2019年1月22日火曜日

2018年はこんなのを聴いていたよ

『おおかみこどもの雨と雪』で、親近感をおぼえるのは「おかあさん」であった。
「おかあさん的心性」を備える中年紳士でありたい。
変化に耐えられるか。
それが問われるのは、変化する側ではなく変化される側だ。
なんの話だっけ。そうだよ。音楽の話だよ。

17年はこんな音楽を聴いていたよ
16年はこんな音楽を聴いていたよ
15年はこんな音楽を聴いていたよ
12年はこんな音楽を聴いていたよ
11年はこんな音楽をきいていたよ

どんな事柄でも、積み上げていくとなにごとかをやったような気になる。不思議だ。
2年後に10年前のエントリーをクソミソに叩くエントリーを書きたい。

さて。今年も飽きもせずに積み上げていきたい。


今年は不作だな、と上半期は思っていた。
本当に11月くらいから、ぽぽぽぽぽ、と耳に留まる音楽が出てきた印象。

New Levels New Devils
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Sony Music Entertainment(Japan)Inc. (2018-10-24)
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Djentの最新モデル。そう言って差し支えあるまい。
想像を超えない進化。最近のiphoneの新モデルみたいな。



アートワークのダサさから想像できないくらい音楽はかっこよいんですよ。
ばあちゃんからもらったみたいなセーターを、きれいに着ているおしゃれさん。
音像もすっきり。グルーヴィーでファンキー。

テクニカルな音楽はメタルの専売特許ではない。線が細く、艶のある音色。
ポリリズムを含んだ変則的・変態的リズム・セクションとダサいアートワークのみがメタルの残滓を伝え、その他はおしゃれなもの・様子のいいものに換装されているように聴こえる。
つまり、Djentというジャンルの拡散。あるいは、その言葉の意味の拡散。である。
だた、この変化は織り込み済みでもあったはずだ。
音像的にジャズ/フュージョンへと確実に接近してもいる。もはや背中合わせといってもいい。その道は回帰線の一部でもあるかもしれない。
その「新しさ」は、そんなに新しくなかったとしたら、これからどうなるか。

僕としては、たくさんのミュージシャンがこの界隈で面白がっていることが面白い。
メタルとパンクがクロスオーバーしたみたいに、おもちろいものができればいい。
ちょっとね。引き続き眺めていきたい。


そう。おもちろいこと。大事だ。

上のレコードでゲスト参加しているギタリスト。Ichikaさん、という方らしい。

he never fades
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TaWaRa (2018-04-01)
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she waits patiently
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調べてみると2枚のEP。ベースで作ったものと、ギターで作ったもの。

ベースを男性の声、ギターを女性の声に見立てて作られた、とのこと。
複雑なパッセージを弾きこなす。ギター小僧はよだれが止まらないだろう。
でも、複数旋律を擁する弦楽器一人芸であれば、Mike Dawesさんが過去最高にすごい。だってドラムパートまで一人芸なのだぞ。一人三役。
2017-18冬的音拾遺集
Ichikaさんを形作る要素として、独奏されるベース/ギターのクリーンでクリアに響く音の作り込みや、彼が作り出すメロディに耳が行く。

ピアノ・ソナタならぬギター・ソナタといった趣きなんだよね。
次々と爪弾かれる音の粒が、さらさらと、こぼれ落ちる。
時に強くなったり、弱くなったりする雪のように、さらさらと落ちてくる。



高木正勝は以前、ライブでこんなことを云っていた。
音が汚くなるから合わせない。一つずつ弾く。と。
高木正勝さんとottoさんのライブをみて考える「表現すること」

Ichikaさんの楽曲は、どこか高木を連想させる。絶え間なく連続する音。
次々と繰り出される「一つずつ」の積み重ねが、空間を埋める音の連なりで、それはつまりフレーズで、それはつまりはメロディであった。
コードとは、和音である。また、メロディのかたまりである。
そのことを改めて認識したのは、高木がぼそりと呟いたひとことのおかげであった。

聴き手たる僕は、一度にすべてを理解できない。
音の連なり聴いて、一拍措いて、メロディの存在に気がつく。
構造が僕の中で理解され、消化されるまで、時間がかかる。
こうした遅滞は、世間一般では老化と呼ぶのか。

 
端正で静謐なメロディ。連続した音の連なり。楽器が違えど、趣向は高木によく似ていると思う。
アルペジオという奏法がある分、ギターは楽器としてピアノよりも分解的かもしれない。逆もまた然りなのだろう。

高木は今や、エレクトロニカからも「空間を埋める連続音」からも足を洗ってしまった。
彼は今や、かつてからは想像できないほど少ない音数の、シンプルな世界の住人だ。
かつて「音が汚くなる」のを嫌った彼は、虫の音やおばあの歌を挿れることで、音がわざと汚してさえいる。それが「今の」彼の狙いなのだろう。
僕は、変わりゆく彼を追いかける。

2枚のEPは、どちらもよいレコードだった。
変容を楽しみにして良さそうな人を、また一人知ることができた。


好物の話。
Attention Attention
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Shinedown
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いやぁ、いいレコードだった。
それ以外、取り立てて書くべきことはない。好きに理由なんてないだろう。



Five Finger Death Punch等、USモダン・ロック勢の活躍が目立った一年だった。
このシーンのメロディ回帰が鮮明になってきたように思えていて、それは僕の好みとしてどストライクなので、みんなもっと頑張れ。

Kornのジョナサンのソロも良かった。

BLACK LABYRINTH
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JONATHAN DAVIS
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彼がキャリアを重ねるなかで、フリーキーで悩める美形的変態紳士から、ハゲで小太りのおっさん的変態紳士に成長していく過程のどこかで、本物のシンガーになった。

 
喉にテンションをかけたときも、歌え上げたときも、今のジョナサンの声は素直にかっこよい。
予備校生だった頃に"Life is peachy"でブレイクしたんだ。あのときは、20年後にKornが残るとも思っていなかったし、まさかこんな歌い手になるなんて、思いもしなかったんだから。


さて。

衝撃の一つとして。
黒猫ホテル [Explicit]
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KITERETSU MENTAL WORLD Co.,Ltd. (2018-08-08)
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"ダンスが僕の恋人"のPVは、刺激的かつ示唆的だった。
嫌悪感を抱く人もいるだろうけれど、救われたような気持ちになる人もいるのだと思う。

保守的なご家庭では、おとうさんおかあさんのいるところでは見ないようにしましょうね。卒倒してしまうかもしれないから。

しかし楽曲の完成度として、前々作の"さよならダーリン"を推す。
僕はダンスとかよくわからんし、日本語のラップって正直苦手なんだけども。
 

ありふれているようで、あまりない。予想を裏切るメロディ。
裏切りの正体はメロディなのか、コーラスなのか。よくわからない。
何かしらの非凡さがこの辺りに埋まっている。
歌い手としてのマイキーさんも上手だが、楽曲の作り手を高く評価したい。
イロモノとして斥けるにはあまりにもったいない。


とかく最近は、誰もがSNSを使って記号的に物事や誰かさんを消費する。
誰もが誰かを「喰ってやろう」(象徴的な意味でね)とよだれを垂らしている世界だ。
そんな中で、彼は意図的に自分の属性を提供し、また、進んで消費されようとしているように見える。
この姿勢は、「喰ってやろう」(象徴的な意味でね)とする誰かさんに対して、消尽しつくされない自信に映る。"ダンスが僕の恋人"で感じる凄さはそこだ。
勇気がいるし、勇気を与えるだろう。

時折ひどくマイケル・ジャクソン的なのはご愛嬌。



Hiding Place
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「アメリカン・アイドル」の肩書はもはや不要だろう。



円熟という言葉が浮かぶ。若いのに。繊細なのにこのボリューム感。

誰かさんよりも良いだとか、どのように良いだとか。
比較・形容する言葉は、僕にだっていくらか持ち合わせがある。
それなりに使う機会もあったからね。
しかし、言葉は時に虚しい。絶望的に虚しい。
どんな言葉を用いても、指し示すものは変わらないではないか。
どんな言葉を用いても、指し示すものを言い尽くせないではないか。

そんなわけで、言葉はいつも大きすぎるし、小さすぎる。
しかし、そんなことは彼女にはなんの関係もない。
今の彼女の声は本当に素敵だ。
それがすべてだ。

そして。あとね。彼女は、僕に新しい何かを教えてくれる。
マイケル・ジャクソンの"PYT"の愉しさ、エド・シーランの力量。
そして今回は、Jonathan McReynoldというシンガーを教えてくれた。
上のデュエットも素敵な出来だ。


2018年のベスト・レコード。と、決めた。
Make Room
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Jonathan McReynolds
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この人、ぜんぜん知らなかった。
スタジオ・レコードも過去に出しているみたいだけど、最初に聴いたのがこれ。
楽しくも、悩ましいレコードであった。

ゴスペルって宗教音楽だ。しかし、そのことはよく忘れてしまう。
単にかっこいいから。それで十分でしょ。「天使にラブソングを」は楽しい映画だったじゃないですか。



ライブから聴けたのは良かった。ライブはいい。
それほど広くないライブ会場。観衆との距離の近さ、空間の広がり。彼の声は高く張りがあり、柔らかくて、暖かく響く。
あーこりゃいい声だな。確かにそうは思うのだが。

曲が進むにつれ、じわりじわりと熱が上がる。
会場を包む、ジーザス!という声に歓声が上がる。観客は悲壮なまでの真剣さで、その場を楽しむ。会場の雰囲気が手に取るように分るから、よいライブであったことがわかるし、その一体感がこの作品の質を高めている。

スピーカーの向こう側で気後れしている僕を完全に置いてけぼりにし、彼らは彼らの中で、偉大なる"Yes"を得てしまう。
なんてあさましいことだろう。「救い」を、いとも簡単に作り出してしまうなんて。
なんてうらやましいことだろう。「救い」を、いとも簡単に作り出してしまうなんて。
彼の声は触媒だ。
聞く人によっては確かに、彼の声は「彼の声」以上の何かなのだ。

僕は彼のスゴさと僕の違和感を伝えたい。
でも言葉を尽くすほどに、伝えたいことからも、実態からも遠ざかるように思える。
Tori Kellyのところと同じ話。
彼は何かしら特別なものを持っている。要はそういうことなのだ。


そんなところだろうか。
今年も、良き音楽にたくさん出会えますように、