コードの原理はわかっている。でも、どうしてこう、素敵な感じがするのかわからない。分析的な言葉を書き連ねても、そこには到達しないのではないか。
だから、どうもなんだか、素敵だな、と思うしかない。
ケミストリーですよね。ケミストリー。
オーケストラは所詮、添え物です。ベスト盤として聴いたらいいのでは。
15歳のころ、バームクーヘンのように分厚いハーモニーに魅了されました。
でもあれ、どんなパートがどれだけ入っているのか、聞いてるだけだとさっぱりわからない。声の束にしか聞こえないから。でも、ある種ヤブのようになっていて、どんなパートになっているのか、よくわからない。
どうもやっぱり、気になる人はいるらしい。
デフ・レパードのみんなを貶めるつもりはなくて、たぶん3声だか4声だかのハーモニーパートが設定されている(と思う)。でもそれだけでは、デフ・レパード的に十分な厚みではない。厚みを作り出しているのは、ヴォーカルのジョー・エリオットの多重録音。まったく同じパートをこれでもかと塗り重ねることで、適度なばらつきと厚みを作り出す。ついでに、がなったりささやいたりするパートも音圧を調整しながら重ねることで、あの壁のような「声の束」が出来上がる。作り出したのはバンドの6人目のメンバーとも言われるプロデューサー、マット・ラング。
現在では宅録的に再現されてしまうけど、80年代にアナログでこれをやっていたっていうのが彼らの凄まじさなんでしょう。
マット・ラングはギターのリフも、コードを分解して一音ずつ弾かせて録音し、構成したという話を記事を読んだことがある。完璧主義を通り越して、まったく変態的というか、ギタリストの尊厳を踏みにじるような仕草だと思うんですけど。
ジョーのヴォーカルとして秀でていると思ったことはない。そんな彼らが何千万枚もレコードを売り、40年以上もキャリアと積み重ねてこれたのは、やっぱり彼らのスタイルによるところが大きいのだろう。プロデューサー冥利に尽きるのではないか。
同時に忘れてはならないのは、楽曲。彼らは優れた楽曲を作り出し続けた。大好きなんですよね。何の衒いもなく、王道を射抜くようなロックバラード。売れるための「産業ロック」とも謗られた時代をはるかに通り過ぎて、分厚く瑞々しいハーモニーを聴かせてくれるんだから、僕としてはただ、単純に嬉しいと思うわけです。
一方、ハーモニーといえば、ジョンとポールみたいな。サイモンとガーファンクルみたいな。最高ですよね。違う人間の声によるハーモニー。相性がよければ、それはスペシャルなことでしょう。
ゲイリーとヌーノも素敵な相性だ。
やっぱりケミストリーですよね。