2023年7月26日水曜日

QGISを使って森林GISを構築する 1/n

すっかり農家ですが元々林業です。チェンソーはよく扱えませんが。

山の管理人のことを「山守(やまもり)」といったりしますが、この多摩のあたりでは「山庄屋(やましょうや)」というそうです。

ええ。この際、畑仕事なんぞかなぐり捨てて僕も山庄屋たらん、と宣えばきっと、ビジネスパートナーの畑庄屋に鍬を持って追いかけられてしまいます。

いつかなりたい山庄屋。ということでサイドプロジェクト的に森林GISをしこしこ構築していきたいと思います。


ご案内のとおり森林はけっこう広いので、どこに何があるかを把握するのが大変。前職に入社した20年前は紙の図面をみんなで使いまわしていました。図面に振られた番号を頼りに表を捲る。「どこ」と「何」が別れていた。「どこ」と「何」をくっつけたのがGIS、と言えば少しは分かりやすいだろうか。職場にGISが導入されて、「何」を元に「どこ」を楽しく色塗りしたり、治山施設の維持管理とかに使ってました。

でも、最後の数年はGISに触りたいけど触っている時間がなくてすっかり初心者。勉強しながら自前のGISを構築していきます。


まず用意するものは教科書とソフトウェア、パソコン。まるっと委託して、然るべきメーカーの然るべきソフトウェアをPC込みで導入したいところですが、当方零細法人ですので、ここはお安く。足りないところは根性で。

教科書→改訂版(Ver.3.22対応)業務で使うQGISVer.3 完全使いこなしガイド。※アフィが見えない場合は、トラッキング防止機能を一旦解除のこと。

著者はこの方面では有名な北海道庁の方。これがなくてもたぶん構築はできる。でもあるとわかりやすい。こんな分厚くなくても(高くなくても)いいような気がする。

GISはQGIS→QGISのダウンロード

作業環境はMacbookair 11インチ。本当はGISをいじるときは大きい画面でやりたいよね。最近老眼ぽいし。去年買い換えたばかりなので、動作自体はそれほど重くない。見ずらいだけで。air、15インチが出たんですってね。

なお、素人が自力でやっているので、やり方スマートじゃなかったり間違ってたりすると思います。悪しからず。備忘録ですから、これは。


1ベースマップの取得
とりあえず、使い慣れたところで25000の標準地図を使う。もっと使い勝手のいいやつがありそうな気はしているけれど、何しろ慣れているから。

ここから取得する→地理院地図|地理院地図タイル一覧


URLをコピーして、





 


ブラウザウィンドウのXYZtiles→XYZ接続にURLをぶちこむ。

おー出てきたね。

2必要データの入手

次に必要なのは森林の「どこ」と「何」。森林計画図と森林簿を入手する。

森林簿は行政がもっている森林に関する情報。森林を区分けし、それぞれの森林の場所、所有者、面積、樹種、蓄積などの情報が記載されている。

森林計画図は、行政が勝手に作った森林の区域とやっぱり勝手に振った森林の背番号。もちろん森林にも宅地と同じく地番はある。ただ、一筆がバカでかいケースも多く、森林管理には向かない。このため、尾根沢や植栽年、樹種等で区分けした林班(小班・施業番号)の区域で管理している。

森林簿は個人情報。僕は森林所有者ではないため所有者様の一筆を頂く。一方、森林計画図は個人情報ではないため、僕でも申請できる。将来的なことを考えて多摩全域をもらう。

東京都森林事務所の窓口に直接申請。それしか受け付けてくれない。データをもらうため、申請書とデータを入れてもらう空のDVD、返信用のレターパックも渡す。

森林簿の本人提供|東京都森林事務所



交付された森林簿の凡例。一行のレコードに70個ほどの情報がある。前職では林班ー小班ー施業番号の3階層だったけど、こちらでは林班ー準林班ー小班ー枝番号と4階層あるらしい。

余談だけど、東京都は森林基本図はデータでの提供はしていないそう。前職における基本図は、昭和50年代くらいに調製したものだったと記憶している。地図が古いのと、原本からスキャンしたラスタデータだから重たくてGISとの相性が悪いんじゃないかと想像。

基本図と作り直せ、と要望を受けたこともあったが、まったく意味ないよねと思っていた。地図は陳腐化する。地理院なりゼンリンなりの地図を使えばいいのだ。餅は餅屋。僕らは餅まで作らなくていいでしょう。


3計画図のGISへのぶち込み









地図が緑になっただけのように見えるか。見えるな。

ここは、真ん中の沢がエリアから外れている微妙なところに注目してほしい。ここには建物もあるから(森林法上の)森林ではない。そして、道が緑で塗られている。つまりこの道路敷は地目変更されておらず、たぶん林道である。そんなことがわかる。


4計画図と森林簿の紐づけ

森林簿データもGISにぶちこむ。600近いレコードがある森林簿をしげしげと見ていたら、同一箇所に複数の樹種が植わっているレコードがけっこう見られた。混植なのか複層林なのか。樹種ごとにエリアが別れてるなら、背番号を分けて管理しとけや、と思うものの、現状からスタートする以外ない。

計画図と森林簿は一対一対応させる必要がある(と思う)。一つの箇所に複数のレコードがあると捨象されるレコードが発生してしまう(ような気がする)。だってデータってそういうもんでしょう?普通は。

なので、面倒なんだけど、森林簿を加工して強引に重複レコードを整理した。すると、レコードは400を切る程度に減少。なんというか非常に地道な作業。もうやりたくない。

ここまで下ごしらえをして、ようやくQGISの出番。

森林簿データと計画図データの紐づけ。交付された森林簿は位置情報(地図上のXY座標)を持たない代わりに、「地図Linkkey」という16ケタの番号を各レコードが持っていた。他の都道府県では違う名前かもしれない。同じく交付された計画図の小班の属性データをみると、「RINSHOID」という16ケタのデータがあり、どうもこいつらが対応するみたいなので、紐づけ操作をする。

GIS上では、レイヤープロパティーテーブル結合という作業。そして、小班レイヤをコピーして委託者様専用レイヤを作成、紐づけされた森林以外のデータを削除する。

管理する林の位置が図示された。割とちょろいもんでした(大汗)。

塗りつぶされた箇所をクリックすると、森林情報が見えるので紐づけは無事機能しているようだ。ここはスギ・ヒノキの2つのレコードがあったので、森林簿をいじって一つのレコードにまとめた。また面積・材積は2樹種の合算値を見れるようにしている。
この場所はスギもヒノキも一緒に植えられたらしいから、主伐するときも一緒に伐るだろう。だから蓄積を把握するには、こういう方がいいのかなと。


同じく国土地理院の空中写真とオーバーレイするとこんな感じ。
スギ・ヒノキの違いはあんまり明瞭ではないけれど、すり鉢地形の中心部の木が大きいからここにスギを植えて、すり鉢の外縁にヒノキを植えたのかな、という感じ。堆積地にスギ、水はけのよい傾斜地にヒノキ。教科書どおりの適地適木。山庄屋先輩は腕利きである。
この森林が林道で分断されているのは、林道の開設が植栽より後だったためだろう。
隣接地との境界は上の尾根部の方は明瞭だけど、沢側の方は不明瞭。このGISだけ持って行って境界確認を行うのは難しそう。


ある程度の面積を持っている森林所有者の方は、GISを作ってもいいかもしれない。紙の図面でもいいけれど、劣化していくしどっかいっちゃうかもしれないし。
そのほか、先代が山をもっていたはずなんだけど、場所がわからないというケースでも活用できるかもしれない。ただ、GISの図面をもって現地にいって境界がわかるかというと計画図や森林簿自体は法的根拠にはならない(区画・データの正確さは保証されない)ので、あくまでおおよその「どこ」と、おおよその「何」を把握するための材料という認識で使うのがいいのだろう。
そこから先に進みたいのであれば地籍調査の結果を活用するだとか、森林組合に訊くとか、土地の古老を背負って現場に行くとか、いろいろな方法があると思う。

当面、しばらく遊び倒して勉強します。