2013年3月8日金曜日

補論−1 森林認証制度のポジショニング

森林認証について少し。少し自分の整理がてら。
北部・中部へ③で思いついて書きなぐって、忘れてた。半年放置とか、余裕です。
つまりこれは、アレだ。備忘録的な、アレ。

細かい説明はFair Wood Partnerさんに預ける。しっかりしとるなぁ。
今のところ、世界には大きく分けてFSCという認証とPEFCという認証がある。というところでいいだろう。



そもそも認証ってなんだ、という話。
認証制度は性質によって大きく3つに大別することができる。

まず、
1)品質認証。
製品の品質そのものが一定の基準を満たしていることを示すもの。例えば、ネジ等の工業製品で言えばJIS規格。有機野菜などの農作物はJAS規格というもの。ちなみに木材はJIS規格だ。食べないから。

2)工程認証と呼ばれるもの。
その製品を製造するときにどのような注意を払ったか、などを認証するもの。代表的なものはもちろんISO規格だ。ネジを製造する過程で大量に温室効果ガスを排出している会社とそうでない会社。工程管理によって温室効果ガスの削減に取り組んだりする、という例がある。”
社会貢献の要素として使われることがある。それがどれだけ売上に貢献するのかはよくわからない。場末の工場にもISO○○取得!と書いてあるのはみるけどね。
そして母校もなぜかISO14001に取り組んでいる、というオドロキ。なんか住みにくい世の中になっちゃった。頑張ってください。

そして最後に3)管理システム認証というべきもの。
製品の原材料に焦点を当てて、原料が生産されるシステムを認証する、というもの。
森林認証制度はこれに該当する。
森林が持続可能な形で育成するシステム、あるいは周囲の環境や生物多様性といった生産地の周囲環境を保全するシステム、というか育成方法・管理の仕方を認証するもの。

感じとしては、
   (消費者) ← 品質認証 ← 工程認証 ← システム認証 ← (生産者)
                                というイメージ。
消費者からは一番遠いのがシステム認証。

これはもちろん、僕がとりまとめたものではない。そんなに頭は良くない。
以前、東大の白石先生がそうおっしゃってたのを聞いて、なるほどな、と思った次第である。「FSC認証をツールとした経営改革および地域林業振興」東京大学農学部演習林報告,2003の序論部分を参照されたい。
なるほど、とご理解頂けると思う。実は後半部分もなかなかおもしろい。


以上のような理解するとすると、管理システム認証は消費者にとってずいぶん縁遠い。

ぶっちゃけ、2)工程認証と3)システム認証は、最終製品の品質を保証しない。工程管理や生産管理の質が上がれば、最終製品の質も上がる可能性は否定しないけれど、商品の質が生産工程の質を保証するわけじゃない。
例えば産直やフェアトレードは商品の質に関して保証しない。にもかかわらず、そのようなことが行われるのは、生産のされ方や購入のあり方に消費者が目を向けた、というのが素直な理解。森林認証制度も同じである。認証林はそうでない森林と比較して木材の質は変わらない。製造過程にスポットライトを当てていること。

かつて日本は「開発伐採」という手法で東南アジアの森林を伐採した。熱帯雨林にブルドーザーでいって、木を伐って持って帰るだけ。育成経費ゼロ。インドネシア、マレーシアではこの影響が顕著で、森林率が有意に低下する事態となった。日本は「木食い虫」と揶揄された。木材の質は関係なく、生産のあり方が問題視された。

最近では違法伐採がある。現地の法律に違反した伐採という意味合いだ。近年、こうした国でも森林保護に関する法律は整備されている。
が、例えばラオスの木材をベトナムに持ってきて売る、とか木材ロンダリングみたいな手法がある。マネーロンダリングのほうがスマートだし、映画になりそうだ。でも、追跡して負傷したり殺害されたNGOスタッフやジャーナリストがいたりするので割とシャレにならない。


森林認証制度の眼目として、「持続可能な森林への認証」と「市場からの持続可能でない木材の排除」がある。以前も書いたけれど、世界最大の木材市場であるEUは認証材が必須。家具にしろ建材にしてもロゴを取得してないと正攻法では売ることができない。
そう考えると、たぶん森林認証のシステム設計者は、「世界市場を認証材で覆い尽くす」ことを目的としているはずだ。そうしない限り、世界中の森林は持続可能なものとならない、と。フェアトレードよりも射程が遠い。


いまのところ、国際市場では認証材はプレミアムが付いている。理由は認証材とそうでない材の双方が流通していて、片方のみ特定の市場へのアクセスが認められているから。でも、制度設計者の目論見どおりにことが進んだら、プレミアムはなくなる。認証材がスタンダードだから。
ISO持っている工場はISOによって直截的な利益はない。でも販路に関するパスとして機能している。たぶん、そういうのを制度設計者は意図している。

というところと、ビジネスとしての認証がどういう風に関わってくるのか。制度設計者の予期しない事態になるのかも。どこかで逆噴射するんじゃないか、とも思える。つまり「プレミアムを維持するために非認証材が残る」みたいな。ねぇ。