払えるか、というあなた。はいどうぞ。
林野庁/平成25年度 版森林・林業白書
全部落とせます。お宅様でホコリかぶっているプリンタがついに腕撫し、唸りを上げる出番です。いい時代になりました。
関連して。
平成25年度 森林・林業白書の隔靴掻痒感 16.6.2014 田中淳夫
人の感想って面白いですね。読み方を教えてもらう感じ。
今回の白書は総論的なものになってるんですね。ラッキー。勉強し直します。確かに歴史的な記述は多いかも。どこがテストに出るんだろう。
田中さんに特に同意するのは、民主党政権下で樹立されたせいで中身は変わらないのに「森林・林業再生プラン」の文言がないこと、複層林施業に関してすんごく盛りこんであるのに、実際の手管についてあんまり記されてないこと、林野庁が「俺らが決める」スタンスでいること、の3点。
「俺らが決める」スタンスについて少しだけ。僕の先生は当時、自給率目標を立てるのをやめた白書に怒っていましたね。国が範を示さなくてどうする。できないからやめるってなんだよと。
だからってなんで僕らゼミ生が怒られたのか、今だに釈然としません。とばっちりです。
なので現行プランでは自給率50%を目指す、という姿勢にある種の復古的な印象を持つのです。ルネッサンス。
しかしそもそも、昭和30年代に始まった木材の自由化は、林野庁だけで決められたものではありません。他の商品にくらべ木材の騰貴率がべらぼうだったことは、やたら歴史を語り始めた今年度白書にも詳しく記されています。
国民の要請というのがひとつ、通産省による大規模港湾整備がひとつ。僕らの林野庁はといえば、柴舟よろしく波間を漂っていた、というのが今も変わらぬ実態ではないか。そんなことを考えます。
だから「オレが決める」スタンス自体、実はこっけいな話です。いつハンドリングできていたのだ、何を云っているんだオマエは正気かと。
時は移って、農業がTTPで大変だ、となった現在、少なくとも林業は行かず後家みたいな状況ではないわけです。関税なしで50年やっているから。ヘタレだけれど。どちらがいい、というのはないし、機会費用計算をすると林業は絶対損をしている。できれば箱入り娘でいたかった。
それはそれとして、今後どうすべきかということを考える人たちは相変わらず必要でしょう。彼らはマスター・オブ・フォレストだとは全然思わない。だけど僕とは視座が違うだろう、とは思う。彼らくらいは磁北を指し示していたっていい。僕らが南南西に針路を取ったとしても、だ。
彼ら以上に将来のことをあれこれ考えてるのは気象庁くらいのもんでしょうよ。そりゃ柴舟じゃなくて不沈艦に乗るに越したことはないな。もちろん。
文句もたくさんあるし、複層林はやっぱうまくいかねぇと思うな。
フォレスター批判は今度したいと思いますが、来年あたり受けてみようかな♪