2013年5月6日月曜日

多様性/固有性 〜ビズップヌイバ国立公園〜

「ブオン・コクヤー・ビユップ・ヌイ・バーにいってくるわ」
「おー、ブオン・コクザー・ビズップ・ヌイ・バ―ね」
同僚との会話。表記はVươn Quốc Gia Bidup Núi Bà。読み方だけが違う。メコン・デルタ訛りで云ったのにハノイ方言で返された、33歳の雨季、のはじまり。

メコン・デルタでは"g"と"d"と"v"が"y"に近い発音になります。 たまに"r"も "y"。"y"はもちろん"y"。やゆよ、多すぎ。南部はにゃーにゃーベトナム語。



  • ビズップ・ヌイバ国立公園

ビズップヌイバ国立公園は中部ダラットにある。詳細はリンク参照。
ダラットから車で約1時間。2004年に制定された、ベトナムで一番新しい国立公園。JICAのプロジェクトが入っていて現在2名のボランティアが活動中。きっとすぐに日本語のページも充実していくことでしょう(はぁと)。
JICA -ビズップ・ヌイバ国立公園のご案内。なるほど。多様性豊かな自然があって、それを守ろうと。ははぁ。ここ、google mapで検索しても出てこない。それくらい新しい公園、ということで。


  • ダラットのマツ林

ダラットはマツの街。標高1,500mの高地、冷涼な気候に合うのだろう。今回バスでニャチャンまで足を伸ばしたんだけれど標高が下がるとある高さからぱっとマツ林は消える。
Da Lat’s ancient pine trees forest devastatedこんな記事もあったから、樹齢100年オーバーはザラなんだろう。尾根部の高燥な場所はマツが優先している。青い空と緑のマツと赤い屋根のダラット。ベトナムの軽井沢。
ラテライト系の赤土が中部ではよく見られるから、あんまり土壌に栄養がないのかもしれない。マツ生育上の好適地なのかな。


そしてどうも2代目が見当たらない。日本ではマツは先駆樹種だから、徐々に他の木に取って代わられる。暗すぎてマツの子はマツ林の下には育たない。じゃあここのマツ林が衰退してるかというとあんまりそんな感じもしない。不可解。枯れたあと次はどうなるんだろう。遷移するのか、更新するのか。
たとえばフランス帝政下、ダラットがフランス人の避暑地だった頃の風景写真とか飾ってあると対比になって面白いのかも。歴史ある街だからそんな写真もありそう。


  • ビジターセンター

出来たばかりのビジターセンターには来訪者向けの展示がある。展示に工夫を凝らしてあって、なかなか面白い。配属しているボランティアさんはキュレーターみないなこともしているそうです。初学者や地元の人が地元の自然を勉強する場としていいんじゃないかと思う。民族衣装や生活に使う道具、楽器なんかも展示してある。


  • トレッキング
そしてトレッキングコースへ。今回はおよそ3kmのトレッキング。もっと長いコースやキャンプもできるとのこと。
ヤブ蚊はびこる海抜0mの湿地民としては湿度の低さで十分に快適なんだけれど、日差しが強くて暑い。沢に近づくと風が出て涼しい。この2年絶えてなかった感覚。やっぱ山はいい。アップダウンも少なく、気軽に歩ける。
すっかり平地慣れしてしまったので、持ち前のガラスのヒザが大爆笑していたけどな。


尾根部はほぼマツの純林で、見た感じそれほど多様性は高くない。一方、沢の方に近づくとマツが消えて他の樹種がでてくる。
山岳地帯だから微地形によって日照条件や水分条件はめまぐるしく変る。ひっくるめて考えるとやはり豊かな場所なのだろう。単調なメコン・デルタとは違う。

というか。ベトナムは日本みたいに南北に伸びた国で、場所によって気温や降水量、日照量が全然違う。多様性に富んでいるのはベトナムの方で、そのなかでここでは「中部高原固有の植生」を見ることができる、といったほうが適切かもしれない。
中越国境付近の3,000m級の山岳地域、ハノイ郊外の農村、中部高原、中部海岸、南部地域、メコン・デルタ地帯、汽水域マングローブ地帯。うむ、多様じゃないか。そしてそれぞれが固有だ。



だから全然違う地域の人、北のハノイの人や南のサイゴンの人が見に来るといいんだと思う。標高が高い場所の自然とはどういうものかを知ることができるから。その土地に合った、固有なものがここで見ることができる。それは十分に価値あることだ。
ベトナム人はトレッキングをするのか。歩くのキライだよな。

ここまで書いてきてアレなんだけど僕、「生物多様性を守ろう!」とか好きじゃないんです。いろいろ思うことはあったけど、また別で考えることにする。
→考えた。「考えてみて、やっぱりそれには乗れないといってみる」


  • コーヒー畑とコホー族

細かい点々の緑はすべてコーヒーの木。
少数民族について。この場所にはコホー族(Người Cơ Ho)と呼ばれる少数民族が暮らしている。ことベトナムに関してやたら詳しいベトナム語版Wikipediaさんによるとラムドン省で14万人ほどコホー族の人がいるとのこと。
彼らがマツ林を伐採してコーヒー畑に変えてしまうことが課題という。中部高原のコーヒーは貴重な輸出商品。存在感のない世界第二位の原産国。

元々居住している人たちなので、彼らを取り締まるのは難しい。以前、ディンビエンフーやラオスのルアンパバーンを訪れたときも、似たような問題を抱えていた。自然を保護しようとする場合、住人をどう扱うか。繊細な問題になる。貨幣経済は浸透しているから現金収入は誰にだって欲しい。他の農地は他の人に使われているから、新たに切り開くか、となる。
取組みとして、ガイドや公園管理業務等の「国立公園による雇用創出」を目指していると活動しているボランティアさんはいう。それも確かにひとつだろう。

ん、ただね。マツ林の再生は比較的容易かも。あいつら陽樹だし、新しく築設した道路の脇に幼樹がぽよぽよ生えてた。退耕還林するならやりようはありそう。その前に鉄砲水が問題になると思いますけどね。土壌侵食もひどいし。


  • コホー族の織物

そしてもうひとりのボランティアさんは生計向上の取り組みをしていた。クホー族の織物の販売支援、といっていいのかな。彼ら自身が商品を作り出すことの支援。こちらはまだ始まったばかりみたいだけれど、ストールなどいくつか商品が。

こうした女性が生計手段を持つ必要性は女性の地位向上とからめて開発学なんかでもよく取り上げられる。複数の生計手段をもつことは、収入基盤の多様性と呼んでもいいかもしれない。



ベトナムは少数民族による織物は結構ある。もちろんこの場所を訪れたとき、なにげなく手にして土産物にするのもいい。でも、もう少し違う意味があるような気もする。
たくさんの民族の織物の中で、その民族ものであることのを示すのは風合いや色柄、紋様だったりする。これも、多様な中の固有性。

もし外国人だったら、というかそもそも外国人なんだけれど、買いたいって思うとしたら、たぶんそういう理由だよなぁと。

彼らが、自身の文化としてヨソに切り売りできるもの/固有の存在として外の人の目を惹きつけるものって、この辺にあるのでは。そして売れることそのものが、価値を高めると思う。洗練とか使いやすさとかはあるとしても。
「見られてキレイになる私」だと思うんです。こういうのって。


ソーシャルエコロジーとか、エコフェミとか、やっぱり少しだけ考えることがあるのでそれは稿を分ける。すでにこのエントリーはすっげー長い。


とても刺激を受けた視察だった、よ。



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