2013年9月25日水曜日

Queensrycheさん、ぱっくり割れる

久しぶりにのぞいたら、お家騒動してました。
まったく、なにやってるんでしょう。
どうせならクイーンとライチに別れればいい、と一瞬思ったのですが前者に巨額の賠償請求が課せられるのは火を見るより明らかです。困ったことです。

ああ、昔は「クイーンズライチ」だった気がするんですが、「クイーンズライク」に標記が変わったんですね。僕はずっと王女のライチ≒楊貴妃のことだろ?と思い込んでいました。そもそもライチは桃なのか、というもっともな指摘はことごとく却下だ。まずは無声音の「ク」の練習から始めたいと思います。

"Ryche"は”Reiche"のモジリだ、なんていう話あり、これはドイツ語で"Empire"に相当する単語だそう。「王女の帝国」です。なんだかつよそうです。
むしろスティーブ・ライヒからとったんだぜ実は、と凄んだほうが、現代音楽っぽくてミニマルっぽくてプログレっぽくて無駄にカコイイ気がします。
もちろん真相はさっぱりわかりません。


 

余談だけどジャック・ジョンソンって気持ちいよね。ほんと大好きだわ、俺。


初めて買ったのは"Promised land"。ライナーノーツの字が小さくて細かすぎる上、哲学的過ぎてシミズ少年はなんのことやらさっぱりなのでした。なにやらどうも深淵な世界である。それくらいは判った。
"I am I"は「観察者の存在は対象に影響を与える」がテーマ、らしい。そう書いてあるのでそうなんでしょう。「シュレーディンガーのこねこちゃん」的禅問答。ねこちゃんは死んでいて、かつ生きてる。ちょっと違うか。
哲学的というよりも量子力学的、なのか。

小難しいこと、というものは大抵の場合、云っている本人がよく分かっていない/ムズカシイことが云いたい/本当にムズカシイことを考えている、の三択であることがほとんどです。
僕の場合は前2択のどちらかであり、Queensrycheの場合はたぶん後者なんでしょう。


世間的には"Operation:Mindcrime"とか"Empire"が名盤なんでしょうし、後追いですけれど、実際良く聴きました。でも思い入れはやっぱりPromised landで、"I am I"は未だにゾクゾクします。トライバルなリズムとオリエンタルなメロディ、ジェフ・テイトの熱唱しててもどこか無機質な冷たい声。これ今聴くと変拍子ですね。めんどくさいから数えないけれど。

改めて聴きますと、全体的にメタルとしてのカタルシスを得るには不十分ではあるものの、アグレッシヴな"Damaged"、非凡過ぎる冒頭から凡庸なコーラスに至る”Out of mind"、凡庸なテーマから非凡なコーラスを導き出す"Bridge"、前衛音楽みたいな"Disconected"、強烈なエモーションを放つ"One more time"、そして静謐な”Someone else?"と、実に聴き所は満載。今だに全曲のタイトルを覚えていました。ちょっとだけオレすげぇwと悦に入りましたが、もう少し学業に身を入れるべきだったと思い直しました。おとうさんおかあさんごめんなさい。
わからないから聴く、聴いたけれどやっぱりわからない、ということをひたすら繰り返した高校時代を過ごしていて、本当に死ぬほど聴いたのでこれはもう思い入れなんでしょうね。

全体的なテーマとしては「約束された地の虚しさ」的な話だったと思います。スタインベッグの「怒りの葡萄」の類型です。ライナーノーツはもちろん、原盤すら実家に置きっぱなので細かいところは失念してます。彼ら的に言えば"Empire"のバカ売れ後の虚しさなのかもしれません。
そういえばBon Joviの"Dry county"と比較されたりもしたような憶えがあります。ただ現代において「Oilもmoneyもgoneでまったくdry countyだぜ」と嘆息されても、控えめにいって周囲は当惑すると思うんです。衷心よりお見舞い申し上げるが担がれてんじゃねーよばーか、と後ろ指さされるのがオチです。なんだか嫌な時代になりました。
もっとも佐渡金山を巨大な遺構を擁する佐渡島民としては黙って肩を抱いてやりたくなる衝動に駆られはします。
こちらもドラマチックでいい曲ですが、Queenrycheのほうがインテリな分、もう少し奥行きがある印象を受けます。


特に大好きというわけではないけれどジェフ・テイトはボーカリストとしてやはり傑出した存在だったたことは疑いなく、"Operation:mindcrime"や"Empire"などの名盤が生まれたのは彼に拠るところが大きいことは論を俟たないわけなんですが、Promised landは逆に低音を重視した、どちらかといえばアコースティックな作品で、ジェフの声も中低音が中心。それでも高いけど。ハイトーンを売りにする人としてはやや持ち味を殺している感はあります。
しかしキャパ一杯のレコードではないことが、逆に作品に余裕と奥行きを与えてるように思えます。実際、レコードの音もとてもいいし、それまでと比較してヴォーカルとギター以外の音に耳がいく作りになっています。


僕とQueensrycheの蜜月は次作"Hear in the now frontier"で早くも終わりを告げたわけです。数多のバンドが仇花のようにグランジの罠に嵌まり次々と転落していく様は、ある種の爽快感すら漂っていました。
四六時中考え事をしているような人たちがNirvana的ラフさとべヴィさに走るのは、単なる弛緩でしょ、と思わざるをえないのでした。鍛えられた刀をてきとーに融かして鋳鉄に変えてしまうようなもったいなさ。あんなに知的を売りにしていたバンドがこんな薄っぺらいプロダクションで、野卑な音作りをするのかしらん、と愕然としたものです。あの音はNirvanaだからいい、Queenrycheがそれしてどうする。そのような判官びいきのような思いがあったのは確かです。楽曲そのものよりも音のペラペラ加減にイラっとしていたような気もします。

同じプログレ・メタルでも長尺でテクニカルなDream Theaterとはやはり対照的な存在なように思えるし、”Metropolis pt.Ⅱ"という大金星を挙げてしまうわけです。彼我の違いは一層明白なものになってしまった。

 

実際、ライブを聴くとそんなに悪く無い。
虚を突かれたようなオーディエンスのノリの悪さがすべてを象徴しています。これはね、正直ノレないです。いい曲だとは思うんだけれど。
右側にクリス・デガーモを見ているほうが僕としては座りがいい。


そんなことで以後の彼らについて、僕はほとんど知るところがありません。ただ、シンプルなもの/普通なものから複雑なものを作り出す、というのが彼らの挑戦であったような気はします。もちろんそこからはやはり、「普通なもの」が生み出される蓋然性が高いわけで、よりテクニカルかつエモーショナルな表現に舵を切ったDream Theaterとはまた違った、難しい挑戦であったと思います。
余談ですが"Awake"でDream Theaterと袂を分かつことになるケヴィン・ムーアも、その後の彼のレコードを聴いていると指向性が似ているような気がします。シンプルなのにエモーショナルなプログレを、と。


最初に"Promised land”を聴いて、それから前作ということで"Empire"を聴くとやっぱりいろんなものを捨てたことに気づかざるを得ません。スピードであったりメタル的なエッジ、展開。"Empire"は何百万枚も売れたレコードだから、かなり勇気の要る変化であったことは想像に難くないわけです。そうやって追い求めたものはなんだろな、と。

なんて思いながら、久しぶりに検索をしたら"Operation:MindcrimeⅡ"などというふざけたタイトルのレコードをリリースしていることを発見。仰け反った後憤死しそうになりました。なんという節操のなさでしょう。あなたたちはメタルとは決別したんじゃなかったんですか。そう問いたい。
どっちのQueensrycheに問えばいいのかよくわかんないですけど。今度聴いてみます。

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参考にするならNirvanaじゃなくてNine inch nailsだったかも。グランジの申し子にして元自閉症王子、現リア充マッチョマンと化したトレント・レズナーの音にこそヒントがあったんじゃないか。

やっぱり、手にしたものは最後まで手放すべきじゃないんです。スタイルは簡単に変えるべきじゃない。僕はずっと誰かのマネをして作り上げられた僕なわけで、僕の振る舞いが誰かさんのコピーであったとしても、フォロワーとしての責務があるはずです。ジョークです。要は易々として捨てていいものじゃないはずなんです。
あ、これは僕の話ですね。


で、何が書きたかったかといえば件のNine inch nailsの新譜を聴いたよ、ということなのです。壮大なる枕。なんなのこの駄文。本体はまたこんど書きます。ほとんど自動書記みたいなもんだけど、疲れた。
明日から新潟出張。本土に上陸するぞ。一泊二日で。