2020年4月12日日曜日

2019年はこんな音楽を聴いていたよ

なんだか新年度を越えてしまっているのであった。
とはいうものの、昨年はあんまり音楽を聴かなかった。

とはいえ、やはりいくらかは聴いている。



○いまいちであった:
Korn"The Nothing"、 Slip Knot"We Are Not Your Kind"、 Periphery "Ⅳ Hail Satan"、Dream Theater "Distance over time"

○よかった:
Chon"Chon"、 Jaimie Cullum"Taller"、Backyard Babys"Silver and Gold"、 椎名林檎"三毒史"、Jame Blake "Assume Form"、"The WildHearts "Renaissance Man"

世間的な評価と違うのは、趣向の違いというか、耳が悪いせいであろう。
大御所たちがあれ?と思うようなレコードをリリースしたのが意外に思えたが、「耳年増」という単語を思い出して謙虚に生きようと思っているところ。

Dream Theaterは、僕が好きなのはDTではなくてマイク・ポートノイだった、ということ確信できた貴重な機会だった。
いろいろ思うところはあるのだが、稿を改める。

なんだか、上手にサヨナラが言えそうな気がする。

さて。

○ TOOL "Fear Inoculum"
あ、AppleMusicまたはじめましたw。3回目w。またすぐやめるかもw。

今年はToolとKornがレコードを出した。
僕が高校生だった頃も一緒に出していた。1996年。"Life is Peachy"と"Eanima"。どちらも彼らの2枚めのレコードだった。すごい流行ってたんだ。
Kornは2年に1回レコード出してくれるけど、Toolは10年以上待たないといけない。
次のToolのレコードは、きっと僕が50歳を超えてから聴くのだろう。

「アルバム」という概念が意味をなさなくなってきたような昨今。
そんなご時世にケンカを売るような10分を超える長尺の曲が6曲も並び立てている。
もうこの時点で痛快。

今作はある意味で「ずいぶんとおとなしいレコード」だと思った。徹頭徹尾メタル的なのは終幕を飾る"7mpest"くらい。
それ以外の曲は、もちろんハイライトはヘヴィーだけれども、どちらかというとプログレと形容したいような、したくないような。

 

今作の特徴は「空気感」。
立体的なサウンドプロダクション。与えられた空間。
"Latelalus"はかっこいい曲が多くて好きだけれども、平坦な印象。
あと、高音域が強調されすぎていて、ボリュームを上げるとチリチリする。
必要な質感をもって、ずっと聴くことができない。
…本当の意味で耳が悪いのかもしれないんだけれども。
全体的に手数も少なく、かつてほど「詰め込んでいない」レコードだろう。

それでも10分超の曲を飽きさせずに6曲聴かせてしまう。


METALLICAの"Load"というレコードがある。退屈なレコードとしてずいぶん当時は叩かれた。曰く、指遊び、冗長、等々。
半分は同意しよう。
 

Toolを聴いていると、同じ感覚を受ける。
退屈に思えるパートがある。ぼんやりと、ああなんだか退屈だなと思う。
日が陰り、さーっと冷たい風が吹いて、辺りの雰囲気が変わっていることに気がつく。
生ぬるく弛緩していたはずの空気が一変している。
そして、暴風が吹き荒れる。
過ぎ去ったあと、楽曲が終わっていることに気がつく。

長尺の曲を有無を言わせず聴かせてしまうのは彼らの伝統芸能であった。
以前はもっと短尺の曲もあったけれども。
しかし、86分聴かせ倒してしまうレコードはなかなかない。
"Eanima"や"Latelalus"も凌ぐ高みがあるならば、そこだろう。

その代わり、突出したハイライトがないというのも、言えそう。
前作の"The Pot"みたいなのはない。
 
僕がアメリカのラジオで一日3回かかって、ああこのくにのひとってTool好きなのね、と思った。6分半もあるのに。
でもこの曲は、メイナードの類まれなシンガーとしての真価が発揮され、プレイヤー各人の技量が惜しむことなく封入された6分半。これ以上は切れない6分半。

曲間に挟まるSEみたいな曲は聴かなくていい。
みなさま、このところ時間がおありだと思うので、ここは騙されたと思って、彼らに嵌められて86分を過ごしていただきたい。
あっという間だと思うから。



○ Shawn James "The Dark and the Light"
カントリーを挙げるなんて、感性の枯れを感じざるを得ないじゃないか!
・・・いいと思ったんだからは仕方ないじゃないか!



プロの歌い手は節回しも堂に入っていることは、昨今とみに声量が落ちている北島三郎を見ずとも明らかだ。排気量がでかいエンジンを積んでいればいいというものではないらしい。
島津亜矢はカバーをやりすぎだと思う。ここは本業で頑張っていただきたい。
けん玉とか、僕には理解不能だ。やはり本業で頑張っていただきたい。

目をみはる歌唱力。独特な節回し。コブシと云っていい。
聴いていると、ジェームスさん、すごくたくさんの音を使う。
コブシやヴィブラートが一定範囲内の音の反復であるとすれば、彼は違う音を混ぜ込みながら、メロディラインを作ってしまう。
そして、スムーズなのだ。僕には馴染みのないステップだ。

圧倒的な声の厚みと、温かさ。聴き手の心をわしづかみにしてしまう。
レコードの冒頭の曲、その冒頭で僕はわしづかみにされてしまった。

彼を知ったのは、A.A.Bondyの"American Hearts"のカバー。


オオカミのハートもガッチリ掴んだように見える。
近所迷惑に基づく抗議の遠吠えだったのかもしれない。

過去、バンドもソロも妙にヘヴィだったりフックがなかったり暗かったりで、どうもポテンシャルに合う楽曲を歌っていないように思われて、あんまりピンとこなかった。
自由度の高い、シンプルなカントリーこそ、彼が一番光を受けることができる場所なのではないか。



○ Bon Lver "i,i"
ほんと彼らは、レコード出すたびにいいレコードで毎回嬉しい。
今回もまた、素敵なレコードを。
 
瑞々しい。
これからなにかが動き出す予感。

以前、ジャスティン・バーノンの仕事をプリズムに例えたことがあった。ような気がする。今回もまた、徹底的に分解され尽くし、再構成された人を見るような気になる。
たくさんの高さの声。詰め込まれた機械音。温かな生楽器。

その再構成された彼(女)は、人なのか。僕は判じかねる。
今NHKで"デジタル・ツイン"という言葉が聞こえた。
彼(女)はきっと、僕になにかを差し出すのだ。手風琴みたいな、証しとなる何かを。
機械の腕で、機械の声で。演奏される「ダニー・ボーイ」。
なんて。村上春樹的妄想。

この曲は名曲"Woods"の系譜を、ポジティブに受け継ぐ傑作である。
もちろんそれだけではない。もう少し。
人を応援してもいる。
たとえば、社会から疎外されきった人が、社会に戻る希望を持てるかもしれない。
ボコーダーを通した声に灯る温かさ。みたいな。

PVでしなやかに、力強く踊る彼女。
外出が制限されてしまったりする昨今、伸びやかに踊る彼女はどこか、非現実的ですらある。彼女のダンスが持つ肉体性も、機械との対比を鮮やかにする。
いつか太陽が降り注ぐ下で、誰もが自身の身体を十分に解き放つ日のことを考えるんだ。



来週までに。来月までに。来年までに。僕らは、何を失うか。
音楽があればオールハッピーというわけではない。それでも僕やあなたの傍らにあって、僕らを勇気づけるものであってほしい。そう思います。

来年(度)も、素敵な音楽に出会えますように。
皆様に幸せがたくさん訪れますように。