2014年11月3日月曜日

それからどした?〜チキチキアカシア林再調査〜


バナナの向こうに見える、俺の林。
8月末に訪れたわけですが、早くも二ヶ月経った。月日の経つのは早いものですね。

ということで、ようやく重たい腰を上げ、まとめ始めました。例によって副社長に軽口を叩き、報告書だすかんね、覚悟しとけよ、と云ってしまったので、再びベトナム語で作文をせねばなりません。
年内にやる。宣言しないとやらないし。




ことの経緯を簡単に振り返ります。僕はベトナムで植栽試験地を作ったんですね。アカシアとメラルーカの2種について。彼らのやり方をみていて、植栽密度減らしたほうが効率的なんじゃね、と、こんなことをしたわけです。

①課題の整理 
②設計
③実施
④結果
⑤損益計算
⑥今後の展望とか  

⑦それからどした? ←イマココ

まったく、ずいぶん長くなりました。



植えたのが2012年の秋〜冬。彼の地では乾期です。乾期に植林しちゃダメだ、というのは一般論。いろいろあって、こうなった。
植栽当時の写真。本数管理がキモなので、メジャーで測って植えてもらいました。

そして植栽からほぼ2年が経過している状況にあります。早いなぁまったく。歳も取るわけだ。で、去る8月、シミズ再来カマの上、追跡調査に至ったわけです。


まずはじめに軽く愚痴を。今回の調査について「も」カウンターパートをはじめとしたウミンハ森林公社の協力はほとんど得られなかった。森林調査って調査する人と野帳に書いてく人の2人がいるとほんとに早い。もっとたくさん調査ができたのにな。

さらにメラルーカの試験地は破壊されてました。なんか建てるんだってさ。このやろう。

生き残りのメラルーカさん。横の大きいのがアカシアさん。

トドメに舟も出してくれなかったので、致し方なく堀を泳ぐハメに(1年ぶり9回目)。マジ溺れるかと思ったぜ。カメラはバイクに置かざるをえず、林内の写真が取れなかった。超残念です。
そしてヒル。バイクに戻ってTシャツを脱いだ時の阿鼻叫喚シミズたるや、動画にとってみなさまにお見せしたかった。

腹も立つけど、彼らはあんまり手伝ってくれないんだろうな、なんだかきっとそうだろうな、と思って来たのでショックはなかった。お願いしてもお願いしても、という2年間だったからなぁ、と妙に懐かしい気持ちになりつつ、鷹揚に頷いて茶を啜る。
おもてなしの国からきました。
ずぶぬれ+血まみれ(ヒルによる)で会社に帰ったら熱いショウガ茶を入れてくれて、それはほんとにおいしかったです。段取りできないけど、そこはかとなくみんなやさしいのよね。恩を仇で返すように、ロンおぢに身体についてたヒル投げましたけど。
つらつら思い返してみるに、帰国後微熱が止まらなかったのは、生傷からのバイキンやら堀の水やらで変なものもらったのかもしれないですね。
どーもありがとー。カマウの大地よ。

そんなことで、泳いで濡れたのかスコールに打たれ濡れたのか、判然としない状況での、なんだか一人で林内調査。まともじゃない精神状態であったのは間違いないので、たくさんの不足やエラーの可能性が否定出来ないドタバタ調査でありました。
うん、なんだか疲れたな。


言い訳をかましたところで結果発表。
なにが大変ってね、野帳の数字が発狂したようなミミズ文字である上に、僕はうっかり水性ボールペンを持って行ってしまったんですね。雨に打たれたり泳いだらインクなんて流れるよね。解読困難。
まだ作り途中なもんで。てきとーなのは許してね。






報告書を意識してベトナム語で作成。2012年12月5日の調査日のものは植栽直後、2013年4月12日のやつは約4ヶ月ちょい、というところでしょうか。
どうも僕は3時間ほどの調査で400本ほどのアカシアを調査したようです。面積にすると、3密度の試験地で1,500m2。
そしていきなり初期の植栽本数より多い残存本数になっております。102%ってなんだよ。

言い訳します。ひとつにはアカシアはよく株立ち(一本の苗木から複数の幹が出ている)してるのね。株立ちはなるべく主木のみをカウントしたつもりだけれど、それでも混入した可能性がある。もうひとつには、種が飛んで自然に生育しているものもあるだろうこと。周囲まるっとアカシア林なので、この可能性も高い。実際しばしばみかける。


もう少しだけよく見てみる。
ひとまずは約2年で10mまで生育したアカシアたちに賞賛の拍手を贈りたい。キミタチはすばらしい。若く、光り輝いている。日本の不良中年のようなスギヒノキに爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。早熟でも大成してほしい。

そして試験区ごとの差、ちょっとずつだけど出てきてました。
下記は密度ごとの平均胸高直径を示したグラフ。縦軸は直径(cm)。

右側が今回調査。ぐぐーんと大きくなっています。
植栽密度を下げたほうが生育は良好。1,666本/haの試験区(緑)は、対照区の3,333本/ha(カマウ省における標準植栽本数)よりも平均して2cm程度、直径が大きい結果となってます。
よしよし。狙い通りじゃ。


ただし話はこれで終わらない。いくら直径の大きな材が収穫できたからって、全体の材積が減ったら収穫量が減ってしまう。そんなところでこんなグラフ。


折れ線グラフに一本あたり材積、棒グラフにhaあたり材積を取った。1,666本/haの林は確かに一本一本は大きい。しかし、ha換算すると3,333本/haの林と比較して50m3ほど材積が少ない。
理由はもちろん成立本数の違い。約半分の苗木しか植えていないから、いくら一つ一つが大きくても、束にすると少ない。そんな話。


じゃあ、今までどおりの3,333本/haでいいじゃない、という話になるかといえば、そうでもない。それは森林の密度効果が働くからだ。
3,333本/haの林。既に葉っぱ同士が重なり合っていて、林内は暗い。ああああ、写真がねぇけどな。これを「樹冠閉鎖」といってアカシア同士の陣取り取り合戦が始まっているのだ。
一般に樹冠閉鎖してしまうと、木は充分な葉っぱをつけるスペースを失うから、光合成量が落ちる→幹の太りが悪くなる。その代わり、となりのヤツよりも光を受けるために伸びようとするので樹高はよく伸びる。これを密度効果、という。

ふたたび上のグラフ。3,333本/haの林の木の太りが悪い、っていうのは既にこの林は樹冠閉鎖による密度効果のせいで生育に悪影響が生じていることを示している。
1,666本/haの林は余裕綽々かといえば、そんなこともない。成長に従い、いずれ同じように樹冠閉鎖する。ただし、この場所の林業は間伐とかしないし8年程度で収穫する。だから、なるべく林間閉鎖が遅れた方が、太い木が収穫できるだろう、という狙い。

たとえば来年あたりに再度調査したら、直径の差がもっと開いているのではないか。そして、haあたりの材積の差はなくなり、8年生までに追い越すかもね。だったら、半分の密度で植林したほうが、コスト安いでしょうよ。
そんなことを考えたりしてます。

また調査するか、来年も。
また泳ぐのか、来年も。



それにしてもこの荒野がわずか2年で。


こんな風になるなんてね。


風景が変わりすぎていることに、ただひたすら驚くのよ。