写真:中央がアカシア・下がメラルーカ メラルーカは樹皮がくちゃくちゃ
ようやく語学研修が終わった。解放された。ネタは順調に古びていく。
①木質ペレット工場:Ge energy co.,Ltd
ペレット工場がベトナムにもある。こんなに暑いのに木質ペレットの工場だなんてね。
メラルーカ、アカシアを原料としているとのこと。これらの樹種はもともと油分が豊富だし、好都合なんだろう。油分が豊富ということは、燃やしたときの発熱カロリー量が高いということだ。
登り窯の話。くべる薪はアカマツが最適でスギはダメ、と師匠先生が仰っていた。もうあんまり覚えていないけど、酸化とか還元とかいろいろ工程があって、1200度くらいまで薪だけで上げていくのは、結構たいへんなことだった。スギはカスカスしていてダメ、ということ。
少しスギがかわいそう。
いいや。
韓国系企業。この国にはずいぶん韓国資本がいる。作られたペレットはヨーロッパや韓国に輸出されるとのこと。好評らしく、工場の機械を増設します、との説明を受ける。なるほど。
ベトナムで使わないの?と thầy Thuyếtに聞いてみると、なんでこんなに暑いのに暖房しなきゃいけないの?と逆質問される。正論ですね。見たこともないそうでした。へーって。
なんでペレットなんかにするの?という疑問がどうも彼の中にあるようだ。ちゃんと伝わったかどうかわからないけれど、それは扱いが楽だからだ。原理的にただ木を燃料としているのだから、薪と変わらない。細かくして、圧縮して、均一化したものがペレット。
たぶんそれが規格化ということなんだろう。 ペレットは何語?と聞かれて英語、と答えるけどペレットは単に形状を指しているようにも思えて、あんまり正しくない。
そういえば原発の燃料だってペレットだ。正しくは木質ペレット(Bio-mass Pallet)。ちなみにベトナム語でペレットは"Viện nắng lương"。 việnが丸っこいものの類別詞で、nắng lươngはエネルギーの意。
ペレットストーブはいいと思う。柔らかく温かい。ファンヒーターみたいなもんだし、扱いも楽だ。扱いが楽、というところがきっと消費の洗練化ということなのかもしれない。
もしも僕が家を作ることがあったら入れもいいかな。作ることがあったら。
ふたたび燃料としての木材について考えてみる。確かに炭素を含んでいるから、燃料として好適なのは間違いない。ただ、木材はエネルギー集約度が低い。どういうことかというと、単位重量でも単位体積でもいいけれど、エネルギー密度が低いということ。要はかさばるということ。1kgの木材とガソリンでどっちがあっついかを考えればいいということ。
結局、木材はかさばる。もちろん必要なエネルギーを得るだけなら、量を投入すればいい。ただ、その量を遠い場所から持ってくる場合、木材は不利。源泉かけ流しと沸かし湯の温泉はどちらがコストが高いかを考えてみればいい。…温泉行きたい。
だから、日本では木質ペレット工場は総じて小規模な印象がある。大きな工場を作ればもちろんコストは下がる。しかし、原料をどこから調達するのか、という草刈り場の問題と、どこへ供給するのか、という売り場の問題があるから。きっとだから、赤字なんだろう。3セク的で経営がへたくそ、という問題も別として。
ベトナムでのペレット事業について考えてみると、まずベトナムはペレットの消費地には、少なくとも今のところはなっていない。そして潜在的な需要はあんまりあるとも思えない。木質バイオマス発電とか、利用方法はあると思うけど、人口が多いところで行うのはあんまり効率的だとは思わない。
企業の方は、ここに工場を立地した理由について「そこにメラルーカがあるから」とアルピニストのようなことを言う。
それはたぶん事実なんだろう。確かに発熱量が高いメラルーカはペレットの原料に適している。豊富に原料が賦存している区域に工場を立地する。わかりやすい。それはベトナムにとっては供給先が確保されていることを示している。
材の供給元についてどのように考えているのかいまいち分からなかったが、「僕カマウにいくんすけど」「ああ、カマウからも木材来るよ、船で」「船?」船着場が工場に併設されているそうだ。そっすか。
…なんか最近いろんなところから、「船」に関する情報が集まってくる。どうも今後の僕のキーワードは「船」になりそうな予感。。あれ?バイクは?
②住友林業パーティクルボード生産工場(予定地)
http://sfc.jp/information/news/2009/2009-12-25-1.html
Vina Eco Bord Co., ltdとなっている。住林の子会社。ベトナムにはたくさんの「ヴィナ」がある。まだ工場を作っている段階。11月に試験稼働とか。
説明を聴いた限りでは日本に輸出する意図はないそう。ホーチミンやシンガポールなど、近隣に向け輸出するそうだ。ホーチミンに住んでいる限り、パーティクルボードなんてほとんど見ない。この国では家はレンガとコンクリートで作ってしまう。
もちろん、パーティクルボードそのものは建材だけに使うとは限らないから、別にいいんだけど。ホーチミンも含め、東南アジアはこれから伸びていく国、人口が増大しつつある国だ、20年くらいで100万人単位で人口が増加する場所なんて、世界中探してもそうはないだろう。投資側としてもかなり魅力的な場所なのかもしれない。
パーティクルボードの利点としては、原料を粉砕してしまうことがあげられる。もとの材の形なんてどうでもいいのだ。通直な樹形でなくとも、ぐにゃぐにゃでも引き受けますよ、ということでもある。植えっぱなし、粗放な管理をしてもいいということでもある。
前回書いた通り、メラルーカ:cây tràmの主要な利用先として、建造物の基礎杭:củiの利用が多いことから、材の引受価格はそれに準じたものになるとの見通しを担当者の方は語っていた。日本人の方でよかった。
粗放な管理をしても引き受けてくれる、そのかわり引受価格は安い、ということだな、と僕は理解する。
コストを考えれば、大量に効率的に工場へ運んだほうがいい。そのためにはある程度運びやすい形であるほうが好ましい。ここでも集約度の話だ。たぶん、今のベトナムでの植栽方法はけっこう効率的に原料を工場へ搬入することができる。10,000/haとかの高密度植栽だから、ある程度、径も均一で通直だ。そのへんを織り込んだ上で、きっと工場立地も決定するんだろう。
この工場では年間25万m3/年のパーティクルボードを生産する、とのこと。25万m3の製品を生産するためには2倍~3倍程度の原材料が必要になるとのこと。相当歩留まり悪っと思ったが、僕は合板の歩留まりについてそもそもよく知らないんだった。要は利用率が30%~50%くらい、ということだな。
それにしても歩留まり50%としても50万m3って、ちょっと想像がつかない量だ。昔見学した新潟の合板工場が3万m3/年とか、そんな説明を受けた記憶。ほんとにそんなに材が集まるのかしら、と思う。
工場見学の成果。
木材そのものの需要はかなりあるようだ、という感触。供給できる量が分からないから、なんとも言えない。ただ、工場製品の性として引受価格が安いこと。たしか日本って合板の山元価格で3,000円くらいじゃなかったっけ。ここ3年治山ばっかりで林政やってなかったからよくわからない。でもそれって、ベトナムで言えば60万ドンということで、ありえん値段なんだ。
山元価格が低いのは悪いことではない。そういうものだと思えばよい。薪や基礎材がそもそも廉価であったんだから。そういう販路もあるというオプションがあるだけでいいことだと思う。でももうちょっと付加価値の高い用途も見ていきたいな、と思う。