2011年8月20日土曜日

マングローブをめぐって

「マングローブ植林」で6万件もヒットするのか。すごいな。

熱帯の多くの国でマングローブはあるし、たぶん増えたり減ったりして、時にはボランティア植林も行われているんだろう。
僕が学生だったとき、バーベキュー用の炭が備長炭という名前で販売されているとか、エビの養殖池を作るために切り開かれたとか、そんな話もあった。エビの養殖池は確かにあるね。だからマングローブを植林しましょう、みたいな。

この国でもマングローブ植林が行われているということは、マングローブ林が減少しているんだろう。あと、枯葉剤の散布地を再植林したという話も聞いた。ベトナムにおいてマングローブが減っている理由があるとすれば、海岸線の侵食と違法伐採だろう。

カマウ岬では海岸が増えているらしい。逆に東側の海岸は年間80m後退しているらしい。カマウ省の推計では254 kmにわたる海岸線が平均5m、8100km(!)にわたって張り巡らされている水路が年間平均50cmずつ、侵食により後退しているとのこと。要するにスゴイ面積毎年減少している。と、考えているようだ。

確かに、海岸線や水路の侵食をマングローブが守るが、その効果は限定的だ。治山事業でも一緒だけど、森林は結局土地の表層一枚を占拠し、守るに過ぎない。山腹の深層崩壊でも地すべりでも、海流の変化でも、根本から揺るがす影響に対して、森林はほとんど無力だ。
この国では、気候変動の影響なのか、中国がメコン川にダムを作ったせいなのか、どうも陸地への砂のつき方が変わっているとのこと。でもそれをマングローブが防げるかといえば、防げない。

気候変動適応としてマングローブという話の流れは、森林吸収源という側面ではありだと思うが(それにしても新規植林ではないから効果は限定的だ)、「マングローブの防潮堤」という考え方だったらちょっと違う。海面が1m上昇するんだったら、きっと一部の陸地が常時海底に沈んでしまって、枯れる。

現在、ドイツの支援によりメコン・デルタの西側にコンクリートの防潮堤を築いている。海岸侵食を防ぐためだ。防潮堤を手がけたことはないけれど、個人的にこれはオススメしない。防波堤そのものを守るために根固工をする必要があるし、それは賽の河原のように永続的にテトラポットを投入する必要がある。そうしないと防潮堤が波で洗われて、最後は壊れてしまう。
維持管理が苦手科目であるこの国でそれはしない方がいいと思うし、それをするんだったら道とか下水とか先にやることがあるだろう。人が困っているものから順に手をつけたほうがいい。物事の道理です。



違法伐採対策で植林しているとしたら、それは泥棒にエサをあげるようなものなので、そんな意図はあんまりないんだと思う。
なぜ、違法伐採が起こるのか、ということから考えれば、「植林」はソリューションにならない。違法伐採が引き起こされないような方法を考えるべきなのだ。森林をもとに戻す、ではなくて違法伐採をなくす、がまっとうな回答なんだと思う。
ベトナムに対して植林という形での支援は、一部では意味があるけど問題そのものは温存されたままだ。支援をしやすいのもわかるが。

貧しくなければ、燃料が簡単に手に入るのであれば、好きこのんで不法行為はしないでしょう。例えば、管理されたマングローブ林から生産された木炭を10倍の価格で買い取ってあげる、とか。
いびつな取引だけれど、もし支援をするのであればそういう方法だってある。
ものをあげるのではなくて、よくできたものを買い取る。その品質を買うのではなくて(実際、マングローブはいい炭になります)、その履歴を買う。それが、ここにいる人たちが、自分の持っているものに対する価値に気がつくきっかけになる。

支援をするにしても、方法を考えることは大切だ。裕福な国の趣味みたいなものにならないためにも。

森林認証制度、と気がついた。これできないかな。誰か、木炭買わないかな。